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マンション管理士、管理業務主任者受験者のための会計その4、決算書(2)

前回は、管理組合の決算報告の収支決算報告書の読み方、過去問の解き方を説明しました。

今回のテーマは、貸借対照表です。
皆さんはあまり馴染みがありませんよね。
収支決算報告書が1年間の収支をまとめた結果に対して、貸借対照表はある日の管理組合の総資産を表にまとめた会計資料になります。
そのため、重要になるのがいつ時点の会計でまとめたかと言うことです。

収支決算報告書と貸借対照表の違い

1、貸借対照表の構造を覚える

貸借対照表は大きく3つの部に分かれます。
「資産の部」「負債の部」「余剰金の部」です。
表の右側に「資産の部」、左側に「負債の部」「余剰金の部」が記載されます。(これは会計の決まり事で理由はわかりません。)

貸借対照表の構造

次に重要なことは右の合計額と左の合計額が必ず一致することです。
と言うことは次の式が成立します。
「資産の部A」=「負債の部B」+「余剰金の部C」
この構造をしっかりと頭に入れましょう。

貸借対照表の会計構造

もし、左右の金額が異なれば会計上に不備があることになります。

2、資産の部を覚える

マンション管理組合の場合の資産科目は「現金」「普通預金」「定期預金」です。
それぞれの科目の詳細と表の構造です。

(1)現金

最近は現金の取扱いをする組合は減りました。しかし、急な出費に備えて、管理会社、理事長、会計担当が管理するケースがないわけではありません。決算日当日の現金所有額を記載します。

(2)預金

普通預金と定期預金を区別して記載します。
管理会社が提供する徴収~管理方法(イ)(ロ)(ハ)により普通預金の使用方法も異なります。(この辺が会計の試験に出題されたことは無いので気にする必要はありません。)
*例えば、徴収口座の普通預金には、管理費と修繕積立金が同時に徴収されます。修繕積立金は翌月の月末に保管口座(修繕積立金)に繰入れられます。そのため、タイミングによっては管理費会計に修繕積立金会計のお金が一時的にストックされるケースがあります。
また、定期預金の保証額は1口座1000万円、そのため、修繕積立金会計では定期預金を複数に分けて保管しているケースがあります。

これらのことは管理業務主任者、マンション管理士の実務経験するとわかりますが、資格試験には出題されないようです。

預金で覚えることは、貸借対照表の作成日に併せて、所有するすべての預金口座の残高証明書を添付する必要があります。
管理会社に委託していても、自主管理でも会計資料は、書類に記載されている金額が正しいことを示す必要があります。
各口座の残高証明書を総会資料に添付する必要があります。
そのため、普通預金口座、定期預金口座の欄には銀行名、支店名、口座番号を記載、エビデンスとして金融機関が発行した残高証明書を添付します。
この書類を監事がチェックして監査報告書に反映させます。

*実際、組合費の横領では、残高証明書の添付なし、偽造などが確認されています。

(3)債権

管理費会計に債権があることは珍しいです。
一般的には修繕積立金会計に「すまい・る債」が記載されます。
該当項目がない場合は、記載する必要はありません。

(4)前払金

取引状況を示す科目で、支払約束期限前に支払いを済ませた状況にある取引です。
会計的な扱いで代表的な支払いとしては「前家賃」があります。
工事期間が長い場合に「頭金」「手付金」、工期途中に「中間金」などが該当する項目です。
当然、将来払うべきお金を先に支払うので「資産」に計上されます。

(5)未収金

未収金の代表としては管理費、修繕積立金、専用使用料が期日までに支払われない状態にあるお金です。
代表例は「滞納金」です。
当然、将来支払われる為「資産」に計上されます。

3、負債の部を覚える

(1)未払金

未払金は、将来支払うことが約束された状態にある取引です。
決算期にすでに工事が終了した修繕費が計上されることが一般的です。
請求書が届き、支払期日が来期以降である時に計上されます。
未払金には総額、その下に明細(請求書単位)で計上します。
要は、支払うことが決まっているため負債になります。

(2)前受金

管理費等の先払いのことです。
組合員によっては駐車場使用料を年度初めに全額入金する方もいます。
これは、毎月の会計で処理されるため、組合にとっては負債として処理します。
これを理解できない方が意外に多いので仕訳で確認します。
仕訳では次のようになります。

前受金が貸方(負債)となることが判ります。

(3)借入金

今回の貸借対照表には、記載しませんでしたが修繕積立金が不足した時に金融機関から借りると負債として計上されます。
利息は経費になるため負債にはなりません。

貸借対照表の構造

4、余剰金の部を覚える

余剰金は「当期余剰金」と「前期余剰金」から構成されます。
以下、それぞれの項目を確認します。

(1)当期余剰金

管理費会計、修繕積立金会計の収支決算報告書の繰越金が当期余剰金に該当します。
注意する点は、繰越と言うと黒字をイメージしますが、赤字も繰越します。
会計では負債も財産になります。

(2)前期繰越余剰金

当期に繰越された余剰金です。
当期が黒字の場合、前期繰越余剰金が加算されます。
当期が赤字の場合、前期繰越余剰金が補填されます。
(1)と(2)の合計が来期への繰越余剰金になります。

4、まとめ

貸借対照表で覚えることは次の通りです。
1、資産が右、負債、余剰金は右に表で構成される。
2、資産と(負債+余剰金)の合計額は必ず一致する。
3、資産の科目で取引状態を示す科目は「前払金」「未収金」。
4、負債の科目で取引状態を示す科目は「未払金」「前受金」。

管理業務主任者、マンション管理士試験に必要な貸借対照表の基本知識になります。

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