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KBW2024探訪記 TONの勢いそしてユーザー獲得競争の新たなフェーズへ。

去年に引き続きKorea Blockchain Weekに行ってきましたので、その報告と、そこから見えてきたものについて少し考えてみたいと思います。

TONの勢い

月曜日に韓国に入ってその夕方からTONのイベントに参加。すぐに入場制限が入るほどの人気で、今回一番の熱を感じるサイドイベントの一つだったかと思います。やはり、Notcoinに始まり、Hamster Combat、Catizenなどのユーザーを多く獲得したアプリが出現したことと、それらのエアドロップの期待も含めて投資家やゲーム開発者ともに、今年の大きなチャンスと考えているのは日本も韓国も同じ状況のようでした。

ただ、テレグラムのミニゲームを作ることができてもそれがイコール成功につながるわけではないので、韓国の事業者に聞くと、やはりマーケティングに苦戦している開発会社が多いという話も聞きました。

だからこそ、インサイダーの人たちを補足するためにこのようなサイドイベントに参加しているというのもあるのかもしれません。私の隣で「あの人がHamster Combatのコアメンバーらしいよ」と噂していたのが印象的でした。TON関連のキーパーソンにコンタクトをどうとるかが成否を分けると皆感じているということでしょう。

ウォーカーヒルでのメインカンファレンス

メインカンファレンスについては、去年から場所が変わって、会場のレイアウトがかなり複雑になっていたのもあって、パネルセッションの会場はそこまで多くの人は入っていなかったようです。ブースもL1のチェーンやAIを活用したデータを取り扱うプロジェクトなどどちらかというとインフラ寄りのものが多かったような感じでした。

ブース会場で抽選会を各社がやっていたのですが、それに長蛇の列ができていたのは結構印象的で、抽選会を行って何かをプレゼントするというののプロジェクト側の目的はおそらく認知度の拡大とブランディングということだと思うのですが、こういったカンファレンスの場ではとにかくプロジェクトを認識してもらうのも重要なKSFにつながるということもあると思うので、ありかなとは思いました。

ちなみに写真はMt.Goxのマルクさんの登壇で、今彼らがネットワークステートと同じようなバーチャルな朝鮮王朝を作るというプロジェクトを展開していて、それの解説をしていました。

サイドイベント

去年に引き続き、KIMCHI WASABIというサイドイベントに参加、今回はPacific MetaさんとHAECHIさんが主催ということで、去年はホテルのレストランでしたが、今年はHAECHIさんのオフィスでの開催でした。

日韓双方のゲーム企業が集まり、それぞれの事業紹介や事業環境についてのトークセッションが行われましたが、全体の印象としては特にWeb3ゲームというジャンルにおいてはこれが正解というのがまだ見つかっていないという前提でいろんなチャレンジをしていく必要がありそうだと感じました。

kaiaとLINE NEXTが主催のイベントにも参加してきました。kaiaはLINEとカカオのブロックチェーンが先日統合してできた新しいチェーンで、今年の4Qには新しく動き出すようです。

この中でも特に注目しているのは、彼らがテレグラムの成功をトレースしようとしていること。LINEとカカオという日韓のメジャーなSNSを母体とするチェーンだけに、方向性としてはまさに、ミニアプリとウォレットのシームレスな接続というところになるでしょう。

LINEのMini DAppという形で現在事前申請を募集しており、これは日韓のユーザーをターゲットとするDApp事業者にとってはかなり有望な選択肢になるのではないかと思います。

そして、Soneiumの単独イベントにも参加。渡辺創太さんのプレゼンを聞いてきました。その中で、私が以前から疑問に思っていたことを質問してみました。それはSonyというブランドを表に出してしまうと、競合事業者はSoneiumに乗りにくくなってしまうのではないか?という点です。

これに対して、創太さんは、例えばディズニーがディズニーチェーンを作るという形になったとしてもそれはそれでよいと思うという主旨のお話をされました。競合にも乗ってもらうような汎用的なものを作るという方向だとなかなかうまくいかないかなと思っていたので、これは納得でした。

むしろ、パブリックチェーンを大手IP事業者が展開することによって競合他社もパブリックチェーンを活用しやすくなり、より様々なコンテンツがオンチェーンで展開されるというところまで読んで動いているとすれば、彼らの戦略は正しいように見えますし、その先にユーザーが便利に使えるマスアダプションした何かが出てくるのかもしれません。

まとめ

今回を通して感じたのは、いかに多くのユーザーに使ってもらうかに競争環境がシフトしてきたというところ。テレグラムとTONが示した数千万人単位のユーザーオンボーディングは、Web3の事業者にとって、ユーザー獲得が新たなフェーズに入ったことを示す良い刺激となっているようで、
LINEやカカオもこの競争に入ろうとしています。Animocaもテレグラムとの協業を進めてテレグラムをオンボーディングの有力な手段として推進することを明言しています。

Soneiumのイベントでも、ユーザーが意識せずに使うようになるというフェーズが語られており、ブロックチェーン産業は少し下にもぐって事業者が提供する共通の基盤というような位置づけになっていくのかもしれません。

なぜなら、「ユーザーが意識しないブロックチェーン体験」というのは、ユーザーにとってそれがブロックチェーンかどうかが分からないということと同じだからです。ということは、アカウントやそのアカウントが管理しているアセットに関して第三者を信頼するということでしかユーザーは存在できない状態になるということでもあります。

つまり、これまでの原始的なユーザーが鍵を持って自己管理するブロックチェーンとは違った形で普及するということであり、その上でなぜブロックチェーンを活用すべきかということを問い直す時期に来ているとも言えるでしょう。

WebXでもひろゆきさんと加納さん、渡辺創太さんが議論していたテーマのように、「なぜ使わなければいけないのか」という点をより見つめなおす時期に来ているのかもしれません。その上で表面上は今のアプリケーションと変わらないけれど裏側でブロックチェーンが動いていて、それが今までできなかったような効率化や効能を発揮しているという状況を作れるかです。

そんな、ブロックチェーンの機能を活用したソリューションを各社が提示していくフェーズにあるのではないだろうかと思います。

今年は聞くところによると700近いサイドイベントが開催されたとのことで、それだけ多様な側面で事業を行うようになってきているということだし、もう数年すると、メインカンファレンスの位置づけはあくまでプロトコルの発展に特化し、各アプリケーションのジャンル毎に大規模なカンファレンスが開かれるようになっていくかもしれないと感じました。

効果的なイベントの活用方法

海外イベントでの立ち回り方もかなり難しいと思うが、私が意識していることを少しだけ。基本的に自分が会いたい人、一緒に仕事をしたい人をあらかじめ特定しておくというのが重要です。

そして、彼らが参加するイベントに自分も参加する。そこで最初会う。そして彼らは他のイベントにも参加しているケースが多いので、そこで再度会う。2~3回会うと相互に認識するようになります。

一旦ここまでの関係を築けるかという点に焦点を当てています。つまり、こちらから連絡した時に「あんた誰?」とならない関係を築けるか。それがカンファレンスやサイドイベントでのネットワーキングで初期に達成できることだと思っています。

その上で、知り合った彼らに対し、どんな貢献ができるか。そこからビジネスでの関係もスタートしていきます。



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