【コンセプトアルバム奮闘記】#14 曲解説 Listen
シーンの説明
とある夜。音羽亭でのいつもの仕事を終えて、今夜も片桐はじめは黄鶯楼に出向く。今宵のお相手はもちろん翡翠蝶を予約済。すっかり太客である。
歌詞の説明
今回はいつもよりも高級な離れの部屋を用意してもらった。階段から2階に上がると黄鶯楼の中庭の美しい庭園を見下ろすことが出来る。
新月の闇に浮かぶ翡翠色の灯りの美しさは、彼女がまとう妖艶なオーラとその支配力を象徴。片桐はじめは、彼女の誘惑し支配する空間に身を任せている。
片桐はじめが、自身を「世界の王」、「特別な存在」と自負し意気揚々としている折、翡翠蝶から発せられる辛辣な言葉(BAD WORDS)に彼は打ちのめされる。
翡翠蝶は切り出す。「前から気になっていたが、そんな大金どこから調達してるんだい?自分で稼いだお金ではなく、嘘ついて親からお小遣いもらってきてるんじゃないのかい?」
言葉巧みに彼を挑発した。彼女は片桐の心を揺さぶり煽っていく。片桐が桜華を指名し、自分の元を離れようとしていることへの「嫉妬」が、翡翠蝶の内面で膨れ上がっているのだ。
「次はそのお小遣いで新人の小娘にでも構ってもらえばいいさ。」
※実際、片桐はじめは、離婚した父親からの過分な多額の慰謝料・養育費を管理しており、母親の生活費に使う分以外はすべて自分の懐に入れていた。片桐はじめの父親「柿里一郎」は大企業(キッチン用品)の会長であり、「はじめ」は将来のエリート街道を約束されていたが、母親との離婚があり、母親が引き取ったため、その道を失った過去がある。「片桐」は母親方の苗字。
彼女の挑発的な態度と言葉によって、片桐は屈辱と欲望の狭間で揺れ動き、自分がこのゲームに乗るべきか降りるべきか葛藤している。「cold sweat(冷や汗)」は、自分が追い詰められていることへの焦りと、欲望が抑えきれない心の葛藤を象徴している。
「誰か聞いてくれ!!」
誰にも相談できない状況であり、翡翠蝶との関係がすごろく遊びのように無事に進展するのを期待しながらも、本当の愛や繋がりがないことに気付いている虚無感にも追い詰められている。
最初はセレブリティな世界に憧れて始めた夜遊びだったが、年月を重ね、これまでの思い出が甘く蘇っていく。翡翠蝶に情が移ってしまっているのだ。こんな状況になる前に戻りたい。最初からやり直したいと思っている。
他の太客にも負けないように、自分がこの恋愛レースを優位にリードしている、自分だけが彼女にとって特別な存在となるべく、これまで本当に多額のお金を、この花魁につぎ込んだのだ。振り向かせたい、独占したいという一心で、本当に愛が存在していたのではないかと感じる思い出もある。そんな情がある一方、翡翠蝶にうまく利用されている、という思いもよぎったのも確かだった。そして今、翡翠蝶の言葉で現実に目覚めようとしている(しかし、それでも彼女のただの焼きもちだと思いたい)。
離れから喧嘩の声が聞こえる。「桜華」が声を聞きつけ、物陰から息をひそめ見守っている。
その後も翡翠蝶は追い打ちをかける。
「大企業の御曹司なんて嘘だね。偽物のウエハース男だろ。私は成功者が好きなんだ。見抜いてるんだよ。」
翡翠蝶の挑発的な態度がエスカレートし、片桐が逆上し、ついに彼女を突き飛ばした。「最後の棘」は、翡翠蝶が放った侮辱的な言葉であり、それが片桐の行動の引き金となる。
ここでは、翡翠蝶が転落し負傷する場面が描かれる。彼女の「スクリーム(悲鳴)」が黄鶯楼の中に響き渡り、「舞い落ちる蝶」は彼女の不幸な失墜と転落を表す。
翡翠蝶の転落後、桜華が現れて片桐を助ける。「鱗粉が階段に舞う」は、翡翠蝶が倒れた際の儚さや悲劇を象徴的に描く。
桜華は狼狽える片桐をその場から連れ出し、二人で逃亡する。
「なに突っ立ってるの!早く逃げるよ!」
桜華に手を引かれながら逃げる片桐が、自分の感情を整理できないまま走り続ける。混乱、後悔、恐怖が入り混じっており、二人の逃避行が始まる。
「やっちまった・・・誰か話を聞いてくれ。」