015‐枝管一体工事が可能な要件とは何か?
問題
解答
1
解説
共用部分の管理
共用部分は管理組合が管理を行うことが区分所有法、標準管理規約に定めてあります。
標準管理規約12条は共用部分の管理について記載されています。
今回の問題は2項に記載された文章について出題しました。
この文章の意味を理解していれば非常に簡単な問題です。
スラブ上配管とは
問題文のスラブ上配管を確認しましょう。
スラブ上配管は近年では普通に使用されている配管の配置です。
多くのマンションではスラブの上に各専有部分の給排水管を配置、その上に床材を敷く2重床構造が一般的です。
この時、枝管は専有部分になります。
具体的には給水設備は水道メーターを境に共用部分と専有部分が区別されます。
排水管は竪管と横菅をつなぐ継手を境に共用部分と専有部分が区別されます。
共用部分と一構造上一体とは
2項に示された「共用部分と一構造上一体」とはどのような構造なのでしょうか。
排水管を例に考えてみましょう。
図で示したオレンジ色が竪排水管、水色の枝管(横排水管)専有部分ですが両者は継手を挟みつながっています。
「共用部分と一構造上一体」とは部分示していると理解できるのではないでしょうか。
一体として行う必要があるとは
次に考えるべきことは「一体として行う必要がある」があるの定義です。
専有部分の管理は区分所有者の義務であり、リフォームではトイレ、浴室、キッチンなどの水回りのリフォームを行う際には、床下の配管も同時に交換することが一般的です。
この工事は床材を外して行う必要があり、生活にも大きく影響します。
そのため、住民は一時仮住まいを用意するなどして行われます。
一方、築35年を過ぎるとメンテナンスの状況に関わらず排水管の劣化は進み、交換時期を迎えますが、マンションとしてはかなり大掛かりな工事になります。
また、購入後水回りのリフォームを行っていない家庭では枝管(横配管)の劣化も縦配管と同様に進んでいると考えるべきでしょう。
そこで、管理組合として一気にマンション内の排水管交換工事を行えば、漏水などの事故を防ぐことができます。
では、一体として行う必要があるとはについて国土交通省の資料等を調べると「劣化の進行が同程度であり、同時期に交換工事を行うことが工期、費用面で合理的と認められる時」と解釈できることがわかります。
専有部分の修繕工事を行うためには、一体として行う要件がこれに当ります。
実際、各家庭の会計状況により専有部分の枝管工事に支出できない家庭もあり、万が一に汚水の漏水が発生すれば周辺に悪臭が広がり、一定期間居住できないリスクもあります。
このような事態を避けるためには、住民たちで積立ててきた修繕積立金を利用して工事を行うことには必要性があると認められています。
以上のことから専有部分である枝管の工事を行う際には一定の要件が必要であるとなります。
最近の規約
標準管理規約28条には修繕積立金の用途を次の項目に限定しています。
かなりアバウトな規定で特に5項は、どのようなケースでも総会議決があれば利用可能とも言えます。
そこで、修繕積立金の用途でトラブルにならないように、「専有部分である枝管(横菅)の交換工事は縦配管の交換工事と同時に行う修繕」を追加する規約を定めている組合もあります。
排水管の劣化は材料の改良により耐久性は増していますが、いずれは交換の時期が来ます。
その時の各家庭の金銭状況を竣工時に予測することはできません。
これに対する布石と言えるでしょう。
修繕積立金の取崩し
修繕積立金の取崩しには標準管理規約では総会議決が必要です。
理事会にその権限はありません。
*ただし、理事会で修繕積立金の取崩しが出来ると規約に定めることは可能です。
この点は注意してください。
規約に線湯部である枝管の工事ができるとだけ記載しても総会の議決が必要になるため設問3は✖になります。
以上が解説になります。
以下追加情報です。
スラブ下配管の場合
排水管配置がスラブ下配管であった場合の考え方は下記を参照してください。
この場合は枝管は共用部分と見なされる為、管理組合の管理の対象となり、一体とした工事である必要性はなく、規約に特に定めがなくとも修繕積立金を使用する議案を総会で普通議決により承認を得ればできることになります。
すでに枝管工事を済ませた人への配慮
すでに住居内のリフォームなどで配管も取り換え済みの住戸に対する対応です。
専有部分の枝管交換が要らないのに修繕積立金を使用される組合員にとっては不利益になります。
このような場合を見越して国土交通省は専有部の配管取り換え費用を返金する、修繕積立金の一定期間の減額、など組合ごとに詳細を決め、住民間の不公平が発生しないように考慮するべきとしています。
以上です。
かなり長い説明になりましたが、共用部分と一体化した専有部分はかなり理解できたのではないでしょうか。
合わせて、要件が整い、総会承認があれば専有部分の工事を修繕積立金から支出することができること、組合員に不公平が発生しない配慮をすることも可能であることは覚えておきましょう。