管理計画認定制度に関する無料訪問相談が20組合を超えました
2023年11月からFJマンション管理士事務所が行っている「管理計画認定制度・長寿命化促進税制の無料訪問相談」が今年3月末時点で20組合を超えました。
今後も本サービスは継続する予定ですが、区切りとしてまとめました。
1、訪問地域と相談目的
地域の内訳は、東京都が17件、神奈川県が4件、千葉県が2件、埼玉県が0件でした。
相談目的としては14組合が大規模修繕工事を実施中、あるいは2024年以降に実施予定でした。
やはり、長寿命化促進税制の適用を目的に認定の取得の検討していました。
それ以外では認定マンションマンションすまい・る債購入の購入を目的とする組合が4組合、管理計画認定制度の取得だけを目的とした組合が3組合、理事会や総会で制度の説明依頼が2組合でした。
2、組合の形態
マンションと言っても管理形態は様々です。
単棟、複合用途型、団地型に大きく分類されますが、複合用途型も全体管理組合だけで運営する組合、全体管理組合、店舗部会、住宅部会で運営する組合、さらに団地では、68条規約あり、なしと複雑です。
今回相談に訪問した組合の内訳は次の通りですが、ご自身の組合の運営形態を正しく把握していない理事会もあり、管理計画認定制度における管理組合の形態を理解して頂くことに苦労した組合もありました。
管理形態により申請時の承認に違いがあること、管理計画認定制度が住宅に対する制度であり、修繕積立金の平均額を求める際の専有部分の面積、修繕積立金の集計に違いがあるため、正しく理解する必要があります。
異なる組合の管理形態にきちんと対応できる管理会社も少なく、申請後に補正を受けることも少なくありません。
3、認定要件の未達成項目
適正な管理をしていても管理計画認定制度の要件は16項目あり、最新の改定標準管理規約への対応も求められます。
また、居住者名簿の作成も求められます。
管理計画認定制度・長寿命化促進税制に関する無料訪問相談は、認定要件の16項目と促進税制の適用要件を確認することを目的にしています。
これまで訪問した管理組合の要件への未達成項目についてまとめました。
組合によっては複数の未達成項目があるため、複数回答になります。
認定取得総会承認について
相談訪問時に管理計画認定制度の総会承認まで進んでいた組合はありませんでした。
認定制度そのものを理解する途中ですから当然です。
規約について
標準管理規約23条4項に定める「災害時等の専有部分への立入り」は、4つの管理組合で不記載でした。
これは、竣工以来規約の改定を行っていない組合で、このような組合では次に説明する64条3項も未達成でした。
標準管理規約64条3項に定める「管理組合の財務・管理に関する情報の書面の交付」ですが、最新の規約改正以前に準拠している場合は、閲覧請求への対応の定めはされていますが、書面交付の定めがなく、規約の改定の必要になります。
長期修繕計画について
認定要件に満たない長期修繕計画が確認されたケースは11件ありました。
1回目の大規模修繕工事以来、見直しを行わずすでに7年以上が経過している。計画期間が30年未満だった組合もありました。
また、理事会だけで長期修繕計画を承認して、総会承認をしていない組合も確認されました。
国土交通省が公開している長期修繕計画作成ガイドラインが認定要件になりますが、ポイントは19項目の工事項目の記載があることです。
機械式駐車場(立体駐車場)はマンションに設備がない場合も長期修繕計画表の工事項目には記載する必要があり、備考等で「該当設備無し」を記載することが求められます。
長期修繕計画については、これ以外にも30年以上の計画でその間に未実施の大規模修繕工事を2回以上含んでいることなどがあり、認定要件としては1つの要件ですが確認事項としては10項目を確認する必要があります。
①修繕工事の内容(19 工事項目※) ※長期修繕様式様式第4-1号の推定修繕工事項目の 19 工事項目(以下「19 工事項 目」という)のこと
②修繕工事の概算費用
③修繕工事のおおよその実施時期
④修繕積立金の月当たり㎡単価
⑤長期修繕計画書の計画期間が 30 年以上の設定期間であること
⑥申請日以降の残存期間において大規模修繕工事が2回以上含むこと
⑦計画期間当初における修繕積立金の残高
⑧計画期間全体で集める修繕積立金の総額
⑨計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額
⑩(借入れがある場合)借入れの状況
これ以外に細かいことになりますが、「ガス設備」「長期修繕計画表の見直し」費用は、記載漏れが多く、特に「ガス設備」は計画期内の修繕工事予定がないことを理由に時期や金額を記載しない計画が多く、審査時に指摘項目となり補正することになるケースが多くあります。
管理会社のフロントでも細かい点まで把握している方は多くありません。
訪問相談でも管理会社のフロントが同席することがあり、自社で提供した長期修繕計画表の不具合に驚いていました。
居住者名簿について
区分所有者名簿を作成は売買毎、あるいは賃借契約ごとに更新している組合がほとんどですが、認定制度では区分所有者名簿以外に「住民名簿」の作成と常時更新を求めています。
住民名簿は災害時の「安否確認」に使用されることが多く、住民名簿まで作成していた組合は少数派でした。
特に最近は個人情報保護の観点から住民名簿作成に非協力的な組合員も一部にいます。規約等に住民名簿の定めがないことも作成を難しくしている原因のひとつと考えています。
ただし、この点は令和6年4月に改正が検討されている標準管理規約では64条2項2に新たに「住民名簿の作成・保管」の項目が追加される見通しです。
これで住民名簿を作成するエビデンスが出来、整備が進むと見られています。
認定要件では各名簿の作成と更新を組合として行っていることを保証する「表明保証書」の提出が認定要件になります。
名簿そのものの提出は求まられていません。
ただし、名簿を作成していないのに「表明保証書」を提出した場合、違反
行為になるためやってはいけません。
名簿の完成度を求められることはないため、組合で協力的な方だけの名簿でも問題ないと思われます。
昨今の災害の頻度と規模を考えると「安否確認」のための名簿作成は、認定制度を別にしても備えておくべきだと思います。
区分会計について
区分会計の要件が未達成だった組合は5件ありました。
今回確認されたケースは次の3つです。
1、本来管理会計から支出すべき科目を修繕積立金会計から支出している
2、火災保険の保険金の一括支払いのために修繕積立金会計から一時借入を行っている
3、貸借対照表が合算表で作成され、管理会計と修繕積立金会計の区分が科目ごとに行われていない
1と2は管理計画認定制度に申請しない組合であれば、収支決算を総会で承認していれ問題視されることはありません。
ただし、認定を受けるためには会計処理を見直す必要があります。
解決する方法も幾つあり、現状では認定要件に満たなくてもそれほど心配する必要はありません。(臨時総会が必要にはなりますが)
ちょっとした会計処理のテクニックで解決できる問題です。
認定とは関係ありませんが組合としては、それぞれの会計残高と口座残高証明の金額が一致していれば資金の流用はないと判断できると思われます。
問題は3です。
収支決算報告書、貸借対照表は管理会社によって書式が異なることが一般的です。
管理会社の中には貸借対照表が合算表で作成され、管理会計と修繕積立金会計の区分が科目ごとに行われていないケースがあり、これは組合の問題ではなく、管理会社のシステム上の問題です。
*貸借対照表が合算表で作成していること自体は認定要件では問題にしていません。
管理会社にシステムの変更を求めてもすぐには対応できません。
このような場合は、貸借対照表を別途、Excel等で作成して認定要件をクリアーする必要があります。
理事・監事選任について
理事・監事選任が認定要件を満たしていないケースは4組合ありました。
規約の定めでは監事と役員は総会で選任、理事会は後日、役職(理事長、副理事長、会計担当など)を決めると定めている組合が多いと思います。
しかし、実際は総会で役員を選任、その後の理事会で監事を含む役職を決めているケースでした。
認定要件は「管理者」「監事」が定められていることですが、その方法について認定要件とはなっていませんが、規約の定めと異なる方法で選任された理事長、監事については認定要件では「補正の対象」となります。
*これは国土交通省に確認済みです。
監事は総会で選任すると定めていれば、監事が誰になったかは総会議事録で確認できます。
しかし、役員を総会で選任後、後日の理事会で監事を決めた場合、理事会議事録で選任された方が確認できることになりますが、監事は総会承認を受けていないことになります。
当然、監事は総会で選任される必要があり、その場合は監事の承認を目的にした臨時総会の必要性があると判断されます。
慣例で規約で定めた方法と異なる方法で監事を決めている場合は、申請時に苦労することになります。
まとめ
20組合以上の認定要件を確認しましたが、すぐに認定の申請を行い合格判定を受けることができる組合は僅かでした。
現状を知って理事長初め理事の皆さんが落胆するかと思っていましたが、意外にも「未達成の項目がはっきりして進め方がわかって良かった」と感想を頂き、訪問相談が役立っていると実感しました。
余談ですが、管理会社は理事会から「適正な管理をしていると思ったのに」「高い委託料を払っているのに」と不満を言われていました。
訪問した組合では管理計画認定制度の取得の準備期間を1年程度として、準備を進めることになります。
不明な点があればアドバイスは行う予定です。
今後も管理計画認定制度に関する無料訪問相談は継続します。