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これを悍ましいと呼ばずして何を悍ましいと呼ぶのか

 皆様はどんなときに恐怖を感じるだろうか?なにもしていないのにテレビが急に点いたときだろうか?それとも知らない人がこちらに向かって早歩きしてきたときだろうか?はたまた海外旅行中に家のエアコンを切ってくるのを忘れたことを思い出したときだろうか?
 恐怖を感じるきっかけはいろいろあるだろうが、自分より上位の次元を存在を感じたときというのもなかなか恐ろしいものである。
 今回はある日の麻雀で私の身に降りかかった、とんでもない体験を語っていこうと思う。

雀魂牌譜: https://game.mahjongsoul.com/?paipu=jnjmmr-rqzt38yz-5yef-69ab-hlfg-mhriguqknvno_a462818038_2
より

 この日、私は調子が良く、三麻の雀聖が近づいてきたこともあって、負けるまで鬼打ちしようかと考えていたところだった。そしてこの対局はその3局目にあたる。1局目は危なげなく快勝。2局目はラス目でサドンデス突入しなんとか逆転したという感じで3局目を迎えた。

東1局~東2局:2度のダブルリーチと理不尽な待ち

東1局

 開局早々の配牌で聴牌、58sの両面待ちと文句がない良形。迷わずリーチと行くが、これがなかなか上がれない。他家、二人ともが仕掛けし始め、ドラも1枚も見えてこないという、背筋が寒くなる状況で、13巡目にようやくツモあがり。満貫とダブルリーチの割に打点はつかないが、まずまずといったところだ。

東1局1本場

 配牌から2sと9sが暗刻とにわかに大物手の可能性すらあり、浮足立つも、まだ不要牌の整理もままならない3巡目、西家からのドラ切りリーチ。安全牌などというものがあるはずもなく、東を切っていく。次切るのはは1sかなと考えながら、相手の動向を伺っていたら、あっという間の決着。なんと嵌3sを一発でツモ。なかなか波に乗らせてもらえないな、とこのときはまだのんきに考えていた。

東2局

 次局、まずまずの配牌だと思っていたら、親のダブルリーチ。当然のように安牌などなく。しかもこちらはドラ3の手。ある程度までは押すつもりで手を進めていく。

同局4巡目

 ところがまだ押してるつもりもないここでの打9mが捕まる。しかも一盃口までついてくるというおまけつき。
 ここまでの3局、ダブルリーチ→3巡目リーチ→ダブルリーチと異常な早さの聴牌が続く。ダブルリーチの出現率(あがりまで辿り着いたもの)は三麻の玉の間では0.19%である(https://ikeda.sapk.ch/statistics/fan-statsより)。何となくおかしいことが起きている。このあたりから少々気味の悪い感覚を覚え始めていた。

東2局1本場~南2局:確信に至らない程度の不気味な引き運と、伸びない点数

 ここから先は、開幕のダブルリーチ×2に比べたら明確に珍しいというわけではないが、何となく、こんなことしょっちゅう起こるわけではないよなということが発生する。

 なぜかやたら暗刻や槓子ができるのだ。もちろん三麻では牌の種類が少ない分通常の麻雀に比べて暗刻や槓子ができやすい。しかしこうも縦(麻雀では暗刻など同じ牌が重なるのを縦に引くや重なるという。順子(234,456などのこと)が横)に引くことは珍しい。といっても1局で槓子3つ暗刻3つは全然あり得る範囲だ。ぎりぎりあり得る範囲のできごとだからこそ薄気味悪い気分がするのだ。しかもそこそこ手形はいいのに全然あがりまで辿り着けない。
 この対局はツモあがりが非常に多く、ここまで私がダブルリーチに打った局以外は全てツモあがりだった。私も東1局の満貫ツモの他に東3局(ここから上へ数えて2番目の写真)で跳満ツモあがりをしたが、それでも他家の勢いが凄まじく、オーラスまでにかなり差をつけられてしまった。

南3局:判然と目の前に現れた恐怖


オーラス、配牌

 オーラスの状況は画像の通りである。私は断トツの最下位。2着までは23,400点差、トップまでは33,900点差であった。
 トップは絶望的だとして、なんとしても2着は持って帰りたい。しかし2着の条件も厳しく、三倍満ツモ、もしくは跳満直撃だ。苦渋の選択として、現在トップから跳満をあがったら、トップが4万点以下になるのでサドンデスに持ち込める。がどうあがいてもロンで跳満以上は必須という状況だった。
 それでこのばっらばら手牌である。面子がないどころか、両面も1組、役もほとんど見えないという有様。この時点で私はリーチ一気通貫ドラドラ(西を雀頭にする北抜きする等)+1飜くらいしか跳満になるルートがないなあ思っていた。まあ正直いってほぼ諦めである。一気通貫には2p,4p,7pが必要でそれに加えて1面子(恐らく8s)とドラ2枚が必要。都合の良く欲しい牌を6枚も持ってこなければいけない、
 ここから私は、赤5s、南、4p、2p、7p、3s、と引いてきた。

 もう一度言おう。赤5s、南、4p2p7p3s、と引いた。

 言われただけでは分かりづらいと思うので画像も提示しよう。あのバラバラな配牌からわずか6巡後の手牌である。

 一気通貫確定の聴牌。わずか繰り返すが僅か6巡である。6巡で

 これが

 こうである。6巡のうち5回も有効牌、さらにそのうち3回は一気通貫を成立させるのに絶対必須な2,4,7pをピンポイントで引いてくる強運。

 どんな都合のいい麻雀漫画だってこんなツモはしてこない。
 しかしこんなに都合が良いことが起きても問題はまだある。ロンで跳満以上は必須という条件だ。
 現状リーチしても、7sか9sの単騎まちで、リーチ一気通貫ドラ1。後2飜足りない。一発裏か、裏裏が必須である。いくら何でも厳しい。理想で言えば西単騎待ちにしたかった。せめてもう少しいい待ちにしたい。ここで私は打9sとし、あがるつもりのない黙聴を取った。

7巡目

 あーあ、9s待ちでリーチしてたら一発ツモだったのにね。
 
誰かの声が聞こえた気がした。いや、そんなあがりはいらない。なぜなら、ツモは三倍満条件。リーチ一発ツモ一気通貫ドラで6飜。三倍満まではあと5飜も足りない。裏ドラがどれだけ都合が良くても不可能な数だ。
 ここで私は7sを打つ。もともとあがる気のない単騎待ちだ、振聴だろうが関係ない。少しでも安全な方を持ちたかった。

8巡目

 あーあ、今度は7s待ちでリーチしてたら一発ツモだったのにね。
 
状況は変わっていない。こんなあがり逃しは痛くもなんともない。せめて誰かがカンでもしてくれたら……
 打7sとし、引き続き比較的安全な方を残す。

9巡目

 あーあ、振聴でもリーチしておけば一発ツモだったのにね。

 訳が分からない。頭がおかしくなりそうだ。素直に跳満あがって+12ptを得て、浅めの致命傷で済ますべきだったか。3→2着には+230ptの価値があるがどう考えても高望み。それにこれであがってもおよそ8ptのプラスになる。頼みの綱のドラ西が2枚切られて、跳満直撃がほぼ絶望的ななかここで終わらせるべきか。
 否。まだ何とかできるはずだ。

10巡目

 西家が4sを手出しで、親も意味ありげな白手出し。もはや猶予はほとんどない。せめて一刻もはやくリーチできる牌が欲しい。というところで持ってきたのは9m。いの一番に切った牌だ。これでリーチしてもロンあがりをすることはできない。
 安全度を考慮して9mを残す。

11巡目

 あーあ、9mで振聴でも今度こそリーチしておけば一発ツモだったのにね。

 ここで、疑惑が確信に変わった。誰かが、私のことを弄んでいると。
 もちろん牌操作されているなどというちんけなセリフを言うつもりはない。ただどう考えてもおかしい。ばらばらの配牌が与えられたと思ったら、あっという間に聴牌。しかしその点牌は捲る条件にはわずかに足らず、リーチを躊躇したところで、これでもかというくらいあがりを逃させられる。その実、4回。
 調子に乗って鬼打ちしようとした天罰か、はたまた単なる気まぐれか。少なくともこれを単なる偶然と片付けるにはあまりにも恐ろしいことが起きていた。

12巡目

 白、それはお釈迦様から垂らされた一本の糸のように見えた。
 ちょうど一枚切れていて待ちごろ。なんなら2着目の親が切っていたし、切られた瞬間ラグ発生はなかった。親に捲れる聴牌が入っていたら相当高い確率で切ってくれる。欲を言えば、平和が付いて同じく待ちごろの3sが良かったが、白もその次くらいに理想的な牌。
 状況は変わっていない。結局ロンできても一発裏、もしくは裏裏条件。それでも、これ以上はないと判断しリーチをかけた。

 そしてその牌はポロリと、まるで最初から運命で決まっていたかのように、一番欲しい相手から一番欲しいタイミングで零れ落ちてきた。

 リーチ一発一気通貫ドラ

 そして当然と言わんばかりの裏ドラ。

 跳満直撃条件。めったに成就することのないそれが成就した瞬間だった。600点差で相手を捲り命からがらのラス回避。

 しかし私にはラス回避の感慨もなく、ただ何かに弄ばれた、その不快感だけが胸中を占めていた。

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