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電力版ジモティーが変えるエネルギー革命

はじめに

今回はエネルギー取引のP2Pを実現するPower Ledger(パワーレッジャー)について分析しました!
直近のXでも触れましたが、テスラがヤマダ電機とパートナーシップを組んで蓄電池を販売するなど、日本の政策を背景に市場プレイヤーも参入が増え盛り上がっているプロシューマ市場ですが、課題もあります。
今回のようなサプライチェーンが複雑な領域においてブロックチェーンは絶大な力を発揮するので、そちらについて見ていきたいと思います!

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100Wを売電したら100円取られた件

皆さん、自宅で太陽光発電をしていて、余った電力を売電した経験はありますか?でも、その売電収入が思ったより少なくて、「これって本当にお得なの?」と疑問に思ったことはないでしょうか?

タイトルの「100Wを売電したら100円取られた件」は胡蝶しのぶですが、実は本質を突いています。今回は、プロシューマ(生産者兼消費者)の現状と、その背後にあるサプライチェーンの問題について深掘りしてみたいと思います。

プロシューマの現状:メリットが薄い?

まず、プロシューマとは、自宅で再生可能エネルギーを生産しつつ、自身も消費する人々のことです。しかし、現状では彼らが売電する際に多くの課題が存在します。

課題点

  • 売電価格の低さ:電力会社に売る際の価格が非常に低い。

  • 手数料や中間マージンの多さ:売電までに多くの業者が介在し、その分コストがかかる。

  • 手続きの煩雑さ:契約や申請が複雑で時間がかかる。

結果として、「せっかく環境のために再生可能エネルギーを導入したのに、思ったよりメリットがない」という声に繋がります。

複雑なサプライチェーンと低マージンの現実

売電のプロセスを詳しく見ると、驚くほど多くのステップと関係者が関与しています。

サプライチェーンの流れ

  1. プロシューマ:電力を生産し、余剰分を売電。

  2. 地域の送配電事業者:電力を電力網に送る。

  3. 電力小売業者:電力を購入し、消費者に販売。

  4. エネルギーアグリゲーター:需給バランスを調整。

  5. 消費者:電力を消費。

この複雑なサプライチェーンの中で、各プレイヤーが利益を取るため、プロシューマに戻ってくる収益はごくわずか。これが、低マージンの現実です。

誰も得しない負のスパイラル

この状況がもたらす影響は深刻です。

問題点

  • 国全体の電力最適化が困難:複雑なサプライチェーンが効率的な電力配分を妨げる。

  • プロシューマのやる気低下:収益性が低いため、再生可能エネルギーの普及が進まない。

  • メーカーの困窮:需要が伸びず、再生可能エネルギー機器のメーカーも苦戦。

結果として、環境にも経済にもマイナスな影響が出てしまいます。

解決策はP2P取引とブロックチェーン技術

では、どうすればこの状況を打破できるのでしょうか?その鍵となるのが、P2P取引ブロックチェーン技術です。

サプライチェーンの単純化

  • 直接取引の実現:プロシューマと消費者が直接電力を売買できる。

  • 中間マージンの削減:中間業者を減らすことで、コストを削減。

他業界での成功事例

  • 銀行業界:海外送金の手数料を大幅に削減。

  • 保険業界:保険金の即時支払いを実現。

  • 不動産業界:売買契約の効率化とコスト削減。

これらの業界では、ブロックチェーンが複雑なプロセスをシンプルにし、ユーザーの利益を最大化しています。

これを実現しているのがPower Ledger

エネルギー分野でこの革命を起こしているのが、Power Ledgerです。

時価総額3兆円超えのPower Ledgerは何者か?

Power Ledger(パワーレッジャー)は、2016年にオーストラリアのパースで設立されたブロックチェーン企業です。エネルギー分野におけるP2P取引プラットフォームを提供し、再生可能エネルギーの普及と電力市場の民主化を目指しています。なお時価総額はトークンの時価総額になります。

事業内容

  • エネルギー取引プラットフォームの提供

    • ブロックチェーン技術を活用して、プロシューマと消費者を直接つなぐ。

    • 電力の売買をリアルタイムで行い、中間マージンを削減。

  • エネルギー追跡と認証

    • 再生可能エネルギーの発電・消費を追跡し、環境価値を証明。

    • 炭素クレジットや再エネ証書のデジタル化と取引をサポート。

Power Ledgerの成功を支えるのは、経験豊富で多様なバックグラウンドを持つ創業者とチームです。

創業者

ジェマ・グリーン(Dr. Jemma Green)

  • 役職:エグゼクティブ・チェアマン兼共同創業者

  • 経歴

    • オックスフォード大学で持続可能な都市開発の博士号を取得。

    • 投資銀行JPモルガンで約11年間勤務し、リスク管理を担当。

    • パース市の副市長を務め、都市計画や持続可能性に貢献。

デビッド・マーティン(David Martin)

  • 役職:マネージング・ディレクター兼共同創業者

  • 経歴

    • エネルギー業界で約20年の経験を持つ。

    • ウェスタンパワー社で規制・戦略部門のディレクターを務める。

    • エネルギー市場の改革や政策立案に深く関与。

コアチーム

  • ジョン・バレット(John Bulich)

    • 役職:テクノロジーディレクター

    • 経歴:ソフトウェア開発企業Ledger Assetsの共同創業者。ブロックチェーン技術の専門家。

  • ヴィノッド・ティワリ(Vinod Tiwari)

    • 役職:グローバル事業開発責任者

    • 経歴:エネルギー業界でのビジネス開発と戦略に豊富な経験。

実は日本上陸済みだった!?

皆さん、Power Ledgerが日本でも活動していたことをご存知でしょうか?実は、関西電力との協業により、日本での実証実験を行っていたのです。今回は、その取り組みと、日本の規制環境であるサンドボックス制度について詳しく解説します。

プロジェクトの背景

2018年、関西電力は再生可能エネルギーの有効活用と電力市場の活性化を目指し、Power Ledgerと提携しました。目標は、ブロックチェーン技術を活用したP2Pエネルギー取引プラットフォームの実証実験です。

実証実験の内容

  • 参加者:関西電力、Power Ledger、一般家庭や企業などの電力消費者とプロシューマー。

  • 期間:2019年から開始し、数か月間にわたって実施。

  • 目的

    • プロシューマーが余剰電力を近隣の消費者に直接販売できるかを検証。

    • ブロックチェーンによる取引の透明性と信頼性の評価。

    • エネルギーの地産地消モデルの可能性を探る。

サンドボックス制度とは?

サンドボックス制度は、新技術やビジネスモデルの実証実験を促進するために、日本政府が2018年に導入した制度です。これにより、既存の規制の適用を一時的に緩和し、革新的な取り組みを支援します。

関西電力とPower Ledgerの活用

  • 規制緩和の対象:電気事業法などの一部規制を適用除外とし、P2Pエネルギー取引の実証が可能となりました。

  • 期間と範囲:限定された地域と期間内での実験が許可され、実際の市場環境での検証が行われました。

サンドボックス制度の期限

サンドボックス制度による実証実験は、基本的に最長3年間とされています。関西電力とPower Ledgerの実証実験は2019年に開始されたため、2022年頃に期限を迎えた可能性があります。

日本市場での成功に必要な3つのこ

Power Ledgerが関西電力と実証実験を開始してから6年が経過した現在。未だエネルギーのP2Pは社会的に普及していません。越えなければいけないいくつかのハードルについて説明していきます。

規制当局とのコミュニケーションとロビング活動

日本のエネルギー市場は高度に規制されており、新しいビジネスモデルを導入するには法的な課題をクリアする必要があります。そのためには、政府や規制当局との密接なコミュニケーションとロビング活動が不可欠です。

  • 法規制の理解と提言:電気事業法やエネルギー関連の規制を深く理解し、必要な法改正や規制緩和を提言します。

  • 官民連携の推進:政府のエネルギー政策やデジタル化戦略に協力し、共同プロジェクトを実施します。

  • 業界団体との協調:電力会社やエネルギー関連団体と協力し、業界全体での取り組みを促進します。

エンドユーザ側への理解とブランディング

新しい技術やサービスを普及させるためには、エンドユーザの理解と受け入れが不可欠です。しかし、専門的な技術用語や複雑な仕組みを説明しても、かえって混乱を招く可能性があります。

  • エンドユーザにはブロックチェーンという単語は御法度

    • ブロックチェーンという言葉は技術的で難解に感じられることが多いため、エンドユーザ向けのコミュニケーションでは使用を避けるべきです。代わりに、「安心・安全な取引」や「直接エネルギーを売買できる」といったメリットを強調します。

  • 親しみやすいブランドイメージ

    • 一つの案ですが、エンドユーザに馴染みのある「ジモティ(地域の掲示板・取引サイト)」のようなブランドイメージを持たせることで、親近感を高めます。「エネルギーのジモティ」として、地域の人々が気軽に参加できるプラットフォームとしてブランディングします。

    • これくらいの慣れ親しみかんが先端テクノロジーがキャズムを越えるためには必要だと思います。

  • 蓄電池メーカーや再生可能エネルギーメーカーとのパートナーシップ

    • P2Pエネルギー取引を実現するためには、ハードウェアのインフラ整備も重要です。蓄電池や再生可能エネルギー機器を提供するメーカーとの連携により、ユーザへの総合的なソリューションを提供できます。以下は具体策の案です。

    • メーカーもしくは家電量販店に代理店販売をしてもらうということですね

不可逆な日本のトレンド

これまでの記事で、P2Pエネルギー取引の可能性や、それを実現するために必要な要素についてお話ししました。今回は、日本における再生可能エネルギーとエネルギー自給率向上のための不可逆なトレンドについて見ていきたいと思います。政府の政策や補助金制度、蓄電池の普及状況、市場への新規参入者など、具体的な事例を交えてご紹介します。

再生可能エネルギー・エネルギー自給率に関する政府の政策

日本政府は、エネルギー自給率の向上と再生可能エネルギーの普及を重要な政策課題と位置づけています。以下に具体的な政策と補助金制度の例を挙げます。

  • 第6次エネルギー基本計画(2021年):

    1. 2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標に掲げ、2030年までに再生可能エネルギーの比率を**36〜38%**に引き上げる計画です。

  • 再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度):

    1. 再生可能エネルギーによる電力を固定価格で買い取る制度で、家庭や企業が太陽光発電などを導入しやすくなっています。

  • 再生可能エネルギー促進賦課金の見直し:

    1. 再エネ導入の負担を公平化し、普及を促進するための賦課金制度の改善が進められています。

  • 補助金制度の具体例:

    • 住宅用太陽光発電導入支援事業: 個人が太陽光発電システムを設置する際の費用を一部補助。

    • ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業: エネルギー消費を実質ゼロにする住宅の建設や改修に対する補助。

    • 地域再エネ活用推進事業: 地方自治体が再エネを活用した地域活性化を図る取り組みを支援。

これらの政策と補助金制度により、再生可能エネルギーの導入が加速しており、エネルギー自給率の向上に寄与しています。

蓄電池設置の普及

再生可能エネルギーの効率的な活用には、蓄電池の設置が重要です。蓄電池の普及状況とその背景について見てみましょう。

  • 蓄電池の役割:

    • エネルギーの安定供給: 太陽光や風力などの不安定な発電量を調整し、余剰電力を蓄えて必要なときに使用。

    • 停電時のバックアップ: 災害時の非常用電源としても活用可能。

  • 普及の現状:

    • 価格の低下: 技術の進歩と量産効果により、蓄電池の価格が下がり、一般家庭でも導入しやすくなっています。

    • 政府の補助金: 蓄電池設置に対する補助金制度が整備されており、初期コストの負担が軽減。

      • 蓄電システム導入支援事業: 国や自治体が実施する補助金制度で、設置費用の一部を補助。

    • 住宅メーカーの提案: ハウスメーカーがZEHの一環として、太陽光発電と蓄電池をセットで提案するケースが増加。

  • 市場の拡大:

    1. 蓄電池市場は年々拡大しており、2020年から2025年にかけて年平均成長率が約10%と予測されています。これにより、エネルギーの地産地消や自給自足が現実味を帯びています。

蓄電池や太陽光パネル市場へのプレイヤーの参入

エネルギー市場の拡大に伴い、多くの企業が蓄電池や太陽光パネル市場に参入しています。私が把握しているのでめっちゃ多いです笑

  • 国内企業の動向:

    • パナソニック: 家庭用蓄電池システムを提供し、エネルギーソリューション事業を強化。

    • 京セラ: 太陽光パネルと蓄電池を組み合わせたエネルギーシステムを展開。

    • シャープ: AIを活用したエネルギー管理システムを開発。

  • 海外企業の参入:

    • テスラ(Tesla): 「パワーウォール」と呼ばれる家庭用蓄電池を日本市場に投入。

    • LG化学: 大容量の蓄電池を提供し、住宅から商業用まで幅広く展開。

  • 新興企業・スタートアップ:

    • エネチェンジ: エネルギー関連のデータ分析やサービスを提供し、蓄電池の普及に寄与。

    • オムロン: 蓄電システムの制御技術を開発し、他企業との協業を推進。

  • 異業種からの参入:

    • 自動車メーカー: 電気自動車(EV)のバッテリー技術を応用し、蓄電池市場に参入する動き。

      • 日産自動車: EVのバッテリーを活用した家庭用蓄電システムを提供。

これらのプレイヤーの参入により、競争が激化し、製品の多様化や価格競争が進んでいます。その結果、消費者にとっては選択肢が増え、導入コストの低下が期待できますね。

おわりに

再生エネルギーとそれに伴う蓄電池の普及は不可逆な流れだと思います。そして補助金なしでも回る世界を実現するためにはP2Pの取引の実現と、実はB2B2Cの領域においても中間マージンをブロックチェーンでリプレイスできたりするので、再生可能エネルギーが今の既存エネルギーよりも安くエンドユーザが使える未来はそう遠くないと思います。

再生可能エネルギーという単語を見るとディープテック的なアプローチが真っ先に浮かぶことがあるかもしれません。ですが、それ以外のソフトウェアの領域でインフラを作っていくこともそれと同じように重要だと思います。相当大きな社会的なインパクトだと思ってます。

これを実現したいと思う熱い思いを持った起業家の方がいましたら是非お話聞かせてください!
一緒に社会を変えましょう!


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