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Eagle's Eye 第3節 vs福岡 Game2感想
前日の大勝から一転、接戦の末にGame2を落としてしまったFE名古屋。敗因の分析というとおこがましいですが、この試合の中で何が起きていたのか、分かる範囲で書いていきたいと思います。
なお、ちょくちょく余談を挟んでいきますが、長いと感じる方はその部分を飛ばしていただいても読めるようにしておきますのでどうぞ読み飛ばしてください。
(選手名は敬称略で記載しています)
ハイライト
余談①
というわけでいきなり余談からスタートするのですが、福岡を率いるクラロスHCのバスケってすごく特徴的で好き嫌いが分かれますよね。ちなみに僕は結構好きです。ただ、嫌いという人の意見もよくわかります。
誤解を恐れずに言うと、クラロスHCのバスケって『弱者のバスケ』なんですよね。少なくとも、相手の実力を正面から受け止めてそれを上回ってやろう、という横綱相撲ではないです。どちらかといえば、あの手この手を使って相手の実力を発揮させないまま試合を終わらせてしまおうという、負けた方からするとモヤモヤ感が残るバスケ。(断っておきますが、福岡が弱者だと言っているわけではないです。弱者が強者に勝とうとするときに用いられることが多いバスケットスタイルだ、というだけ。)
他のスポーツで例えると、相撲でいえば立ち合いで変化を好む力士でしょうか。サッカーでいえば、自陣にドン引きして相手の猛攻に耐え、カウンター1発を狙うようなスタイルに近いかもしれません。ある意味玄人好みのバスケだとは思うんですけど、勝っても負けても爽快感のあるスタイルではないような。
これは完全なる余計なおせっかいなので、もし福岡ブースターの方が読んでおられたらここは読み飛ばしてほしいんですが、一時経営難に陥って、これからまたファンを増やしていかなければならないチームが選ぶスタイルなのかなっていう疑問は正直あります。秋田のような、ファンのベースがしっかりしていて、バスケを見る目もそこそこ肥えているようなチームならいいんですが。まあ、福岡も学生バスケがすごいですし、杞憂に過ぎないかもしれないですけどね。余談でした。
前半
Game2、序盤はGame1と大差ない試合展開になります。FE名古屋は、出だしこそ福岡のプレッシャーに引っかかる場面があったものの、数分もすればだいぶ慣れてボール運びも安定していました。福岡のディフェンスも基本的にはGame1と同じで、変わったところがあるとすれば、ドリブルで侵入してくる選手へのヘルプディフェンスの意識を強くしていたくらいかなと。その分、FE名古屋はゴール下でポジションをとっているフィッツジェラルドやウォルドーへパスを出すことで、着実に得点を重ねていきます。
一方福岡は、序盤にイリーガルスクリーン(※1)を2つ吹かれたことでスクリーンをかけにくくなったのか、FE名古屋のディフェンスを崩せないまま3Pに頼るオフェンスが続きます。ただ、これが高確率で入って何とか後半に望みをつなぐ形。結局、FE名古屋の10点リードで折り返します。
(※1)動きながらスクリーンをかけたり、不自然に足を広げたりお尻を突き出したりして相手を引っかけようとするプレー。オフェンスファウル。
余談②
この試合、前日に引き続いてFE名古屋は外国籍選手にボール運びを手伝わせることで福岡のプレスをかわしていたのですが、フィッツジェラルドやウォルドーがそれを忘れていつもの癖で先に行ってしまうシーンが何度もありました。そこで横江(あるいは杉本)が取った作戦は、外国籍選手が戻ってくるまでシュートを決められた後のボールを拾わないというもの。長いときには5秒以上もプレーを再開しないこともあり、目まぐるしい展開から相手のミスを誘いたい福岡としては最高にイライラしたことと思います。笑
第3Q
ハーフタイムを挟んで、福岡はオフェンスを大きく変えてきます。前半に上手くいっていなかったスクリーンからのドライブの回数を減らし、マドゥアバム、スパイクスといったビッグマンにポストで勝負させてきました。パワーではFE名古屋の外国籍選手に分がありますが、一瞬のスピードでは福岡の方が上。これをFE名古屋の外国籍選手が上手く守ることができず、福岡の得点が伸びていきます。それでも、FE名古屋はFE名古屋で前半同様ビッグマンの合わせから得点を重ね、点差は10点前後をいったりきたり。
ここでさらにクラロスHCが動きます。あえて外国籍選手を1人にして、日本人選手の脚を使うことでFE名古屋へのプレッシャーを強めてきました。これが大当たりで、FE名古屋はターンオーバーを連発してしまいます。
福岡の仕掛けるプレスディフェンスというのはギャンブルのようなもので、コート全体で激しいディフェンスを仕掛け、短いスパンで何度もダブルチームを繰り返すことにより、相手から正常な判断力を奪ってミスを誘います。ときにはファウルをして相手に冷静さを失わせるのもその1つです。
前半は適切に対処できていたFE名古屋でしたが、福岡に比べて主力選手の出場時間が長いことによる疲労の影響もあったのか、この時間帯では見事に福岡の術中にはまってしまいました。これについては日本人選手だけではなく外国籍選手も同じで、前半は丁寧にスクリーンをかけて崩していたところを、スペースがないのに安易に裏へのパスを要求したり、難しい位置からの1on1を仕掛けてしまったりと、やや精彩を欠くプレーが見られました。
結局、福岡が外国籍選手を1人にしてからの約4分間の間、FE名古屋は1点も奪うことができずに同点で第4Qを迎えます。
余談③
この試合、福岡のMVPには谷口淳を推します。特にこの第3Q終盤のディフェンスは本当に素晴らしかったです。一人でティルマンを守り切るシーンなどもありましたが、それよりも、スクリーンに行こうとする選手に身体を寄せて少しでも良い位置でスクリーンをかけさせないようにするプレーや、自分以外のディフェンスの状況をよく把握して、ヘルプに出た後すぐに適切なポジションに戻るプレーなど、目立たないところですごくいいプレーをしていました。会田やジャワラなどFE名古屋の若手ビッグマンにはぜひ見習ってほしいです。
クラロスHCのバスケをBリーグで成立させるためには、外国籍選手を相手に身体を張って守れる日本人選手がどうしても必要になると思うんですよね。秋田時代でいえば、中山拓哉や谷口大智のような。この日の福岡の選手の中では、その可能性を一番感じさせたのが谷口でした。
西宮時代に身に着けた3Pも効果的でしたね。外国籍選手が1人しかいないにもかかわらず福岡のインサイドアタックが成功していたのも、谷口が3Pラインでティルマンの注意を引き付けてインサイドへのヘルプに行かせなかったことが大きいと思います。
第4Q
そして第4Q、さすがにFE名古屋も修正してくるものの、福岡のインサイドアタックに対する明確な回答はなく、試合はシーソーゲームとなります。お互いに我慢の時間帯が続きましたが、先に痺れを切らせてしまったのはFE名古屋の方でした。
結果的に勝敗の分かれ目になったかな、と思ったのは、残り4:49で白戸のシュートと同時に横江がスパイクスにファウルをしてしまい、白戸のシュートはカウントでさらに福岡ボールとなってしまったシーン。スパイクスのスクリーンが多少イリーガル気味だったのは気になりましたが、直前にも横江は同じプレーでファウルを取られているだけに、ここは耐えてほしかったところです。このファウルで横江が個人ファウル4つとなってしまい、一旦ベンチに下がります。再開後のディフェンスでも福岡に得点を許してしまい、同点から一気に4点差に。その後、離された点差を終盤の粘りで追いつきかけるも、最後の一本が決まらずに悔しい敗戦となりました。
余談④
この日、最初に福岡のイリーガルスクリーンが立て続けに吹かれたことで、FE名古屋の選手の中には「今日はイリーガルスクリーンを厳しく吹く審判だ」という意識があったのかもしれません。ただ改めて見返してみると、スクリーンのセットが遅いときにはイリーガルスクリーンを吹いていたものの、スパイクスが足を広げてセットするスクリーンについては一貫してファウルは吹いてくれませんでした。
勝敗の分かれ目として紹介したシーン以外にも、スパイクスのスクリーンに対してFE名古屋の選手たちが不満そうなしぐさを見せるシーンは何度もありましたが、吹いてくれないものに頼っても仕方ありません。「これにはファウルを吹いてくれないからそのつもりでプレーしよう」と切り替えられればよかったのですが、前述した「今日は厳しく吹いてくれる」という意識が刷り込まれてしまっていた結果、第4Qのあのシーンにつながってしまったのではないかと思います。
審判とコミュニケーションをとることは大切ですし、試合の前半であれば、ときには不満をぶつけてみることも、審判との間で判定基準への共通認識を深める上で有効かもしれません。ですが、勝敗のかかった重要な場面では、審判に頼らないプレーを見せてほしいと思ったのでした。その結果負けてもいい、とまでは言いませんが、少なくともその方が、負けたとしても見ている観客はモヤモヤした気持ちを抱かずに済みますしね。
総括
FE名古屋にとっては手痛い敗戦となったこの試合、現時点でFE名古屋が抱える課題が浮き彫りになったように思います。具体的には、①主力選手への負担が大きいこと、②横江不在時にゲームを落ち着かせられる存在がいないこと、③日本人選手(あるいはコーチ陣)と外国籍選手との間でプレーの選択にズレがあること、ですかね。③についてはこれから時間をかけて徐々にすり合わせができてくるとは思いますが、①,②については既存の選手の成長がなければどうにもなりません。シェリフや飛田、ジャワラをコンディション不良で欠くという厳しい台所事情ではありますが、第1戦では林のブレイクもありましたし、得点能力だけでいえば松山は既にB2の日本人選手の中でもトップクラスだと思います。彼ら若手の突き上げに期待して、これからの試合を見守っていきたいと思います。
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