009-管理費等滞納と民法の関係
問題
解答
「できない」が正解です。
解説
マンションの共用部分は共有所有であることは皆さんも十分にご承知のことだと思います。
共用所有については、民法の物権➡所有権➡共有の条文249条~264条に定められています。
この条文を読むと区分所有法の基本が共有で定められた内容に非常に似ていることがわかります。
その理由は、マンションの共用部分が共有所有であるためです。
ただし、マンション特有の権利(持分)について区分所有法は異なる考え方になっています。
今回の問題ですが、民法では条文253条に次の定めがあります。
この条文では、12か月以上の管理費等の滞納がある時、マンション管理組合は、マンションの価値(評価額)を支払って専有部分を取得することができると読むことができます。
これは、売渡請求になります。
引渡し請求ではなく、売渡請求ができるが正解になります。
この権利を「持分買取請求権」と言います。
マンションの場合は共用部分だけを分離処分はできません。
そのため、結果として専有部分の買取も出来ると言うことです。
しかし、管理組合が専有部分を買取るメリットがないため、利用されることは少なく、この253条を利用して管理組合が滞納者のマンションを買取った例は、災害用の倉庫を目的として買取、マンション管理組合が賃貸物件として貸出す目的で買い取った例があります。
滞納を1年放置する組合はほとんどない
1年も管理費を滞納する状況になる以前に、内容証明、先取特権、小規模訴訟、支払督促、民事訴訟によって未払金の回収を行う方法が一般的です。
ただし、督促に時間がかかり1年を超えるケースでは買取請求もできる状況にはなりますが、メリットがないため利用されることはほとんどありません。
それ以外の方法として共同利益に反する行為として特別議決で合意が得られれば、区分所有法59条「競売請求の要件」により区分所有権をはく奪、競売により滞納金を補填する方法があります。
これ以外にも区分所有法57条~60条は区分所有者、占有者の権利を奪うことができる状況と方法を定めています。
試験にもよく出題されます。
ただし、今回は民法の共有所有の売渡請求を覚えることが目的です。
その他としては次のことも覚えましょう。
マンションの共有所有について
共有所有は原始規約、登記簿、規約で定められている部分を除き、各共有者の持分は、相等しいものと推定する。
そのため、駐車場や駐輪場と言った施設、外灯や昇降機などの設備は共有所有となり専有部分の床面積に関わらず持分は同じになります。
共有者の死亡時の扱い
マンションの場合は相続人がいない場合は国庫に帰属しますが、一般的な共有物の権利は他の共有者に均等に配分されます。
2名共有の場合 ➡ もう一人の共有者に権利が譲渡されます。
3名共有の場合 ➡ 他の二人の共有者に均等に権利が譲渡されます。
共有物のルール
共有物の使用や管理、修繕のルールは共有者の多数決で決定されます。
共有物の処分
共有物の処分は共有者全員の合意が必要になります。
マンションの駐車場の撤去などはこのケースになります。
また、敷地も全員の合意が必要になります。
共有者のルールは第三者には影響しない
AとBが持分1/2ずつ共有所有する不動産(賃貸物件)をAがBの承諾を受けずにCと賃借契約をしました。
この時、BはCに対して共有所有を理由に賃借契約の解除と退去を請求することができるでしょうか。
答えは「できません」です。
AB間の約束はAB間で解決すべき問題です。
この争いで無関係のCの賃貸借契約の解除が請求できるとCは家を失います。それではCが保護されません。
民法は弱者を守る法律です。
この場合、AB間のルールはAがCから受取る(受益、家賃)をBが持分割合でAに請求することで解決します。
この問題はよく出題されます。
共有所有については以上の4つのポイントを押さえれば良いでしょう。
尚、区分所有法、第七節 義務違反者に対する措置について、区分所有法57条~60条は今後説明します。
ポイント
1、共有所有の管理費は持分により負担する必要がある
2、共有所有の管理費の滞納は12か月以上で売渡請求ができる
3、共有所有の持分が不明な時(定めがない時)は持分は均等と見なされる
4、共有所有のルール(用途、管理、修繕等など)は多数決で決める
5、共有所有の処分は全員の賛成が必要である
6、共有所有のルールは第三者に不利益を与えることができない