なぜ日本のNFTマーケットプレイスはプライベートチェーンを採用するのか。いろんな方の意見まとめ。
NFT界隈のTwitterから
私も先日、日本のNFTマーケットプレイスにおいて、プライベートが選択されがちな理由を、新技術の社会浸透との関係でTwitterに投稿したが、割と大きな反響をいただいたので、他の専門家の方々の意見も踏まえてまとめておきたいと思う。
まずは私の連投から。既存のユーザーに「新しさ」と「安心感」の両方を提供するためには、既存システムだけのサービスではだめで、完全な最先端だとついてこれない。結果的にプライベートチェーンを選択するということにつながっていくのではないかという点を指摘した。
また合わせて、この選択を取ることの企業としてのリスクも併せて記載している。つまり、ハイブリッドでいくと、最終的に完全に切り替わるタイミングで先端技術にフォーカスしたスタートアップにシェアを奪われるリスクもあるということだ。
Tokyo Otaku Mode共同創業者兼COOのパジさんのツイート。IP企業と日々接している立場から、既存のIP事業者が抱えるジレンマも踏まえ、ファンや社内への説得の難しさも踏まえた選択としてのプライベートチェーンの選択であるとの分析である。またパジさんも同様に新興系に突き抜けられるという、スタートアップにとってのチャンス=既存IP事業者にとっては脅威の時期も続くとしている。
田上智裕さんのツイート、パブリックチェーンが絶対ということではなく、プライベートチェーン側をあえて選択している事業者はちゃんと考えて選択しているので、disることはないのでは?という意見だ。
信玄さんは、「非中央集権制」「システムの永続性」「相互運用性」といったところに注目し、プライベートチェーンのNFTの特性を指摘。
パブリックチェーンを推進する渡辺創太さんは、プライベートチェーンの選択は「短期ビジネス」という目的、つまり短期的に収益をあげる必要性という理由以外に理由はなく、長期的に重要な技術にリソース集中できないから過去に負けてきたのではと問題提起している。
double.jump.tokyoのファウンダーでもある玉舎さんは、プライベートチェーンの有り方自体も進化すると。つまり二分法で理解すべきではないし、いろんなあり方があるというご意見。ブロックチェーンゲーム開発でUXを考え抜いてきた玉舎さんだからこその深い言葉のように私は聞こえる。
結局、プライベートチェーンなのかパブリックチェーンなのか
そのた、コレクターの方やクリエイターの方等様々な方が、NFTのあり方についてTwitter上でも意見を見ることができた。
コレクターにとってはやはり、信玄さんの指摘した点、「非中央集権的、分散的」であり、結果的にそれが「永続性」を持ち、オープンであるからこそ様々なサービスがNFTでつながるという「相互運用性」を持つという点が魅力であり、それがプライベートチェーンでは失われてしまい資産性が下がるのではないかという意見に集約されるような気がする。
ただ、実際にパブリックチェーンはウォレットの自己管理(これはウォレットの秘密鍵をなくせば資産を失うということであり、間違った宛先に送信してしまったら二度と戻らないということでもある)という点においてハードルが高いし、その点だけでいえば不正使用や誤使用に対し対応してくれるクレジットカード会社の方がユーザーにとっての利便性は高いということもある。企業体を維持するためにできるだけ多くのユーザーにリーチし購入してもらう必要のある企業は、現状の限られたパブリックチェーンのマーケットにそのまま参入することは難しいし、カスタマーサービス(そもそも、非中央集権的なサービスは相互扶助であり、誰かがサポートしてくれるわけではないので、カスタマーサービスという概念もない)を提供しなければならない立ち位置としても取り組みが難しい面がある。
お客様「誤送信しました」
企業「すいません、お客様の責任でどうしようもありません」
という対応はできないのだ。
なので、パブリックチェーンが指向している自立した個の集まりが自身の責任の下で活動する仕組みというのは企業が提供するサービスとはなかなか相いれない。コンシューマ向けの企業がプライベートチェーンを選択する理由もそこにある。どちらが正解というのは現状無いし、どちらも一長一短あるというのが現状の答えだろう。
では、事業者はどうすればよいのか
では、NFTで何か事業を始めたいという場合どうすればよいのか。私の考えは、プライベート・パブリックで分けるのではなく、「トラスト」をどこに置くかで考えるという考え方だ。
企業活動において「トラスト」(信用)はとても重要な要素だ。最重要であると言ってよい。何かというと、お金を払ったらちゃんとモノが届く。それだけ。その積み重ねが事業活動であると言える。
その意味において、企業側が短期的にちゃんと信用を持ってデジタルコンテンツを販売することは可能であると言える。
ただ、そうすると「永続性」や「相互運用性」というところに疑問が残る。結局企業が販売したデジタルコンテンツだとその企業の中でしか使えないというわけだ。
だから、2ステップの方法が有効であると考える。まずは企業の「トラスト」を活用してデジタルコンテンツを販売するこれを「デジタルコマース」と呼ぶことにする。デジタルコマースは企業がこれはあなたに1点だけ与えますということを宣言すればよい。それをユーザーが信じれば成り立つからだ。
すでに、数量限定のデジタルコンテンツ販売サイトもあり、人気を得ている。
購入した商品を自分で楽しむだけであればこれで完結するが、誰かに売りたいと思った時に、企業の信用だけではどうしようもない自体に気づく。
ゲームの世界でもRMT(Real Money Trade)と呼ばれるアイテムやアカウントの取引が行われているが、CtoCの取引において、相手を信用するというのはとても難しく。その信用を保つためにCtoCのマーケットプレイスがエスクローサービスや監視等の多大なコストを負担している。
しかし、NFTになってしまえば、NFTマーケットプレイスはスマートコントラクトで安全な取引を実現してくれる。すまり、CtoCにおいてNFTはソリューションとして優れているということだ。選択する理由があるともいえる。
だから、BtoCはデジタルコンテンツ、CtoCで販売する時はNFTにするといった役割分担を行うというのも一つの方法なのではないだろうか。
NFTが出来ることを見極め、そこにフォーカスすることで、NFTの特性を十分に生かした事業展開も可能だと考えている。