見出し画像

申込から2秒で保険金を支払うLemmonadeの裏側大解剖

はじめに

今回取り上げる海外スタートアップLemmonadeは、すでにニューヨーク証券取引所に上場しているのですが、ガラパゴス化している日本の保険市場では最先端を行っている事業モデルになります。そんなLemmonadeについて、深掘りしました!
記事について質問があればDMください!
あとはラーメン、フットサル、オードゲーム好きの方も常にお声がけ募集です!(もちろん初めましての方も!)


最短2秒で振り込むLemonadeってどんな会社?

Lemonadeは2015年にアメリカ・ニューヨークで設立されたインシュアテック企業です。最新のAI技術とデジタルプラットフォームを活用し、保険の契約から請求までをシームレスに提供しています。

  • 設立年:2015年

  • 本社所在地:ニューヨーク

  • 事業内容:住宅保険、家財保険、ペット保険、生命保険、自動車保険など

  • 売上規模:2023年通期で約3億ドル(約420億円)

  • 上場市場:ニューヨーク証券取引所(ティッカーシンボル:LMND)

1. Lemonade登場までユーザが抱えていた課題

従来の保険サービスって、正直言って手続きが煩雑で時間がかかるイメージありませんか?実際、多くのユーザが次のような課題を抱えていました。

  • 着金の遅さ:保険金の請求から実際に振り込まれるまでに数週間、場合によっては数ヶ月もかかることも。

  • 透明性の欠如:保険料の内訳や保険金の算出方法が不明瞭で、「なんでこの金額なの?」と疑問に思うことが多々ありました。

  • 複雑な手続き:大量の書類や複数の担当者とのやり取りが必要で、手間と時間がかかる。

2. Lemonadeにより何が実現できたのか

Lemonadeはこれらの課題をテクノロジーの力で一気に解決しました。

  • 最速2秒での保険金支払い:AIチャットボット「Maya」が保険金請求を即時に処理。簡単なケースでは、なんと2秒で保険金が振り込まれます!

  • 透明性の向上:固定の手数料モデルを採用し、未使用の保険料は顧客が選んだチャリティに寄付する「Giveback」プログラムを導入。これにより、保険会社と顧客との間の利益相反を解消しました。

  • ユーザーフレンドリーな体験:スマホ一つで保険の契約や請求が完了。煩雑な書類や対面での手続きは一切不要です。

  • コストの削減と低価格化:AIと自動化により運営コストを大幅に削減。その分、保険料を低価格に抑えることが可能になりました。

https://aimagazine.com/articles/lemonade-sets-world-record-with-2-second-ai-insurance-claim

なぜLemonadeは2015年に初声をあげたのか?

Lemonadeが登場した理由には、当時の技術的進歩と業界の変化が大きく影響しています。主に以下の2つの要因が挙げられます。

1. AIの発達:画像解析や不正検知の精度向上

まず、一つ目の理由はAI技術の飛躍的な進歩です。特に画像解析と不正検知の精度が格段に向上しました。

  • 画像解析の精度向上

    • ディープラーニングなどの技術革新により、AIが画像から詳細な情報を読み取る能力が飛躍的に高まりました。これにより、ユーザーがスマホで撮影した写真をアップロードするだけで、AIが損害状況を即座に解析できるようになったんです。

  • 不正検知の高度化

    • 不正請求が保険金支払いの遅延を招く大きな要因でした。しかし、AIの機械学習アルゴリズムが進化し、不正なパターンを高精度で検出できるようになりました。これにより、不正リスクを抑えつつ、迅速な保険金支払いが可能になったんですね。

つまり、着金が遅くなる一番の理由だった「保険金詐欺の確認」に要する時間を、AIが一気に短縮してくれたわけです。

2. 保険会社のAPI連携:データ共有とコミュニケーションの円滑化

二つ目の理由は、保険業界全体でのデータ連携が進んだことです。

  • API連携の普及

    1. 保険会社間でのデータ共有がAPIを通じてスムーズに行えるようになりました。これにより、異なる保険会社や関連機関とのコミュニケーションが円滑化し、手続きが大幅に効率化されました。

  • リアルタイムな情報交換

    1. データの即時共有が可能になったことで、事故情報や顧客情報の確認が迅速に行えるようになりました。これが、保険金支払いまでのプロセス全体をスピードアップさせる一因となりました。

このように、業界全体でのデータ連携とコミュニケーションの改善が、Lemonadeの革新的なサービスを支える基盤となったんです。

どのようにして4年7ヶ月でユニコーンになれたのか?

Lemonadeの急成長の秘密は、革新的なビジネスモデルと技術力、そして市場のニーズを的確に捉えた戦略にあります。以下では、創業からIPO、その後に至るまでの各ラウンドの情報を整理し、Lemonadeの成長を紐解いてみたいと思います。

創業期(2015年)

  • 創業者:

    • ダニエル・シュライバー(Daniel Schreiber)

      • テクノロジー業界で豊富な経験を持つ起業家。

    • シャイ・ウィニンガー(Shai Wininger)

      • Fiverrの共同創業者であり、プロダクト開発に強みを持つ。

  • 創業の背景:

    • 保険業界の複雑さや不透明さに不満を持ち、テクノロジーでこれを解決しようと決意。

シードラウンド(2015年12月)

  • 調達額: 約1,300万ドル

  • 主な投資家: Sequoia Capital、Aleph

  • 達成事項:

    • AIチャットボットの開発。

    • 保険業のライセンス取得。

シリーズA(2016年9月)

  • 調達額: 1,300万ドル

  • 主な投資家: General Catalyst、Thrive Capital

  • 達成事項:

    • ニューヨーク州でサービスを正式にローンチ。

    • 家財保険と住宅保険の提供開始。

シリーズB(2017年4月)

  • 調達額: 3,400万ドル

  • 主な投資家: General Catalyst、Allianz、GV(Google Ventures)

  • 達成事項:

    • サービス提供地域を拡大。

    • 顧客数の増加とブランド認知度の向上。

シリーズC(2017年12月)

  • 調達額: 1億2,000万ドル

  • 主な投資家: SoftBank Group

  • 達成事項:

    • 国際展開の準備。

    • 技術開発へのさらなる投資。

シリーズD(2019年4月)

  • 調達額: 3億ドル

  • 主な投資家: SoftBank Group、Allianz

  • 達成事項:

    • ペット保険や生命保険など新商品の追加。

    • ヨーロッパ市場への進出。

    • 契約者は64万人を突破

IPO(2020年7月)

  • 上場市場: ニューヨーク証券取引所(NYSE)

  • 初日の終値: 公開価格の約2倍となる69ドルで取引終了

  • 達成事項:

    • 時価総額が一時40億ドルを突破し、ユニコーン企業としての地位を確立。

ざっと流すとこんな感じですが、各ラウンドで各商材にセグメントを広げていっているのが印象でした。また、APIの連携が行われつつも自動車保険といった他社保険会社とのコミュニケーションが発生する開発ハードルの高い領域は後回しにしているのも重要だなと思いました。

日本でLemonadeが生まれない理由がない件について

ここまでLemonadeの成功ストーリーを見てきましたが、正直なところ、日本でも同じようなサービスが生まれてもおかしくないと思いませんか?その理由をいくつか挙げてみたいと思います。

1. 各社API公開が進んでいる

日本の保険業界でも、デジタル化の波が確実に押し寄せています。特に、金融機関や保険会社がAPIを公開する動きが加速しています。

  • オープンAPIの推進

    • 金融庁が「オープンAPI」の導入を促進しており、銀行や保険会社が外部企業とデータを連携しやすい環境が整いつつあります。

    • 実際に各保険会社がベンダーを巻き込んでAPI公開を進めています

  • スタートアップとの協業

    • 既存の保険会社がフィンテック企業やインシュアテック企業との協業を積極的に進めており、新しいサービス開発の土壌ができています。

2. AIの進化と参入障壁の低下

AI技術の進化は目覚ましく、特に生成AIの登場により、専門的な研究チームがなくても高度なAIを活用できる時代になりました。

  • 生成AIの普及

    1. GPT-4などの高度な言語モデルが一般に利用可能となり、自然言語処理や画像解析などの技術を手軽に導入できます。

  • オープンソースとクラウドサービス

    1. AIモデルや機械学習のフレームワークがオープンソース化されており、クラウドサービスを利用すれば大規模な計算資源も手軽に利用可能です。

  • 参入コストの低下

    1. これらの技術を組み合わせることで、大企業でなくても革新的なサービスを開発・提供することが容易になっています。

3. オンライン経由での保険加入の増加と社会的受容

日本でもオンラインで保険に加入する人が増えており、デジタルサービスに対する社会的受容が高まっています。

  • デジタルネイティブ世代の台頭

    • スマホ世代が主要な消費者層となり、オンラインでの契約や手続きに抵抗がない人が増えています。

  • コロナ禍によるオンライン化の促進

    • 新型コロナウイルスの影響で非対面サービスの需要が高まり、オンラインでの保険契約が一般化しました。

  • 規制緩和と政策支援

    • 政府もデジタル化を推進しており、規制緩和やサンドボックス制度などで新規事業の立ち上げを後押ししています。

おわりに

Lemonadeが保険業界に起こした革命を見てきましたが、いかがでしたでしょうか?最短2秒での保険金支払い、透明性の高いビジネスモデル、そしてAIを駆使したユーザー体験の向上。これらはすべて、「こんなサービスがあったらいいな」を形にした結果だと思います。

日本でも、同じような革新的なサービスが生まれる素地は十分にあります。技術は日々進化し、規制も緩和され、新しいアイデアを実現するチャンスが広がっています。

この記事を読んでくださった起業家の皆さん、そしてこれから何かを始めたいと考えている皆さん、一緒にこの保険業界、いや社会全体を変えてみませんか?

「与信」や「信用」といった概念は、時代とともに進化していくべきです。古い仕組みにとらわれず、新しい価値観やテクノロジーを取り入れて、もっと便利で公平な世界を作りたい。その思いを共有できる仲間を探しています。

もしこの記事に共感していただけたなら、ぜひ一度お話ししましょう。あなたのアイデアや情熱を聞かせてください。一緒に未来を創る旅に出ましょう!

DM、お待ちしています!


いいなと思ったら応援しよう!