011-マンション構造と管理を覚える(配管構造)
問題
今回の問題はかなりの難問でした。
マンションの床下をイメージできないと解けません。
文字だけで理解している方は是非、マンションの床下の管理について理解してください。
解答
正解は「正しい」です。
以下解説します。
解説
1、スラブ上配管とスラブ下配管を理解する。
スラブ上配管は今では当たり前の配管構造ですが、過去にはスラブ下配管が主流でした。
具体的な構造の違いを図で説明します。
現在主流になっている構造を二重床スラブ上構造と言います。
構造上のスラブと専有部分の床材の間に空間があり、これが床下になります。
また、上階の構造上のスラブと天井材の間の空間が天井裏になります。
これに対して、一昔前のマンションの構造は、スラブ下配管構造と言います。
構造上のスラブの上に床材が直に張られているため空間はありません。
下階の専有部分の天井裏と上階の床下が共通の空間となります。
このような構造が主流だった理由はわかりませんが、構造上天井を高くすることができたためと私見ですが考えています。
2、配管を配置してみる
各構造に排水管を例に配管をすると次のようになります。
わかるように自宅の床下に配管があり、自宅から配管のメンテナンスが可能であることがわかります。
そのため、管理規約でも枝管(横配管)は専有部分と区分され、管理の責任が発生します。
どうでしょうか。
配管は下階の天井裏に通じるため、自宅からのメンテナンスができません。
もし、この部分が専有部分だとして漏水が発生しても責任を問うことができるのでしょうか。
メンテナンスをするために下階の住民の了承を得た上で天井を剥がし、修繕工事を行う必要があります。
3、漏水問題が表面化した裁判
以前の標準管理規約では、マンションの構造に関わらず、横配管は専有部分として各区分所有者が責任をもってメンテナンスを行うことが義務とされていました。
しかし、マンションの老朽化が進むと配管からの水漏れ事故が起きることになります。
二重床スラブ上配管では、メンテナンスが出来るため区分所有者の責任で管理すべきなのはわかりますが、スラブ下配管で起きた漏水事故を区分所有者に責任を問うことに当然ですが、疑問があり裁判で争われました。
結果、裁判所は、スラブ下配管は専有部分ではなく、管理組合が管理すべき共用部分に該当すると判断しました。
4、標準管理規約の表記
国土交通省もこの判決を受け、マンションの床構造による専有部分と共用部分の考え方を改正します。
まずは、現在の標準管理規約です。
また、この3項についてコメントでは次のように記載されています。
相変わらず分かったような分からない文章ですが8条に定めた別表第2に定めた部分が共有部分と言う訳です。
そのため、2重床スラブ上配管では枝管(横菅)は別表第2では除くと書かれていることが一般的です。
改定内容
国土交通省は次のように改定しています。
現行の文章と比較するとよくわかります。
床スラブ下に配管にされている汚水管は共用部分だと改定しています。
規約の改定は進んでない
現在のマンションは2重床スラブ上配管が主流であり、竣工時の規約には枝管が専有部分と書かれ、各区分所有者の責任で管理すること求められています。
そのため、区分所有者は万が一の漏水事故に備え、個人ごとに損賠保険契約に加入しています。
しかし、昔のマンションでは、スラブ下配管が終了であり、当時の標準管理規約ではその部分についても専有部分とされてきました。
改定により共用部分であることが示されましたが、多くの管理組合では規約の改定は行われないままになっています。
実際、スラブ下配管のマンションで起きる漏水事故のほとんどは、スラブ下配管で起こり、下階の住人が被害者になります。
この時に上階(配管の管理が出来ないが専有部分だと思っている人)が損害を支払うケースも昔はあったようです。(不条理ですけど)
マンション管理士であれば、スラブ下配管のマンションで枝管(横菅)から漏水が発生した場合の損害賠償責任は管理組合にあると説明します。
この問題から学ぶこと
スラブ下配管、スラブ上配管の構造の違いを覚えることも重要ですが、この問題のポイントは、専有部分とは区分所有者が自分でメンテナンスが出来る範囲であると知ることです。
その上で自分でメンテナンスが出来るにも関わらず、標準管理規約で定めている玄関ドア、建具(サッシや網戸)と言った指定された設備を覚えることが重要です。
これにより想定外の問題が出題されても共用部分と専有部分の区分けは容易にできるようになります。
枝管=専有部分と覚えるだけでは不十分であることの意味がわかってもらえたと思います。
こんな内容は受験に必要ないと言う方も多いと思います。
恐らく、予備校ではこんなことは教えないでしょう。
しかし、実務では普通にある物件であり、さらに言えばこのような物件だからこそマンション管理士のような専門家が求めらます。
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