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海のスーパーフード!海藻が変えるCO2と安全保障の未来

はじめに

今回の記事を読むと、今世界を動かしている2つの大きな潮流、「食の安全保障」と「カーボンニュートラル」について理解ができます。なぜか?それは今回紹介する海藻がまさに食の安全保障とカーボンニュートラルの交差点に当たるとんでないポテンシャルを秘めたプロダクトだからです。
海藻関連の事業者の方、スタートアップの方、興味を持ったVCの方、是非気軽にご連絡ください!


食の安全保障の現在地と今後

いったん調べてみると実は2011年には日経新聞に記事が出ていたりするので、概念自体は古くからありますが、特にホットになったのはロシアによるウクライナ侵攻を機に、砂糖をはじめとした食料品の値上がりが顕著になったことから、一般的に叫ばれる言葉になった印象です。

食の安全保障とは何か?

国連食糧農業機関(FAO)資料にその定義が載っていますが、外務省の翻訳をみると
「食料安全保障とは:全ての人が、いかなる時にも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成される状況。」のことを指します。

そしてこれには、供給、アクセス、利用、安定性という4つの側面で定義づけられます。

外務省『日本と世界の食料安全保障』2020年8月

この概念に当てはめると、例えば、トウモロコシや小麦といった穀物について考えてみましょう。これらの穀物はほとんど輸入に頼っていますが、日本の輸入の際の品質検査は高度なので、利用面での安全性は高いと言えます。
一方で、ロシアによるウクライナ侵攻を起点に価格が高騰し、供給が不安定になりました。これは供給面における安全保障が十分でないと言えるでしょう。

日本の現在地

とはいえ、別にトウモロコシや小麦がなくたって、納豆と米があればいいよと思っている私みたいな方がいると思います。
そこで、我が国の食料自給率について、カロリーベースと栄養価ベースで見ていきたいと思います。

カロリーベースで見ると37%になります。

農林水産省「食料の安定供給に関するリスク検証(2022)」P.27より

栄養価ベースで見ると、特にタンパク質の自給率が低くなります。
豚肉で見ると飼料まで含めた時の自給率は6%になります。

農林水産省「知るから始める食料自給率のはなし」

なぜここまで低いのか?というと、豚肉を育てるのに必要な飼料の多くを輸入に頼っているからですね。

FCP活動報告会わが国の食料の消費変容の動向と安定供給に係る課題』

ここでトウモロコシと小麦の伏線が回収されてしまいました、、、

来る2050年プロテインクライシス

新興国の人口増加もあいまり2050年には世界中でタンパク質需要が大幅に増加することが見込まれます。

農林水産省「2050年における世界の食料需給見通し」(2019年)

畜産物の急激な供給増加は難しく、各国でタンパク質確保の戦略が行われているのが今と言えます。つまり、軍事、半導体に並ぶ安全保障の重要なトピックとして各国が戦略的に動いているということになります。

食の安全保障におけるプレイヤー

この領域で活躍するプレイヤーは主に2パターンがあげられます。

①代替タンパク質の開発
植物性タンパク質や昆虫食などですね。
発芽大豆を原料とした植物肉「ミラクルミート」を開発・製造するDAIZさん

徳島大学の研究を基に食用コオロギの生産・販売を行っているグリラスさん

などが挙げられるでしょう。
②飼料開発
トウモロコシや小麦に変わる畜産物の資料の開発ですね。
豚の飼料になる昆虫食を開発しているスーパーワームさんなどが挙げられます。

ここまでで食の安全保障に関わる概念と今後表出するであろう課題と現状活動するプレイヤーを見てきました。今度はもう一つのテーマであるカーボンニュートラルに参りましょう。

カーボンニュートラル

これは概念などはなんとなく皆さんの頭にあると思うので、政府目標だけクイックに掴みます。
日本政府が置いている削減目標は、2030年までに2013年比で46%、そして2050年にはカーボンニュートラルの実現を目指します。

欧米ではどんな取り組みがなされているのか?

削減のインセンティブとして主に2つの取り組みがなされています。
排出量に合わせた税率の適用(炭素税)とその排出量を相殺するカーボンクレジット市場取引です。
炭素税は、企業や個人が排出する二酸化炭素(CO₂)やその他の温室効果ガスに対して課税する制度です。この税は、化石燃料の使用に伴うCO₂排出量に基づいており、排出量が多いほど高い税率が適用されます。
ヨーロッパでも炭素税の導入が、カナダでも2008年から一部の州で導入が進み現在全国的に拡大しています。

Carbon Taxes in Europe, 2023

例えば、フランスだと1トンの排出量に対して€44.58が炭素税としてかかってきます。この税率は政府が年次で見直したりする政策マターになります。

一方でカーボンクレジットとは、排出削減量に応じた価格が取引市場で決定され、削減目標に対して未達の企業は余った企業からそのクレジットを購入するという仕組みになっています。
これは政策によって影響は受けるものの、市場として成り立っています。代表的な市場はヨーロッパのESTですね。

As the longest standing emissions trading system, the E.U. ETS carbon pricing trend shows a dramatic shift upwards and is projected to continue to rise (May 2023).

ピーク時には€103/CO2tを超えており、10年前と比較すると20倍近くに成長している市場といえます。

日本の現在地

ここまで世界の事例を見てきましたが、日本はどうなのでしょうか?それを見ていきましょう。

日本にある2つのクレジット

日本のカーボンクレジットは主に2つがあります。
①ESTと同系統に当たるJクレジット、②ブルーカーボンクレジットです。

J-クレジット『制度事務局J-クレジット制度について(データ集)』

どのクレジットなのかで価格よるばらつきが出ますが、再エネで見ると3,300円くらいがピークですね。ESTが€1=160円だとして、16,000円で取引されていると思うと、5倍くらいの差が出てますね。
この差の大きな要因に一つに炭素税の導入があると思いますが、2026年に本格的に排出量取引制度を導入していき、目標未達の企業に課徴金を課すことも検討されているので、ESTに並ぶ価格帯まで上がる可能性は大いにあります。
J-クレジットとは逆に、すでに高価格がついている取引市場もあります。それがJ-ブルーカーボンクレジットです。
J-ブルークレジットは、日本におけるブルーカーボンを基にしたカーボンクレジット制度で、海洋や沿岸生態系が吸収した二酸化炭素(CO₂)を定量化し、取引可能なクレジットとして認証・発行されるものです。この制度は、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE)によって管理されています。

農林水産省「Jブルークレジット制度の概要(国内)」

2021年のJ-ブルークレジットの価格は7万を超えており、非常に高値がついています。

JBE「ブルーカーボン・クレジット制度(Jブルークレジット®)の状況」

なぜここまで高値がつくかというと、ブルーカーボンクレジットは供給の希少性が高いこと、また炭素の吸収・貯留だけでなく、生物多様性の保全沿岸地域の防災漁業資源の維持地域コミュニティの支援など、多くの共益が生まれることが背景にあります。
加えて吸収量について、マングローブや海草藻場などのブルーカーボン生態系は、陸上の森林に比べて単位面積あたりの炭素貯留能力が数倍高いとされています。例えば、マングローブは陸上森林の最大4倍の炭素を貯留できるとの報告があります。この高い効率性がクレジットの価値を高めています。

海藻の可能性

ここまでプロテインクライシスとブルーカーボンクレジットについて説明をしてきました。この大きな2つの潮流の台風の目が海藻に他ならないと思います。海藻の特徴を以下にまとめます。

高いタンパク質含有量と栄養効率について

100gあたりのタンパク質含有量、製造コストとタンパク質1gあたりの費用を整理したのが次の表になります。

1gあたりの製造効率で見ると、大豆は加工される前提ではあると思うので、それ以外で見ると、焼き海苔がすごいですね。次点で豆腐、納豆、昆布、わかめとなっています。

高いCO2吸収量

植林に使われる杉などに比べて、昆布は約5倍のCO2吸収量を誇ります。

(これはファクトチェックできていませんが)ChatGPTに聞くと、杉を1ヘクタール植林するのに20~30万円、昆布を養殖するのに50~100万円なので、植林するよりも昆布を養殖する方がカーボンニュートラルとしては良い戦略になることがわかります。

地政学的な優位性

海藻の魅力はわかったが、なぜ日本で?という疑問が残ります。これについて日本は世界で最も海藻事業に有利なポジションにいると考えられます。

島国であり海洋大国であること

排他的経済水域の国別ランキングに日本は堂々の6位に入っています。

水産の生産量でも23年にノルウェーとフィリピンに抜かれましたが、依然として高い地位を誇っています。

みなと日経『日本の水産生産量、初のトップ10落ち FAO21年 世界で増産も3%減』

世界的にみて資源および産業として水産業に強みがあることがわかります。

食品としての消費量

日本以外にも海藻を食べる国は存在します。

ですが、毎日何かしら海藻を摂取する国民性があるのは日本くらいでしょう。
生産したものがその地域で消費されるというサプライチェーン上の強みも持っていることになります。

今後の課題

ここまで海藻のポテンシャルについて説明をしてきましたが、ここからは今後についてお話をしたいと思います。主に3つ取り組まないといけない課題があると思っています。

製造コストの圧縮

大豆と比べるとまだまだ高いので、これをイノベーションで変えていく必要があります。
サプライチェーンのどこに課題があるかは今後キャッチアップしていきたいと思っています。

生産領域の拡張

海を泳ぐとそこら辺に生えている印象のある海藻ですが、養殖地には一定の制約があります。
一番は河口から運ばれる栄養と海流が交わる点に置く必要がある点です。
また、温度管理や光合成の管理も重要になるので、ここら辺を解決するテクノロジーがあれば、生産領域を今の限定された場所から他に拡張することが可能になり、供給量を増やすことが可能になりそうです。

輸出を伸ばす

海藻はめちゃくちゃ輸出に向いているプロダクトだと思います。乾燥わかめ、昆布、海苔、どれをとっても足が長いので、需要さえ喚起できれば、特別なサプライチェーンを持たなくても輸出が可能です。
抹茶が海外でバズっているように、海藻も工夫さえすれば、必ず世界で受け入れられると思います。

課題についてはざっくりしていますが、ここにビジネスチャンスがあると考えています。

さいごに

これまで記事を読んでいただきありがとうございました!
海藻めっちゃ魅力的だと思われた方は是非シェアをお願いいたします!
これからの日本のスタートアップはグローバルでNo.1になり、バンバン外貨を稼いでいくことが求められると考えています。
その中で、海藻は日本に確実に地の利があり、大きな潮流が今来たところです。絶対この波に乗るべきだと思いますし、私はキャピタリストとしてこの分野に投資をしたいと考えております。
この記事に共感した!カジュアルに私と話したい!という方がいましたら、是非ご連絡ください!

あなたのご連絡待っております!

余談ですが、投資テーマとして予防医療とエネルギーもありますので、周りの起業家がいたら是非繋いでください!


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