専有部分の横配管工事を修繕積立金から支出する時の注意点
マンションの給排水管はともに30年前後で管の交換が必要になる言われています。
どちらも普段は躯体のダクトスペース内に設置され、それ自体を見ることはあまりありませんが、長く使用することで管内部は腐食等により穴があき、漏水事故の原因になります。
特に汚水、生活用水が流れる排水管は、漏水による周辺へのダメージ大きくマンション全体の資産価値を落とすこともあります。
そこで、今回は分譲マンションのスラブ上排水管更新工事について考えましょう。
マンション館内の排水管配管を理解する
区分所有マンションの排水管は、竪(たて)管と横菅に管理が分かれています。竪管は共用部分で各階に継手があり、継手以降を横菅と言います。
縦配管は共用部分で区分所有者全員の持ち物でマンション管理組合に管理責任があります。
これに対して縦配管の継手から先を専有部分排水管となり、各区分所有者の持ち物となり、管理責任があります。
*万が一、漏水箇所が専有部分排水管にある時、被害者への保証責任が発生することがあります。
このように各排水口から流れ出す生活排水等は、専有部分と共用部分を通り敷地外の下水道に繋がっています。
多くの場合、区分所有者は、水回りのリフォームを行う際に管理する必要がある専有部分の排水管を含めて更新を行います。
そのため、専有部分の排水管の更新状況は各部屋で異なることが一般的です。
では、標準管理規約では排水管の更新等の修繕工事についてどのように定められているかを見てみましょう。
標準管理規約の定め
(敷地及び共用部分等の管理)
第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区 分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)の うち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を 共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行 うことができる。(*1)
*これは元々スラブ下配管のマンションを対象に定められた規約。
(21条コメント)
第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。
配管の清掃等に要する費用については、第27条第三号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用 のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。(*2)
なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。(*3)
その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定する(*4)とともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。(*5)
注意するポイント
注意する点についてまとめます。
*1 標準管理規約21条では共用部分の管理は組合が行うと定めながらも2項で専有部分と構造上一体となっている場合は、専有部分についても修繕工事を行うことが出来ると定めています。
ただし、コメントでこれが実施するための要件等を定めています。
➀ 配管等の更新工事を同時に行う時もその費用は、専有部分の配管については区分所有者の費用負担が原則である。(*2)
➁ 縦排水管と横排水管を同時に行う際には費用軽減のメリットがあることが必要である。(*3)
➂ ➁を修繕積立金から拠出して実施するためには、事前に長期修繕計画の排(給)水管項目に専有部分の更新工事を追加、費用を計上しておくことと規約に定めをすることが必要である。(*4)
その上で、すでに専有部分の排水管更新工事をリフォームで行っている区分所有者に不利益が生じないように配慮することも求めています。
恐らく、これらの要件等を満たさずに実施した場合は、不利益(専有部分の排水管等の工事を済ませた区分所有者)を受けた区分所有者から賠償請求等を受ける可能性があります。
特に融資を受けて行う工事では、専有部分の工事負担で発生する利息等の支払を負担させることになり、大きな問題になる可能性があります。
まとめ
給排水管の更新工事の計画中で、専有部分の更新工事を同時に行うことを検討している管理組合の理事等の役員の皆さんは是非、次のことに注意してください。
➀ 標準管理規約に定めた方法に準拠して工事計画を実施すること
➁ 給排水管のリフォーム済みの部屋を把握しておくこと
➂ ➁に該当した区分所有者に不利益にならない工事費負担を計画すること