031-災害により損害を生じたマンションの復旧を理解する
問題
解答
3
解説
前回は災害時のマンションの被災状況を判断する基準について説明しました。
非常に簡単なことですが、復旧や建替え、敷地売却などの基本になることです。
しっかりと覚えてください。
区分所有法では、災害等により建物の一部が滅失した場合の復旧等については第61条の15項目に集約して定めてあります。
復旧について区分所有者ができることについて覚えましょう。
区分所有者の復旧工事は限定される
マンションが被災した時、専有部分、共用部分のどちらも被災することが想定されます。
区分所有法では、それぞれについて区分所有者が行うことができる復旧工事について定めています。
専有部分の復旧工事について
所有部分である専有部分は、第三者に影響されることなく各自の判断で復旧工事を行うことが出来ます。
また、復旧工事に限らず他の組合員の承認があれば専有部分の一部を使用することが認められます。
共用部分の復旧工事について
共有部分である共用部分は組合員の判断で復旧工事を行うことが出来ます。
ただし、復旧議決や建替え議決、団地一括建替えの議決が可決されるまでと定めています。
組合が機能を取り戻したら、全員の合意の元で復旧や建替えを行うことになります。
共用部分の復旧工事の費用負担
各自が行った共用部分の修繕費は、組合員全員で負担することが原則になります。
負担額は規約等に決められた持分割合で負担をします。
勝手にやったことだから負担する必要はないと思われるかもしれませんが、共用部分の持分を考えれば自分に無関係な部分の修繕であろうと建物の全体の価値としては修繕を行うことを否定することはできません。
災害等が起きた時は一時的に避難等もあり、組合は機能不全になりますが、時間の経過と共に被害の全容が把握できると組合も機能を取り戻し、管理組合として幾つかの選択をすることになります。
マンションの被害状況は大きく3つ
1、軽微な損害
2、建物の価格の1/2以下の滅失(小規模滅失)
3、建物の価格の1/2を超える滅失(大規模滅失)
管理組合は、修繕により以前のような生活をすることができるかを基準に、復旧か、建替え、あるいは売却を選択します。
その際の目安として建物の価格を基準に小規模、大規模滅失と分けています。
小規模滅失だから復旧、大規模滅失だから建替えになるわけではなく、管理組合が総合的に判断します。
今回のテーマである復旧議決を選択するポイントは、決議に次の2つの項目が含まれることです。
1、復旧に組合員からの一時金の徴収が含まれる
2、専有部分の所有を断念する人がいる
これ以外の選択肢として建替えが必要な程に建物のダメージが大きい場合は62条の建替え議決を選択することになります。
61条は、復旧を選択した時に復旧費用の支払による継続的な所有を希望する人と経済的理由を始め、他の要因も含めて総合的な判断で専有部分を売却すいる選択をする人が混在する時の手順を定めています。
ほとんどは普通議決で復旧される
軽微な損害とは、部分的なヒビの発生や局部的な破損のことで修繕工事の延長として総会の普通議決で行うことができる程度の損害のことです。
ただし、滅失が伴わなくても甚大なヒビが複数個所に発生して大掛かりな修繕工事を必要とするような場合は、小規模、あるいは大規模滅失として対処するケースもあります。
組合が復旧工事と判断した上で、復旧議決を行うと決めれば復旧議決になります。
繰り返しになりますが、滅失(損害)の度合いで復旧が決まるわけではなく建物の価格的な尺度で判断する目安と考えるべきでしょう。
事実、多くのマンションでは、復旧議決と言われるケースでも、普通議決で行われるケースがほとんどです。(この場合は復旧議決の2つの条件を含んでいない)
修繕積立金や借入金で修繕工事の延長として復旧が行われます。
そのため、61条3項で復旧議決を規約で各組合の考え方で別途定めることを認めています。
それでは、復旧議決の具体的な内容について説明します。
復旧議決について
災害の被災状況は、住民全員に均等に起こるわけではなく、同じ組合でもほとんど被害がない組合員、部屋のほとんどを失う組合員もいます。
復旧工事は所有者全員に平等に選択の機会を与えていることがポイントになります。
先程に復旧議決には2つのことが含まれる必要があります。
1、一時金の徴収
2、売却希望者の存在
*売却希望者がいると修繕積立金の権利の問題が発生します。このマンションにはもう住めない。出ていくから修繕積立金を返して欲しい。
このような問題が発生すると復旧は進まなく可能性があります。
そこで売却希望者がいる時は、その組合員の専有部分の権利を買取、復旧に賛成する人たちだけにする必要があります。
売却希望者がいなければ、一時金の徴収をせずに借入金等で工事を行うことも可能になり、普通議決で復旧を進めることが出来ます。
復旧議決の議決権
区分所有法61条では次のように定めています。
復旧議決には、特別議決による合意形成が必要としています。
多額な一時金の徴収が必要になるため、高いハードルを定めています。
同時に、売却希望者のふるい分けも行っていると考えると良いかもしれません。
多額な費用が伴い、賛否によりマンションの所有権を失うことになるかもしれない大切な決議です。
組合員の議決への賛否は、復旧議決が行われた総会の議事録に添付する必要があり、この結果によって買取請求や売渡請求を行うことになります。
そのため、61条6項で賛否の記録を保管することも定めています。
今回はマンションの建物の価格の1/2以下の滅失があった場合の復旧議決について説明しました。
覚えることは次の点です。
災害等で被害を受けた組合員の共用部分の修繕について
1、復旧議決、建替え議決、団地一括建替え議決が行われるまでは組合員の自由意思で共用部分の修繕工事を行うことができること。
2、共用部分の修繕に支出したお金は、管理組合に請求することができ、組合員は持ち分の割合に応じた金額を負担する必要があること。
復旧議決について
1、滅失に規模で復旧議決が行われるわけではなく、一時金の徴収が伴い、同時にマンションの所有権を譲渡したいと考える人がいる時に復旧議決は行われること
2、復旧議決は特別議決で決定されること
3、復旧議決を含む総会議事録には投票した人とその賛否を記録する必要があること
次回は復旧議決が可決後の手順について説明します。
以下、今回の問いに関係する条文を記載します。