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【コンセプトアルバム奮闘記】#12 曲解説 桜華と翡翠蝶 Part2 Foxy Jade

シーンの説明

黄鶯楼において絶対的な地位に君臨する花魁 ”翡翠蝶”。彼女の接客、思想などを歌う。「翡翠」という名前は、美しいながらも硬さと冷たさを感じさせ、彼女の外面と内面の両方を象徴している。

歌詞の説明

数多(あまた)の殿方を
ただ待つだけの私
擬似恋愛のストーリー
踏み台にしてさ

翡翠蝶は花魁である。毎晩、多くの客に対して疑似恋愛の雰囲気を作り、非日常的な幻想的な癒しの世界を提供する。彼女にとって接客は演技であり、戦略的な行動の連続であり、彼らの欲望を巧みに操るものである。

この美貌と無敵のバディに
欲望ぶちまけたら

彼女は、「美貌」と「バディ(スタイル)」という与えられた武器を最大限に活かして生きる戦略家。同伴やアフター、裏のオプションも巧みに使う翡翠蝶は、華やかな外見の裏に、複雑な心の闇と野心を抱えている。

sweep!
喰らい尽くせ 地位も金も
全てぺんぺん草も生えないくらい。
steal!
成り上がるの 華の都
見せて Don't let go 勝利の景色を
scream!

翡翠蝶の根底にある思想は、「地位も金も喰らい尽くせ」という野心に満ちた生き方である。彼女は、遊郭という舞台を「踏み台」として捉えており、そこで手に入れたものを使い、さらに高い場所へと成り上がることを目指している。彼女自身の成功欲やプライド、過去に負った傷と深く結びついている。

最近、言われるの。
綺麗になったねと私
愛の言葉の響き
頂点目指してさ

自分の美貌と知性を活かしながら、自分も磨きながら頂点を目指す。男性たちの欲望を操る一方で、自らの目標に向かって一直線に進んでいる。彼女の「愛の言葉」は、彼女の物語の一部であり、相手を酔わせるための演出に過ぎない。

ウエハースのような男なら
すぐに見抜けるから

「ウエハースのような男(中身のないスカスカな男)ならすぐに見抜ける」というフレーズからも分かる通り、翡翠蝶は男性たちを瞬時に見極める洞察力を持ち、価値がない相手には一切の時間も労力も費やさない。

sweep!
喰らい尽くせ 地位も金も
全てぺんぺん草も生えないくらい。
steal!
勝手にすれば 興味ないの
私シナリオライター 行き場のない恋
scream!

「私、シナリオライター」という表現から、台本通りの接客、というだけでなく、彼女は自分の人生を自ら作り上げていく強い意志を持っていることが伺える。

母は私に愛を注いだ。
苦労かけて償うワンダラー(Wanderer)。
なんの不自由なく生きて欲しいから
翡翠の鉛筆で黒い過去を塗りつぶせ。

翡翠蝶の生い立ちは決して裕福なものではなかったようだ。彼女の母親が自分のために多くの犠牲を払ってきたことが伺える。そのため、彼女は母親にも自分も「なんの不自由もない人生」を送らせると誓い、貧困や苦労から逃れるために必死に努力したのだろう。その背景には「黒い過去」があるようだが。このような背景が、彼女の冷徹で合理的な性格を形作ったと言える。

色んな世界教えてよ
羽が疼く夜に

彼女の内面には強さと愛を求める心が隠れている。「色んな世界教えてよ」という歌詞からも、彼女がまだ知らない可能性や自由を求めており、そのような世界を見せてくれる強い男、成功者を求めているようだ。

sweep!
喰らい尽くせ 地位も金も
全てぺんぺん草も生えないくらい。
steal!
成り上がるの 華の都
見せて Don't let go 勝利の景色を
scream!

”翡翠蝶”という源氏名は自らの人生を演出する主人公たるものであり、物語を動かす存在である。華やかさと哀愁、冷たさと温かさを内包した、非常に人間味のあるものに映る。その冷徹さの裏には、「頂点を目指している自分を認めてほしい」という強い自己承認欲求が見え隠れすると同時に、彼女は愛されることよりも、結果として「勝者」(玉の輿)として見られることを求めている。


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