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管理計画認定制度の取得をしたいが、管理会社が協力してくれない


相談

築22年、さいたま市にあるマンション管理組合の理事長です。
2年後に大規模修繕工事を予定しています。
長寿命化促進税制が令和7年3月31日までの税制であることは知っていますが、理事会で話合った結果、税制が延長するかもしれないのでそうなった時に備えた管理計画認定制度の取得をしようと言うことになりました。
そこで管理会社に相談したところ「うちの会社は認定制度に協力できません。組合員の方で準備をしてください。」と言われ困惑しています。
このような場合、マンション管理士に頼むべきなのでしょうか。
アドバイスをお願いします。

回答

長寿命化促進税制の延長を期待して、管理計画認定制度の取得を考えている組合からの相談です。
長寿命化促進税制の延長については、国土交通省からも「現時点ではわかならい」と明確な回答を得ています。
一方、2年だけでの短期の減税制度では不公平感もあり、延長されるだろうと言う方もいますが、大元の国土交通省が「わからない」と言っている以上その通りなのでしょう。

1、管理計画認定制度とマンション管理適正化評価制度

管理計画認定制度は令和4年4月に国が定め、各自治体が条例に定めることで始まった国の制度です。
同時期に、マンション管理業協会(管理会社の業界団体)がマンション管理適正化評価制度を始めました。
かなり似た制度ですが、認定制度は国の制度、マンション管理適正化評価制度はあくまでも民間の制度であることははっきりと理解しておくべきでしょう。

2、事前確認と認定制度

次に認定制度を取得するステップには、国が定めた16項目の認定要件があり、その上で各自治体が独自の認定項目を定めることが出来るとして大きく2つのステップがあることを理解してください。
国が定めた16項目の認定要件を審査を自治体に申請する前に受けることを事前確認と言います。
事前確認の審査ができるマンション管理士は、国家資格に合格した上で国に登録をします。
その後、マンション管理センターが定める講習会に参加、判定テストに合格した者だけが審査を行うことが出来ます。
事前に16項目の認定要件を専門知識を持つマンション管理士が行うことで自治体の審査負担を軽減することを目的に導入された制度です。
独自の基準を定めない自治体によっては、事前確認の合格=認定制度の取得となります。

3、マンション管理適正化評価制度のワンストップ申請

マンション管理適正化評価制度の評価項目は国が定めた16項目をすべて網羅しているため、マンション管理適正化評価制度と管理計画認定制度を同時に取得することも可能で、この方法をワンストップ申請と言います。
(パターン2)

マンション管理適正化評価制度は、管理受託している管理会社のフロントが管理の状況を確認した上で評価制度にエントリーします。
これを同じ会社の評価制度の評価資格者が審査を行います。
この審査方法については賛否両論あります。
「管理を受託している会社が申請した評価を同じ会社の資格者が審査すること自体が利益相反になるのではないか」と言う疑念です。
ただし、マンション管理適正化評価制度は民間制度ですから、システムとしては問題がないと言うのが大方の見解です。

しかし、ワンストップ申請でも「管理を受託している会社が申請した評価を同じ会社の資格者が審査すること自体が利益相反になるのではないか」と言う同じ問題が発生します。
現在の国の制度では、受託している組合の担当者(フロント)が認定制度の審査者になることは禁止していますが、同じ会社の資格者(フロント以外)であれば問題ないとしています。
ところが幾つかの管理会社は、この方法自体が利益相反の可能性が高いと判断し制度に参加しないことを決めた会社があります。
このような管理会社では、マンション管理適正化評価制度を実施していないため、この方法により認定制度の取得には協力できないと言うことになります。

4、管理会社の立場

管理計画認定制度の16項目の認定要件は次の要件です。
1、総会を定期に開催していること
2、管理者(理事長)を専任していること
3、監事を専任していること
4、規約が定められていること
5、規約に災害等の発生時に管理者等が専有部分に立入ることを定めていること
6、規約に区分所有者、及び利害関係者に会計等の閲覧権を定めていること
7、区分会計を行っていること
8、修繕積立金会計から他会計の流用がないこと
9、長期修繕計画が総会承認を受けていること
10、30年以上の計画で2回以上の大規模修繕工事が計画されていること
11、7年以内に見直しがされていること
12、一時金の徴収がないこと
13、計画最終年度に借入金がないこと
14、修繕積立金の平均額が著しく低くないこと
15、修繕積立金の滞納率が1割以下であること
16、区分所有者、住民名簿が1年に一度以上内容の確認をしていること

どの項目も管理会社と管理委託をしていれば、要件を満たすことは難しいわけではありません。
管理会社と契約しながら容易に要件をクリアーできない仕事しかしていないこと方が問題ではないかと思います。
もちろん、管理会社からの提案を採用、拒否する判断は理事会、総会です。いくら管理会社が適正な管理を求めてもそれを実施しない組合があればそれは組合が原因と言えます。

先で説明した「3マンション適正評価制度」の登録数についてはマンション管理業協会が資料を公表しています。
注目すべきは、★の分布です。

マンション管理業協会資料より2023/3/1

★3つがもっとも多く、★4と続きます。
管理会社に高い委託費を支払ってこの程度の評価とは意外です。
評価制度を使用した管理組合の中で管理計画認定制度までの取得をした組合すは15組合、割合にすると1.26%に過ぎません。

何となく、管理会社が管理計画認定制度に積極的に慣れない理由が推測できると思います。
適正化評価制度は毎年更新です。
現時点の評価が★3つ★4つの組合が、認定制度の要件を満たすように改善されると増える可能性はありますが、昨年の制度開始後1年間では管理計画認定制度の取得ができるような管理組合は少ない状況であったと思われます。

5、事業計画に組込む

管理組合として管理計画認定制度の取得を目指すと決めることが最初の一歩になります。
事業計画の立案は、理事会の案件で一般的には期変わりに新たに就任する理事と管理会社によって決められます。
事業計画に「管理計画認定制度の取得」を組み込めば、管理会社もまったく協力しませんとは言えません。
さらに、適正化評価制度を利益相反を理由に取扱わない管理会社も認定制度まで扱わないとは言っていません。
まずは、組合の次期事業計画に組込むことから始めましょう。
*認定制度の取得には、総会議決が必要ですが、事業計画に認定制度の取得を含めることで、その事業計画が総会承認されていれば、別途、認定制度の取得に関する総会承認は不要と国土交通省の判断を得ています。

6、認定要件をチェックする

管理組合の現状で認定要件に何が足りないのか?
これを知ることが絶対に必要になります。
管理会社のフロントにお願いしても、ほとんどのフロントはその判定ができないと思います。しかし管理会社にもマンション管理士がいます。
特に認定の審査資格を持つマンション管理士はいるはずです。(地方の支店レベルではわかりませんが)
彼らなら要件を満たさない項目を押してくれるはずです。
*無料かどうかはわかりません。

もし、だめでも諦めることはありません。
全国にはマンション管理士会連合会、所謂日管連の支部があり、認定制度の普及や審査も行っています。
彼らに相談することです。
各支部は定期的に相談会を開催しています。
是非、利用してください。
*無料かどうかはわかりません。
支部によっては有料でサービスを行っているケースがあります。

最終手段としては自治体の住宅課に相談することです。
自治体の担当者のスキルにもよりますが、少なくともアドバイスやマンション管理士は紹介してくれると思います。
*ほとんどの自治体は、利益を生む情報を個人のマンション管理士に提供することはしません。マンション管理士が所属する機関への紹介になると思われます。

7、アドバイス

今回の電話相談では、認定制度の取得に協力しない管理会社であれば、事業計画に認定取得を定めた上で、委託契約の「2 基幹事務以外の事務管理業務に定める」、「② 理事会の開催、運営支援」、「甲の求めに応じた理事会議事に係る助言、資料の作成」に該当するとして協力を要請することと説明しました。
理事会議題として「管理計画認定制度の取得について」とすれば、いかに管理会社が協力しませんと言っても契約で定めていることです。

ただし、管理会社のフロントのワークスピードは亀なみです。
「では、次回理事会までに準備・・」と言った回答にはNGを出し、速やかなに履行を迫る必要があります。

必要であれば管理会社内にいるマンション管理士を理事会に参加させることも良い方法でしょう。

マンション管理士に依頼する時は、必ず事前に「有料、無料」を聞き、有料であれば見積りの提出を依頼する。
また、数名のマンション管理士に声を掛け、事前確認の審査資格があること、過去に事前確認(予備認定ではないことに注意)を実施した経験があることを確認することが重要です。

管理会社やマンション管理士に補助を依頼する場合でも、申請の主体は理事長であることを忘れずに作業を進めることが大事と伝えました。

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