調理場は戦場ではない
名著「調理場という戦場」をご存知でしょうか?
僕も20代の頃何度も読んだ本です。
ほんとうは人間の生き方から出るダシが「いちばんおいしいもの」なのです。
という名言が若い頃の自分にグサリときました。
料理人って美味いものが作れるだけではダメなんだなと強く思いました。
どのジャンルのお仕事でも通じるものがあると思いますので皆さんも一度手に取って読んでいただけたらと思います。
さて、そんな頃から10年以上が経った今思うことは
「調理場は戦場ではない」ということです(笑)
すいません、別に批判しているわけではありません。
コミュニケーションの話です。
実は先日、カウンターのお客さんからこう言われました。
「ここのお店の調理場は静かだねー。もっと〇〇お願いします!〇〇できました!みたいな会話ないの?」
たしかにそういった会話はうちにはありません(笑)
うちは親父と母親とお手伝いのパートさんとやっているのですが、皆それぞれ淡々と自分の持ち場をこなしています。
そしてその時にふと思ったのが
「言葉にしなければ伝わらないようではお話にならない」
ということです。
実際にお客さんにも「別に言葉を交わさなくても料理してる音で機嫌がいいか悪いかまでわかるんですよ。背中を見て何を考えてるかわからないようでは間に合いませんよー。」と言いました。
そう、これが今の僕の結論です。
「ハートは熱く、頭はクールに」
ありきたりの言葉ですが、もしこれから料理人を目指す若い人たちに言葉を送るとしたらこの言葉になりますね。
調理場はそれぞれが瞬間瞬間の中で生きてるので目を見て話をする時間なんてないんです。
最初はどのジャンルの料理人も洗い物やサービスから入ると思います。
自分が洗い物をして背中を向けている時でも常に先輩や親方の動きを音で感じる。
そして振り向いた時にはお互いのタイミングがぴったり合っている。これが当たり前にできなければいけません。
そのためには普段から五感をフル活用して毛穴からも相手の心を感じ取ろうとします。
お互い別の人間なんですから顔と腹の中では考えてることが違うなんてことは多々あります。
だからこそ本心が表情や言葉以上に背中や音に出てくるんです。
これが他人とやっているとなると尚更じゃないでしょうか?
調理場でのコミュニケーション
狭い調理場で1日の大半を過ごすこの仕事にはそういった言葉以上のコミュニケーションが重要だと思います。
それが背中と会話するということ。
とは言うものの、ウチもこれは営業が始まってからの話で、朝の仕込みの時には今日の献立についての確認や手順などきちんと親父と話し合ってますよ(笑)
そこまでの以心伝心はさすがに親子でもできません。
男同士でそんなことしてたら気持ち悪いしね(笑)