AIって難しい 【ショートショート】
「自動運転システムってすごいよな」
僕は言った。
「すごいよねっ」
アイが言った。
2045年現在、自動車はEV車が主流になり、運転は自動運転が当たり前だ。進化したAIの活用によりカーナビや自動ブレーキの精度が向上し、おかげで交通事故の件数は激減した。行き先を登録してルートを選択すれば、後はほとんどお任せだ。あらゆる交通事故への効果が実証されたことで、政権与党から法案として提出され、義務化される公算は高い。
「でもさ、やっぱりマニュアル車の良さってのもあるんだよね」
「ふぅん、そうなんだ。ワタシにはわからないな。どう良いの?」
「なんて言うかさ、ギヤの操作とかクラッチの感触とか、車との一体感感じて良いんだよ。本当に愛車って感じがしてさ」
「そうなんだ。でも、その分事故が多かったり、壊れやすいんでしょ?」
「それも良いんだよ。じゃじゃ馬を飼い慣らす感じで。実際の女の子はそうもいかないけど、車は素直だからね。自動運転は…、運ばれてるって感じで、ちょっと愛着は持てないんだよな」
「そんなこと無いと思うけどなぁ。スピード違反も煽り運転も、悪いこと全部減ったじゃん。自動運転の方が絶対良いに決まってるよ」
「そうかな」
「そうなのっ」
どうやらアイの機嫌を損ねてしまったようだ。まぁ、無理も無いか。アイは僕の自動車を動かしている、AIなのだから。