マンション管理士、管理業務主任者受験者のための会計その3、仕訳(1)
「会計口」「予算主義」を説明しましたが、会計でもっとも重要な帳簿の1つである「仕訳」です。
仕訳をした結果を記載する仕訳帳は出納の記録です。
この記録より収支決算報告書、貸借対照表が作成されます。
仕訳帳と総勘定元帳がありますが、マンション管理士や管理業務主任者の試験では総勘定元帳の知識は求められません。
仕訳帳だけに集中して学習してください。
仕訳帳は単純なルールです。
ルールさえ覚えれば、試験で加点ができます。
是非、マスターしてください。
1、仕訳帳とは
仕訳帳等はすべての取引を日付順に記載した帳簿のことです。
会計上もっとも重要な帳簿のひとつになります。
市販されている仕訳帳は、会計のプロが使用するため、試験に出題される仕訳帳とは異なるので説明は省きます。
最初に覚えることは、仕訳帳の基本構造です。
日付、借方(かりかた)と貸方(かしかた)から構成されます。
初心者は借方(かりかた)と貸方(かしかた)の理解が難しいはずです。
まずは、借方はプラス(資産)と覚え、借方はマイナス(負債)と覚えましょう。(今は理解しなくても大丈夫です。)
次に各借方、貸方にある2つの項目は次のようになります。
仕訳帳の構造が理解出来たら、ルール1を覚えましょう。
借方と貸方の金額は必ず一致します。
取引は必ず、1行の仕訳帳内で完結することがルールになります。
2、仕訳帳の付け方を覚えよう
例えば、お昼に500円のお弁当を買いました。
500円を支払って弁当を購入、資産が増えました。しかし、対価としてお金が減ります。
仕訳帳は、取引ひとつひとつを記録として残します。
また、弁当代を支払う方法によって貸方の科目が代わります。
(1)現金で購入した場合の仕訳帳の記載例
お財布の現金から支払ったの現金が500円マイナスになります。
(2)デビットカードで購入した(支払は預金口座から直ちに行われる)場合の仕訳帳の記載例
弁当の代金は決済時に普通預金から引き落されます。そのため、貸方は普通預金額が500円マイナスになります。
(3)クレジットカードで購入した(支払は翌月)場合の仕訳帳の記載例
弁当代金は翌月のクレジットに支払いで行われます。そのため、弁当を購入した時点では未払金になります。
となると「未払金」はどうなるのか?
クレジットの決済日(引落日)に普通預金から引き落されれば、普通預金は500円マイナスになります。
クレジットカードの場合、2つの取引は別々の日に記録されます。
マンション管理組合に限らず、会社組織は月末に毎月決算をします。
決算時に「未払金」が幾らあるかを知ることは、運営上必要です。
そのため、1つ1つの取引の支払状況がわかる科目で仕訳帳を作成します。
すこしは仕訳帳が理解できましたか。
では、次の取引を仕訳しましょう。
5万円の洋服が気に入り、衝動買いをしましたが、生憎、手持ちが1万円しかありません。結局、1万円を頭金にして、後日残金を支払うことにしました。
仕訳帳は、借方と貸方の額が必ず一致します。
支払方法が別であれば、2行で取引内容がわかるように記載します。
次は、皆さんの家賃です。
家賃は前家賃が一般的です。
これを仕訳帳に記載すると次のようになります。
仕訳帳には取引内容を記載する「摘要」の欄があります。この欄がないと仕訳帳の取引内容がわかりません。(試験では出題されません)
翌月分の家賃を月末に支払います。これは皆さんにとっては次の月に使用する家の使用料です。そのため前払金になります。
使用した当月月末に前払金は家賃料として決算されます。(日割りで帳簿を付けると大変です。)
3、マンション管理で必要な科目
仕訳帳の付け方が理解できたと思います。
ここで気になるのが「未払金」「前払金」です。
これを科目と言いますが、会計には沢山の科目があります。
しかし、マンション管理組合の会計で覚えるべき科目は4つです。
「前払金」「前受金」「未収金」「未払金」
「前払金」・・・将来支払うべきお金を策払した為、「資産」になります。
大規模修繕工事では着手金、工事代金に分けて支払うことが一般的です。
この場合の着手金は「前払金」になります。
「前受金」・・・将来のお金を受取ったことになり「負債」になります。
管理費等を数カ月分、先払いする区分所有者がいます。
この場合、組合にとっては「前受金」になります。
「未収金」・・・将来支払われる為、「資産」になります。
管理費等の滞納は「未収金」になります。
「未払金」・・・将来のお金を支払う必要があり「負債」になります。
支払が翌々月などの場合は「未払金」になります。
4つの科目は試験でも必要になります。
資産、負債の区別と併せて必ず、覚えましょう。
4、科目は帳簿作成する時の取引の状態で決まる
科目を理解するためには、取引が行われた時点のお金の支払状態を考えると判りやすくなります。
そろそろ、マンション管理組合の実務ベースの例で考えましょう。
区分所有者は、共用部分の維持管理のために管理費と修繕積立金を支払います。毎月月末に管理費等の引落が行われた時、仕切帳には次のように記載がされます。
では、引落が出来なかった時はどうなるのでしょうか。
引落が実施された6月30日、401号室の管理費等は普通預金に収納されましたが、404号室の管理費等は「未収金」(借方・資産・プラス)と記帳されます。
このように取引(引落)が発生した時に取引の状態を帳簿に記載する方法を発生主義の原則と言い、マンション管理組合の会計ではこの方法が用いられます。
*メモ
管理業務主任者やマンション管理士試験の過去問でも会計の出題の設問には「発生主義の原則」の記載が必ずあります。
では、407号室が翌月月末に2か月分(前月分と当月分)を支払った時の仕訳帳の記載はどのようになるのでしょうか。
管理費等8月分の正常に徴収された結果が記載されます。
次に、先月未収金として処理した管理費等が記入されます
結果として管理費等7月分で未収金と処理した記録が、入金により相殺されます。
判りやすいようにひとつひとつを分けて書きましたが、一括して記載すると次のような仕訳帳の記載になります。
過去の4つ科目は、最終的に現金や預金に置き換わります。(取消線に注目!)
7月31日に管理組合の徴収口座に5万円の入金があり、その内訳は7月未収金25,000円と8月管理費等25,000円と判ります。
5、覚えるポイント
仕訳は記帳のルールです。
そのルールに従い、記帳しますが、大切になるのは記帳する時間(決算等)を考えて科目を選択することです。
試験問題では、必ず「発生主義」と記帳をする時間軸の記載があります。
この時間軸を正しく理解して、4つの科目(取引の状態)のいずれに該当するかを見極めて記帳することです。
では、次回は過去問題で説明します。