修繕工事は管理会社に任せるとどの程度の値段が違うのか。
委託契約で管理会社に組合運営しているケースでは、委託契約書に法定点検、給排水管洗浄、増圧ポンプ点検、定期清掃、植栽など多くの契約が含まれています。
このような契約は、管理会社を通して見積りが理事会に提出され、ほぼ毎年一定額の支出として決算計画書が定期総会に提出されます。
これ以外にも施設の不具合、故障等が発生した場合、フロントが修繕の提案を行い、その都度、管理会社を通して見積りが理事会に提出され理事会承認で工事が行われます。
今回は、あるマンションで消防設備点検で指摘された項目の修繕工事を例に修繕工事費にどの程度の差があるかを検証してみましょう。
小規模なマンション(30戸程度)のリプレースの顧問契約を引受け、無事、新しい管理会社が決まりました。
法定点検等の書庫の引継ぎの際に発覚したことが消防設備の不備の指摘事項です。
1、非常灯バッテリー不良
2、消火器の有効期限切れ
3、誘導灯、及び誘導標式
4、誘導灯非常電源
以上のような指摘が5年以上、放置されていたことが確認され、理事会でも驚かれていました。
当然に、すぐにでも交換が必要な修繕工事です。
新管理会社に次年度の予算に計上をするように要請、同時に修繕を依頼する会社を選定することになりました。
当初は、新管理会社から見積り額で予算を計上しましたが、他のマンションで同様な工事を行った際よりかなり高い見積額だったため、理事会で相談の上、相見積もりを数社に依頼することになりました。
そこで、当事務所で過去に関係があった修繕会社、それ以外に地元の防火設備等を扱う会社に見積りを依頼することになり、その結果が次の比較表です。
元々、新らしく契約した管理会社(契約管理会社)は委託費も高く、その他の点検費、修繕工事費も高いことで知られていましたが、それでも委任したいと組合が判断した会社です。
そこで契約時の定額外工事項目を多くする委託契約を理事会に提案。
結果として、定期点検等の業務を定額契約外とし、管理組合が直接、業者を選定することができる余地を残した委託契約としました。
*一般的に定額外にすることで修繕工事毎に、業者選定を理事会が独自に行うことが出来き、工事費等の合い見積りがし易くなるメリットがあります。
また、管理会社の子会社や提携先の会社の中間マージンを排除することもできます。
管理士等の顧問がいないと理事長だけでは業者を探すだけでも大変です。
まして管理会社のプレッシャーもあり、なかなか独自に動くことが出来ません。
実際、今回の件でも管理会社を通さない仕事は、管理会社は保証をしない。
何かあっても一切、関係ありませんと言っていました。
「委任契約書に設備に異常等があった時は、書面で知らせる」ことが示されています。「管理会社が修繕した設備については・・」と限定はしていないと申入れをしたところ、反論はありませんでした。
もちろん、工事を依頼する会社には1年間の保証を見積りに記載されています。
結果、消防設備修繕工事は「下請けB社」に依頼することが決まりました。
管理会社が提出した見積額の半額で工事をすることができました。
これ以降、ほとんどの修繕工事は、管理会社との合い見積もりで業者選定をしています。
この結果、年間で数百万円の工事費の圧縮がされています。
管理会社のフロントにはすっかり嫌われました。
それでも、管理士の契約先は管理組合です。
顧問料以上の働きをするのは当然です。
皆さんに伝えたかったことは、管理会社を通した修繕工事は高くなりがちです。
もちろん、すべての工事が高いわけではありませんが、理事会が積極的に合い見積もりを取り、比較することで管理費等の皆さんの資産を効率よく使うことは可能です。
是非、これから行う修繕工事を理事会メンバーが直に見積りを取ってください。その上で納得がいく、組合員に決定過程をきちんと説明できる業者を選定してください。
*注意点
すべてのマンション管理士が業者選定等の知識を持っているわけではありません。管理会社から提出される見積りで良しと判断する管理士もいます。
皆さんがマンション管理士を選択する時も管理組合に何を提供してくれるマンション管理士なのかをしっかり見極めた上で契約をしてください。