管理計画認定制度の申請方法を理解する
管理計画認定制度は国が法律(マンション適正化法)を整備し自治体が制度を条例に定めています。
制度創設から申請方法が複雑で専門家でもなかなか理解できないと言われています。
申請方法について理解しましょう。
申請方法は大きく2つある
国土交通省の事務ガイドラインには認定制度の申請方法は2つあります。
ひとつは、国土交通省から管理計画認定制度の認定を委託されたマンション管理センターが運用する管理計画認定手続支援サービス(事前確認)を利用する方法です。
もうひとつは、自治体が申請を直接に受付ける方法、あるいは委託した団体に申請を行う方法です。
自治体ごとに異なりますが、現時点で自治体に直接申請を行う、委託団体に申請を行う方法は限定的に採用され、主流はマンション管理センターが運用する管理計画認定手続支援サービス(事前確認)を利用する方法です。
自治体によっては直接申請を行わないとしている自治体もあります。
詳細については、管理計画認定制度に詳しいマンション管理士にお尋ねください。
下記、相談窓口でも対応しています。
手続支援サービスを利用する
マンション管理センターが運営する管理計画認定手続支援サービス(事前確認)を利用する方法は4つあります。
それぞれパターン1~パターン4と呼ばれますが、各パターンにはそれぞれ違いあります。
組合員の皆さんに理解してい頂きたいことは、誰が手続きを行うかによって申請パターンが異なることです。
管理組合が主体となり申請する方法はパターン1とパターン4です。
パターン1
パターン1は、管理組合が認定審査が出来るマンション管理士に事前確認を委託する方法です。
顧問契約にあるマンション管理士が認定審査が出来れば、お願いすることが出来ます。
また、認定取得を目的に短期に顧問契約を締結することもできます。
事前確認を終了した結果を支援システムに登録します。
この際、注意することは3つあります。
注意1:登録はマンション管理士は行うことが出来ません。組合員、あるいは行政書士に依頼する必要があります。
注意2:組合員であるマンション管理士が理事、監事等の役員に就任しているマンション管理士は該当マンションの認定申請はできません。(利益相反の関係になります。)
注意3:顧問料以外にシステム利用料等が必要になります。(1万円)
顧問料はかかりますが、確実に認定を取得することが出来る方法です。
パターン4
パターン4は、管理組合が申請資料を用意し、支援システムに申請する方法です。
顧問契約等の存在がいない場合が該当します。
この場合、理事会が中心になって認定要件をひとつひとつ確認、必要な資料を揃え、マンション管理センターの支援システムに申請する方法です。
また、顧問契約にあるマンション管理士が認定審査の資格を取得していない場合が該当します。
その場合、認定の要件を顧問契約内で指導を受けながら要件を満たすように準備します。(マンション管理士には認定制度を理解している必要になります。)
例えば、規約に必要な条文の記載がない場合、臨時総会を開催して規約の改定を行うなどが必要になります。
長期修繕積立金の基準値をクリアーしていなければ、基準をクリアーする積立金の値上を含む計画に変更後、総会の承認を受ける必要があります。
先程と同様に認定取得を目的に短期に顧問契約を締結することもできますが、理事長の皆さんは、顧問契約を締結するマンション管理士の選択には十分注意すべきでしょう。
また、管理を委託している組合では、管理会社に協力を要請することも良い方法です。
組合が自力で認定を取得、あるいはマンション管理士、管理会社の協力を得て取得する方法です。
事前確認の審査が出来ないマンション管理士と顧問契約中の方にもおすすめです。
次の方法は、マンション管理に関わる団体が行うサービスを利用して、同時に管理計画の認定を取得する方法です。
現在、国土交通省が同時申請を認めているサービスは2つあります。
ひとつが、マンション管理業協会が行うマンション管理適正評価制度です。もうひとつが、日本マンション管理士連合会が行うマンション適正化診断サービスです。
この方法は各サービスの審査と同時に認定制度の審査も行われます。
同時に2つの評価が行われることからワンストップ申請と言われます。
パターン2
マンション管理業協会が行うマンション管理適正評価制度は2022年4月から始まった制度です。
マンション管理業協会が用意したシステムに申請資料を登録します。
事前確認の審査はマンション管理業協会に所属する事前確認審査の資格をもつマンション管理士が行い、同時に結果を管理計画認定手続支援サービスに登録します。
マンション適正評価制度の詳細はこちらからご確認ください。
管理の委託を受けている会社が自身の管理状態を評価することになります。*この点について管理会社によっては、利益相反関係になるとして実施しない管理会社もあると聞いています。
認定実績もありますが、思ったより申請件数が伸びていないと言われています。
その理由として、管理適正評価制度は日頃の委託先のマンション管理の実情を明確にします。
中途半端な委託管理を行っている管理会社では制度を利用することで適正な管理が出来ていなかったことが組合側に露呈してしまうことがあり、積極的にサービスの利用が出来ていないと言われています。
また、規模の小さな管理会社では、適正評価制度、認定制度に精通したフロントがいないため行えないと言われています。
マンション管理適正評価制度と管理計画認定制度(事前確認)の審査ができる資格者は次のようになります。
マンション管理適正評価制度は、評価制度の講習を受けた管理業務主任者(フロント)、マンション管理士に限定されます。
管理計画認定制度(事前確認)は、事前確認講習済みのマンション管理士に限定されます。
管理会社の中にも各制度の審査ができる人とできない人がいます。
是非、委託契約中のフロントに「あなたの資格は?」「あなたの会社にどの資格者がいるの?」を尋ねてください。
また、組合の役員の皆さんは、委託先の管理会社に「適正評価制度、認定制度」のワンストップ申請が可能かどうかを確認してください。
日頃から適正な管理を指導している管理会社で、かつ、対応できる資格者がいればすぐに対応をしてくれるはずです。
難色を示す管理会社であれば、マンション管理士等に相談されることをお勧めします。
全部、あるいは一部委託している組合が利用しやすい登録方法です。
委託する管理会社が日頃から適正な管理をしているかも同時にわかります。
パターン3
日本マンション管理士連合会(以下、日管連と言う)が行うマンション適正化診断サービスを利用して行う方法です。
この方法の特徴は、診断サービスの目的が管理組合が加入する火災保険の保険料の優遇を受けることにあります。
詳細は日管連のホームページでマンション適正化診断サービスを確認してください。
この方法の利点は、適正診断ができるマンション管理士(診断マンション管理士と言います)が理事長等の役員、あるいは管理会社のフロントにヒアリングしながら診断を行う方法と言うことです。
訪問前に事前に用意する資料が提示されます。
その上で当日、「長期修繕計画を見てください」、「直近の総会議事録を見せてください。」と認定要件を次々に確認する作業を行います。
調査に出向いたマンション管理士の指示に従うと自動的にマンション適正化診断サービスと事前確認の申請が出来ることです。
ただし、マンション適正化診断サービスは、審査項目に✖があっても診断は進みます。
診断サービスは、診断項目の全体点数で評価をします。(1つの項目が✖でも全体の得点で評価が決まります。)
これに対して事前確認は認定項目の1つでも✖があると申請をしても修正依頼の対象になります。
そのため、診断中に「これは認定制度の基準を満たしていません」と指摘を受けることになります。
その場合は、マンション適正化診断サービスだけを受け、認定制度の取得は修正後に改めてパターン1、パターン4で申請することになります。
ただし、メリットはあります。
顧問契約等をしなくてもマンション管理士の知識を利用できる点です。
認定の要件を満たしているかどうかを確認することができると言うことです。もともと、マンション適正化診断サービス自体は無料、さらに診断レポートまで受取ることが出来、皆さんの組合の問題点を指摘してくれます。
その過程で認定制度の要件に満たない部分を指摘しているかもしれません。(絶対ではない)
自主管理、一部委託管理、全部委託管理のいずれの組合でも利用は出来ます。
管理に自信がある自主管理マンションはもちろんですが、管理会社に委託している組合も診断と事前確認をワンストップで受けることが出来ます。
マンション管理の専門家の評価を無料で受けられ、管理計画認定制度の認定への不備項目を知ることができる。
注意事項:適正化診断サービスは無料ですが、事前確認を同時に行う場合は費用の発生があります。
訪問するマンション管理士に過度な期待はしないことです。
審査を行うマンション管理士は別のマンション管理士です。
また、不備な項目の指摘はしてくれますが、どの程度のアドバイス等を提供するかは個々のマンション管理士の判断になります。
「これは認定基準を満たしていません」程度のアドバイスはしてくれるかもしれません。
具体的なアドバイスを求めるには顧問契約等の締結が必要になると考えておきましょう。
パターン3の事前確認申請までの流れです。
パターン2と違い、適正化診断サービスで集めた情報をマンション管理センター支援システムに登録します。
その後、無作為に指名された審査担当マンション管理士が審査を行い合否を判断します。
以上がマンション管理センター支援システムを用いて管理計画認定制度(事前確認)の認定を取得する方法になります。
おわりに
これ以外にも自治体に直接申請する方法(パターン5)もありますが、これについては自治体にお問合せください。
多くの自治体はパターン5を行っていないようです。
管理計画認定制度(事前確認)の認定取得は、義務ではありませんが、今後、認定マンション管理組合の数は年々増加すると思われます。
これまでマンションの売買時の査定は立地、間取り、周辺環境などにより行われていましたが、認定の取得も査定に大きく影響することになることが見込まれています。
さらに、認定マンションに対するインセンティブ(ご褒美)も充実される期待があります。
まだ、始まって2年と日が浅い制度ですが、認定の取得を検討してみては如何でしょうか。
今回はパターン1~パターン4の申請方法を紹介しました。
皆さんに合った申請方法を見つけてください。