分譲マンション管理組合の監事って何するの?(3)選任、解任
理事と監事は総会で組合員から選任されます。
当事務所に寄せられる相談の中には理事、監事の辞任を考えている方からの深刻な相談があります。
辞任の理由は様々ですが、深刻なケースとしては理事会の人間関係、理事長の高圧的な態度、疎外感を感じてしまい精神的に問題を抱えてしまうことです。
今回は、監事を含め役員と言われる人たちの辞任、解任についてお話しします。
まず、理事と監事を専任する制度についてはっきりと認識しましょう。
標準管理規約
標準管理規約には役員の選任・解任について次のように定められています。
標準管理規約
第3節 役員
(役員)
第35条 管理組合に次の役員を置く。
一 理事長
二 副理事長 ○名
三 会計担当理事 ○名
四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
五 監事 ○名
2 理事及び監事は、総会の決議によって、組合員のうちから選任し、又は解任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事会の決議によって、理事のうちから選任し、又は解任する。
役員の選任・解任は誰が決める
理事と監事は組合員から選任することがわかります。(第三者を加えるケースは規約の変更が必要になります。ここでは割愛します。)
また、監事を複数名にすることも可能であることがわかります。
大きな管理組合になると会計資料も膨大になり、そのために監事を複数にして対応する組合も最近は多くなりました。
複数名の監事であっても理事と異なり合議をする必要はなく、それぞれが単独で監査を行います。
総会等の報告もそれぞれに行うことになります。
ここで覚えて欲しいことは監事、理事の選任権は組合(総会の決議)です。よって解任も総会での決議が必要になります。
理事や監事が不適格だと組合内で指摘する人が解任したいと希望しても理事会はその決定権はなく、総会に上程の上、合議により決定する必要があります。
これに対して理事長は理事会で互選により決定されます。
理事会内で理事長の交代、あるいは解任をしたい場合は、理事会内の過半数の賛成で行うことが出来ます。総会の普通議決の必要はありません。
理事長の理事職までも解任したい場合は、理事会では決定することはできず、総会の承認が必要になります。
理事と監事、理事長の解任については理解できたと思います。
辞任はできるのか
次に任期中に本人が何らかの事情で辞めたいと希望したケースになります。
元々、理事や監事は委任契約と言う契約でその業務を行っています。
理事や監事になったからと言って特別に契約書を作成はしていないと思いますが、口約束であろうと民法上、監事と理事は委任契約に基づいて業務を進めることは区分所有法に規定されています。
区分所有法
(委任の規定の準用)
第二十八条 この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。
管理者に関する規定の一部ですが、管理者=理事長ですから他の役員も同様に委任に関する規定に従うことになります。
監事(理事も同じ)が任期中に辞めたいと主張した時に管理組合はどのように対応すべきかを理解するためには委任契約を理解する必要があります。
委任契約にはいろいろな決まりがありますが、すべてを説明していると皆さんも混乱すると思うので辞任に関する項目だけを抜粋します。
民法651条
第651条
委任は、各当事者(組合と理事・監事)がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
監事は組合に対していつでも「辞めたい」と主張する権利があることがわかります。
ただし、管理組合に不利な時期に辞める場合は損害を賠償する必要があることもわかりますが、但し書きが非常に重要です。
やむを得ない事由があった場合は損害賠償の必要はないと定めています。
例えば、本人、家族の病気により介護の必要があるケースが代表的です。
他には転勤で区分所有者のまま居住場所が変わり、監事の役目ができないケースです。(規約に役員の条件に居住が条件になっていればその時点で役員の権利を失いますが、それ以外では継続することも可能ですが理事会への参加が難しいなど辞める理由としては十分だと考えられます。)
本人の仕事が忙しくなった等の理由も他の組合員がそれを認めれば問題はありません。
「やむを得ない事情」とは組合員から見ても「仕方がない」と思れば良いと思います。
マンション管理組合の役員
特にマンション管理組合は組合員の協力によって運営されている組合組織です。
委任資格も区分所有者であることと特別な資格が必要もなく代役を立てやすい役職です。
「やりたくない!」と言った我儘な理由でもない限り、「やむを得ない事情」が適用されると考えて良いでしょう。
ただし、辞める場合もすぐに辞めることができるかと言うと別な問題です。
少なくとも後任が決まるまではその職を続けることが必要になります。
一方、理事長、理事会が監事の辞任については、監事に解除権があるため受入れる以外ありません。
理事長は空席になる監事の後任をきけるために臨時総会の開催が必要になります。
任期満了による辞任や専有部分の売却による権利の失効とは異なり、辞任は本人都合です。
臨時総会を開催するには招集手続き等の手間がかかります。
最低でも1~2カ月程度は辞任までかかる考えておくべきでしょう。
その間は監事の職は継続されることになります。
では、次回は監事の辞任の手順と理事会の対応方法について説明します。