B.LEAGUE ALL STAR 2021『リモートオールスター』
新型コロナウィルスと戦いながら進む2020-21シーズン。B2茨城ロボッツのホームタウンである水戸市で開催されたBリーグオールスターは、緊急事態宣言の煽りを受けて、史上初の無観客開催となりました。無観客試合を「リモートゲーム」と呼ぶようになったらしいですが、であれば今回のオールスターは「リモートオールスター」とでも呼ばれるんですかね。
たぶんですが、プロスポーツのオールスターが無観客ってバスケどころか他のプロスポーツを合わせても史上初ではないでしょうか。
それにしても茨城は、2019-20シーズンのオールスター開催権争いで北海道に負けてしまったものの、2020-21シーズンのオールスター開催予定だった琉球の新アリーナの建設に遅れが出た影響で急遽開催権が回ってきたかと思えば、今回の無観客開催ですからね。茨城ロボッツの運営スタッフも受け入れる水戸市の職員の方々も大変だっただろうと思います。
たしか茨城ロボッツオーナーの堀義人さんは、2019-20シーズンのオールスターが北海道に決まった際に「災害(地震)からの復興を持ち出されたら勝てませんよ」的なことをおっしゃっていたような気がするのですが(勘違いだったらすみません)、コロナからの復興を盾にしてオールスターのリベンジを仕掛けてくるのではないかと密かにワクワクしています。
話が逸れてしまいました。本題に戻ります。
前述した通り、今回のオールスターは史上初の無観客開催となりました。誰にとっても初の試みであり、従来のオールスターと比べて良かったところも悪かったところもあったと思います。このnoteでは、そんな新たなオールスターについて良かったこと悪かったことを好き勝手に語っていきます。
ダンクコンテスト
まず最初に行われたのはダンクコンテスト。出場する選手が自分の好きなようにダンクをして、その芸術点を競うコンテストです。芸術点といってもダンクの種類に応じて具体的に点数が決められているわけではないですし、印象点を競うコンテストですね。特に今回は、審査員による審査を設けるわけでもなくファンによるSNS投票のみによって結果が決まる形となったので、半分人気投票みたいなものかと。
今回は、全選手が事前に収録したダンクの映像を配信する形となりました。そのおかげで、ライブだとどうしても間延びしがちなダンクコンテストですが今回は非常にテンポ良く進みました。
一方で気になったのは、「これ全部1回目で成功したのかな…」という点。個人的にダンクコンテストでは、「どんなダンクをするか」と同じかそれ以上に「1回で決められるかどうか」も重要だと思っています。だって、同じダンクを1回で決めた選手と、10回チャレンジしてようやく決めた選手とで、評価が同じっておかしいじゃないですか。気にならない人は気にならないでしょうし、「1回目で成功しましたよ」と言われればそれを信じるしかないんですけど、個人的にはどうしても気になってしまったポイントでした。
もう一つ気になったのは、「ダンク被り」です。今回は事前収録という形を取っている以上、前の選手のダンクを見て自分のダンクを変えるということができません。実際に今回、コー・フリッピン選手の1本目と、リチャード・ソロモン選手の1本目のダンクが丸被りしてしまいました。空中でレッグスルーをしてからダンクをするというめちゃめちゃレベルの高いダンクなのですが、どうしても2回目となると印象は劣ってしまいます。事前収録という形でなければ、おそらくソロモン選手は違うダンクにしていただろうな…と考えると、その点がちょっと残念でした。
ただし、ダンクの内容自体はBリーグ開幕当初に比べてものすごくレベルが上がっていると思います。優勝したコー・フリッピン選手なんて、まさか日本人でレッグスルーダンクを決める選手が現れるなんて一昔前は考えもしませんでした。Bリーグ自体も好調で外国籍選手のレベルも上がっていますし、来年再来年とダンクコンテストのレベルはさらに上がっていきそうですね。
あとオマケですが、アイラ・ブラウン選手のダンクのときの他の大阪エヴェッサの選手たちが面白かったです。ああしてオールスターに呼ばれていない選手も登場して一緒に盛り上げることができるのは、リモートオールスターならではの利点かもしれません。
動画クリエイターコンテスト
こちらは今回が初の試みとなる、一般参加型でBリーグの提示したテーマに沿って動画を作成してその出来を競う「動画クリエイターコンテスト」。Bリーグが公式に素材を提供して、ファンがBリーグオールスターやオールスター開催地である水戸市の魅力を伝える動画を作成するという、今までにない新しい切り口のコンテストであり、個人的にはとても面白かったです。
上で紹介したのは『「開催地である水戸の魅力を全国に伝える」ことを図る動画企画』というテーマで制作されたMVP作品。そして、次に紹介するのがもう一つの『「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2021 IN MITO」を通じたB.LEAGUEファンの拡大を図る動画企画』というテーマで制作されたMVP作品です。どちらもMVP作品だけあってテーマに沿ってBリーグオールスターや水戸市の魅力が伝わる素敵な仕上がりになっています。
企画としてはすごく面白かったのですが、ひとつだけ気になった点がありました。それは、本コンテストのスケジュールについてです。Bリーグオールスターや水戸市の魅力を伝える動画のコンテストであるにもかかわらず、ノミネート作品が公開され始めたのはオールスター開催2日前の1月14日からで、ノミネート作品の中には開催当日の1月16日に公開されたものもありました。オールスターの場でMVPを発表することにこだわったのかもしれませんが、動画のコンセプトを考えれば、公開もMVPの発表ももっと早く済ませてしまい、オールスター開催の1週間前くらいからは開催地の至るところでその作品をどんどん流していくくらいのスケジュールの方がよかったのではないかと思います。
また、審査基準には「掲載媒体でのエンゲージメント」が含まれていましたが、オールスター開催2日前に公開された作品と開催当日に公開された作品でエンゲージメントを比較するのは不可能ではないかと…。そもそもオールスターが開催できるのか否かという問題があって本コンテストに関する作業が後回しになったのではないかという予想もありますが、それにしてもね、という印象でした。
まあ、繰り返しになりますが本コンテストは今回が初の試みでしたので、どんな作品が出てくるのか運営側もビクビクしていたことでしょうし、あまり思い切った動きはできなかったのかもしれません。次回以降のブラッシュアップに期待です。
あと付け加えるとすれば、もう少しお手軽なファン参加型の企画があってもよかったかなと。動画制作までいかなくても、ポスター制作くらいの企画があると参加者も増えてもっと盛り上がったかもしれません。その分、審査する側も大変になるので、バランスが難しいところではありますけどね。
スキルズチャレンジ
続いてはスキルズチャレンジ。一言で言えば障害物競走です。こちらも今回はダンクコンテスト同様、事前収録という形で行われました。
こちらに関しては、個人的にはダンクコンテストのときに感じたような「本当に1回目の挑戦か?」という疑問はなかったです。1回目だと信じるしかないのはこちらも同じなのですが、これに関していえばそもそもが成功/失敗を競うようなコンテストなので、失敗したからといって撮り直すのがNGなのは誰が考えても明らかですし、さすがにそんなことはしないだろうと。一方でダンクコンテストのときは、「成功するかどうか」が一番の注目点ではないので、失敗したら撮り直すという考えもわかるだけに気になってしまったのだと思います。失敗したダンクの映像を配信したって仕方ないしね。
ただし、個人的にこのコンテストには根本的な問題があると思っています。それは、「シンプルに盛り上がりに欠ける」ところです。派手なダンク、スリーポイントに比べて、パスやドリブル、FTといったプレーはどうしても地味です。また、競技の構造的に、成功で盛り上がれるダンクコンテストや3Pコンテストと違って、失敗しないことを祈るというネガティブな目線になりがちです。アメリカのNBAでも同じようなコンテストがあるのですが、おそらくは同じような理由でダンクコンテストやスリーポイントコンテストほどは盛り上がらず、頻繁にルールをマイナーチェンジしてより良い方法を探っています。
ではどうすれば、というのは非常に難しい問題なのですが、あくまでも個人的に見てみたいルールがあるのでここで紹介します。それは、「同じチームから2人ずつを選出してペアで挑む」という、障害物競走に2人3脚の要素をプラスしたルールです。これであれば、ドリブルが速い選手、パスが上手い選手、シュートが正確な選手、といったそれぞれの個性をどう組み合わせるかというのが楽しみの1つになりますし、仮にミスをしても、1人で挑戦しているときのミスに比べてコミカルな印象になるため、オールスターというお祭り向きになるのではないでしょうか。もし採用されたら、僕はアイデア料としてBリーグにいくらか請求するので、このnoteを読んだ方は証人になってください。
スリーポイントコンテスト
最後はスリーポイントコンテスト。1分間で5つのポジションから4本ずつ、計20本のスリーポイントを放ち、入った数を競うコンテストです。
こちらもスキルズチャレンジ同様、ダンクコンテストのときのような違和感はなく素直に見ることができました。内容は参加選手7人中6人が成功数15本~17本の間に入るという超接戦の末、金丸晃輔選手の3連覇。これ、ライブで挑戦した福澤晃平選手が同点だった場合どうする予定だったんですかね。僕は、途中でこっそりお偉いさんから福澤選手に圧力がかかったものと予想しています(嘘)。
スリーポイントコンテストについては、次々とシュートが入っていく様は見ていて気持ちがいいですし、どうしても外国籍選手が多くなるダンクコンテストと比べて日本人選手が活躍しやすいコンテストでもあるため、盛り上がりに関しては申し分ないと思います。ただ、今回も超接戦になったように、少し難易度を上げていかないと選手の成績が頭打ちになるのではないかな、という懸念があります。ちなみにNBAでは、同じ1分間で5つのポジションから5本ずつ、計25本を放って決着をつけるシステムになっています。それだけ、素早く正確なシュートが求められるということですね。Bリーグもそれを見習ってもいい時期に来ているかもしれません。
また、ボーナス的なルールを加えるのも1つの案です。再びNBAの話になりますが、NBAでは1本1点で計算される通常のボールに加え、マネーボールと呼ばれる1本2点で計算されるボールを追加し、さながら「プレッシャーのかかる場面でもしっかり決めることができるか」という楽しみを追加しています。選手が得意なポジションを指定して、そのポジションだけすべてマネーボールに変更できるというルールで開催されたこともありました。
ここでまた提案という名の個人的願望なのですが、1つのポジションのショットがすべて成功したら+1点するというボーナスルールはどうでしょうか。各ポジションについて、1~3本成功の場合はそのまま1~3点ですが、4本成功のときだけ5点(4点+1点)にするというものです。シューターを見るときの醍醐味の1つとして「入りだしたら止まらない」というのがあると思うのですが、それにボーナスを加えてあげようという意図です。盛り上がってきたタイミングに合わせてボーナスが追加されるため、会場はより一層熱狂すると思うのですが…どうでしょうか。いいですよね?いいですねと言え。
最後に
と、いろいろ不満も含めて書いてみましたが、やはり楽しいは楽しいですね、オールスター。一番のメインイベントであるオールスターゲームが中止になったのは残念でしたが、このコロナ禍の中で無観客でもできることをやろうとバスケ界を盛り上げてくれたBリーグ、茨城ロボッツ、そして水戸市の関係者の方々には感謝しかありません。
オールスターは終わりましたが、リーグ戦はこの緊急事態宣言の中でもまだまだ続きます。各チームとも、問題なく全日程を消化できるように、そして来年のオールスターの頃にはコロナも収まって以前のような熱狂あふれるオールスターが開催できるように、心から祈っています。