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【コンセプトアルバム奮闘記】#11 曲解説 桜華と翡翠蝶 Part1 路傍の花
シーンの説明
ここは黄鶯楼。
若手スタッフ「じゃあ、鮎美ちゃん。これが住所だから。うまくスカウトしてきてね。」
鮎美「うん、わかった」
歌詞の説明
独り咲いた
けなげなる桜、求め
強く、高く
※後述
過ぎし日の
影越えて
春を待つ友の声
強く美しく咲く桜よ
高級マンションを追い出され、街郊外のボロアパートに逃げるように引っ越してきた。散らかりきった部屋、ベッドに死んだように横たわる桜井華子。髪はボサボサ、虚ろな目、荒れ切った肌。少しやつれ、瘦せ細っている。突然、トイレに走る華子。嘔吐を繰り返す。泣く。
「私、何やってんだろ・・・」
鮎美「華ちゃん。あなたの強さは、誰よりも私がよく知っている。」
失意の過去
身を切り裂いて
風に揺れて芽吹く朝
道を示そうか
瞳重ね
明け方、鮎美は仕事終わりに紙に書いてある住所に立ち寄る。
ピンポーン。家の呼び鈴を鳴らす。
「華ちゃん、私だよ。あゆだよ。」
「・・・!?」
鮎美は、桜井華子の学生時代の友人。弓道部で一緒に苦楽を共にした仲である。現在は、黄鶯楼で舞妓として働いている。
「今回は大変だったね。」
錆びれた路(みち)
待ち望む心
ひっそりと咲き
春を告げてく
手を伸ばせば、またほら
歩み始めて
華子はこれまでのいきさつを話した。
狸の甘い誘いに乗ってから、芸能生活が順風満帆だったこと。
最初から向こうは遊びだったこと。
既婚だと知っていたが最後まで信じていたこと。
政治家の働きかけでマスコミ、企業が真実を隠蔽したこと。
鮎美は目を閉じて頷いている。
鮎美「誰にでも、過ちはあるもの。でも、それを乗り越えた人だけが本当の強さを得られる。私は華ちゃんが強い人だと知っている。
そして、私のいる世界も似たようなものだけど・・・」
Oh、路傍の花
名所には咲いてない
誰も知らぬ花
Oh、春の光
あなたと共に
未来を照らす愛のカタチ
「私と一緒に働かない?」
・・・華子が目を丸くする。
「華ちゃんのような華のある人はどこにいても輝くもの。黄鶯楼なら、その才能をもう一度花開かせることが出来る。誰でもこの世界が務まるというものではないよ。あなたの美しさや魅力は特別なもの。世間がどう見ようとも、ここでは誰も過去を問わない。今のあなたを見つめてくれる。それにね・・・」
時は流れ
激流のように
過去を流し、立ち向かう
真実(まこと)、知らしめる
願い込めて
「・・・黄鶯楼には、政治家や産業界の重鎮もお忍びで出入りしている。もし、狸が憎いなら、復讐の道が開けるかもしれない。」
独り咲いた
けなげなる心
住み人のみが
知る美しさ
負けず劣らず輝く
新たなる路(みち)
華子は目を閉じて頷いている。
鮎美「気が向いたら黄鶯楼を訪ねてきて。待ってるからね、じゃあ。」
独り咲いた
けなげなる「桜」
華子は心を決めたようだ。
他所に劣らない
けなげに咲かせし
乙女、誇りを持って
そして、数週間後・・・
黄鶯楼に超新星の花魁”桜華”が誕生した。
「これ以上、私のような犠牲者を増やさないためにも。」