管理業務主任者・マンション管理士資格取得者のための/設備③/タイル外壁等の浮きの補修工程(アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法補修)
吹付け外壁の修繕についてはこれまでに説明しました。
今回のテーマはタイル外壁です。
タイルの耐久性は100年とも言われ、タイルそのものが劣化することはあまり考える必要はありません。
タイルで修繕が必要になるケースは
1、躯体の歪等によりタイルにヒビや亀裂が発生する。
2、部分的にタイルの固定面に浮きが発生、落下等の危険がある。
3、施工不良や躯体の影響により、広範囲に浮きが発生、壁の部分的な崩落の危険性がある。
浮きの状況(躯体との距離で判断するケースが多いようです)により修繕方法も変わります。
今回、説明するステンレスピンは、浮き幅が小さな時に利用される修繕方法です。
大規模修繕工事の外壁塗装は、足場を組み、外壁の全面打診検査を行います。
打診検査は「打音診断棒」(メーカーによって名称は違う様です)が使用されます。
打診と言うと叩くイメージですが、実際は、壁にポール部分を滑らせ音の変化を聞き分けます。(想像よりはっきりわかります)
その結果、浮きが疑われる部分を見つけます。
*写真は見た目で浮きはわかりませんが、診断より浮きが確認された部分です。(青いテープ内)
タイルの浮き率、はく離率の基準
タイル浮きは外壁の下地材からどれぐらいの割合でタイルが浮いているかの「浮き率」でチェックします。
タイルの浮き率は「築年数✖️0・6%以内」が基準です。
築10年の建物の場合、浮き率が6%を超えると基準外と判定されます。
基準を超えた場合は、部分修繕や全面張替が必要になります。
浮きが軽度であれば、張替はせずにステンレスピンで固定します。
この方法を「アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法」と言います。
打診で浮き箇所をマーキング後、ドリルで穴を空けます。
これを「穿孔」(せんこう)と言います。
穿孔に関するルールは以下の通りです。
コンクリート用ドリルを用い、使用するアンカーピンの直径より約2mm大きい直径とし、壁面に対し直角に穿孔する。
穿孔は、マーキングに従って行い、構造体コンクリート中に30mm 程度の深さに達するまで行う。
管理業務主任者を目指す人はここまでの知識は必要ないでしょう。マンション管理士を目指す人は念のため、2mm、30mmはチェックしておきましょう。
ドリルで目地に穴を開け、穴の内部を綺麗に清掃します。
スポイトなどで清掃することが一般的です。
注目すべき点はタイルに直接に穴を開けないことです。
タイルに穴を開けて固定する方法もありますが、今回は目地にステンレスピンを埋込、固定します。
「アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法」では、打込むピンの密度が決められています。
一般部分のアンカーピン本数は16本/㎡とし、指定部分(庇の鼻、見上げ面、まぐさ隅 角部分等)は25本/㎡とする。
*この㎡本数は、過去のマンション管理士試験に出題されています。
穿孔した穴の清掃後、ステンレスピンを固定するためのエポキシ樹脂を充填します。
出来るだけ中に空洞が出来ないようにゆっくりと充填します。
浮きタイルの修繕方法のひとつである「アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法」の手順をまとめると
1、目地に穴を空け(穿孔)
2、清掃
3エポキシ樹脂充填
4、ステンレスピン挿入です。
(この順番は覚えましょう)
エポキシ樹脂を充填した後、タイルを固定するステンレスピンを挿入。
これでタイルの浮きや剥離を抑えることが出来ます。
タイルの全面張替よりは、工数も少なく、タイルの部分修繕として利用される方法です。
竣工時のタイルの仕上方や環境(東西南北、日光の当たり方など)によりタイル浮き等の発生は決まります。
うまい職人さんだと良いのですが。
タイル外壁の目地に穴を空け、シリコン樹脂を注入、ステンレスピンを埋込で固定、仕上げは目地材で被覆します。
タイル面全体に浮きがあり、浮きの状態が軽度の場合に用いられる修繕方法です。
「アンカーピンニング部分エポキシ樹脂注入工法」の説明は以上になります。
比較される修繕方法として「注入口付アンカーピン」があります。
アンカーピンと注入口付アンカーピンの違いは、ピンの形状の違いです。
注入口付きアンカーピンは、ピン自体がボルト形状になっており、躯体に専用ハンマーで打ち付けることにより、ピンが固定されます。
そのピンの口からエポキシ樹脂を注入することにより、浮き部と躯体がピンと樹脂の両方で固定される補修方法です。
「アンカーピン」はドリルで穴を開け、ピンを差し込み樹脂で固定するのに対して「注入口付アンカーピン」はピンを打込み、ピン先から樹脂をを注入する違いです。