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再生誘導医薬の神経変性疾患への応用について(ステムリム)
再生誘導医薬のポテンシャルってやっぱりすごいな…って事とそれに絡めたお話をひとつ。
ステムリムが作成した「再生誘導医薬の対象疾患領域」というスライドを目にした事がある方はお気づきかもしれませんが…
メカニズムの特性上、ターゲットとなる疾患領域が広いなっていうのはもちろんのこと、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)にも可能性があるという事はご存知の事かと思います。
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再生誘導のメカニズムでALSへも効果が期待できるなら、他の神経変性疾患にも応用出来るのではないか?というのがやはり自然な流れ…という事で今回は、
再生誘導医薬はどの様なメカニズムで神経変性疾患に効果を出す事が考えられるか?
ステムリムは今後、神経変性疾患パイプラインを追加する可能性はあるか?
などを事実と妄想を交えてお届けします。
再生誘導医薬で想定される神経変性疾患の治療メカニズム
パーキンソン病での事例
事実にして、いきなり核心をつく研究なのですが、科研費助成事業の研究課題で「パーキンソン病に対する再生誘導療法の確立」というものがあります。
(研究課題/領域番号: 21K15681)
本研究に関して「研究開始時の研究の概要」と「研究実績の概要」が記載されているので引用します。
研究開始時の研究の概要
パーキンソン病はいまだに確立された進行抑制治療や根本治療が無い、進行性の神経難病である。
本研究では、再生誘導効果を持つペプチド(アミノ酸の短い鎖)をパーキンソン病を模した動物モデルに投与することで、治療効果を調べ、治療薬としての可能性を研究する。
再生誘導効果とは、当該ペプチドが間葉系幹細胞という様々な細胞になることができる幹細胞を自分の骨髄から誘導する効果である。
有効性がみられた場合は、どのような働きをもって効果を発揮しているかを解析することで、脳の機能を保つ機構の解明や他の治療薬の開発に有用な情報をもたらすことが期待される。
正にステムリムが再生誘導医薬のコンセプトとして紹介しているメカニズムそのものです。
研究実績の概要
初年度に引き続き、パーキンソン病モデルマウスに対するHMGB1ペプチドの有効性を検討した。
線条体6-OHDA投与パーキンソン病モデルを作出し、HMGB1ペプチドまたは生理食塩水を静脈投与して2~8週間追跡し、行動実験および病理学的検討を行った。
本実験を複数回実施し、HMGB1ペプチド投与は生食投与と比較して、8週間後の行動異常を軽減する傾向を示し、病理解析ではTH陽性ニューロン(ドパミン産生ニューロン)の神経細胞死を有意に軽減することを確認した。機序として、黒質におけるDCX陽性の新生ニューロン増加はみられなかったが、HMGB1ペプチド投与2週時点でミクログリアとアストロサイトの染色性が生食群よりも有意に増強しており、サブタイプ解析では炎症抑制性(保護性)のM1ミクログリアが増加していた。以上から、メカニズムの一つとして、グリア恒常性に作用し、保護的なグリア反応を強化していることが示唆された。以上から、パーキンソン病マウスモデルに対してHMGB1ぺプチドが保護的に作用することが示された。
次に、前回毒性が想定よりも弱かったG51Dαシヌクレイン前繊維(PFF)について、新たに精製し、動物投与で神経毒性を示すことを確認した上で、再度PFF投与マウスモデルを作成した。PFF投与1カ月後から、1カ月毎のHMGB1ペプチドまたは生食の連投投与を開始しており、行動実験を定期的に実施している。2023年度に6カ月以上の追跡の後、病理評価を実施することで、病理進展モデルでの有効性を確認する計画である。
2021年度開始の研究で、現状確認出来る最新の報告書が2022年度のものであり、それから引用しております。
実績の方を読むと使われていたのはHMGB1ペプチドでした。
どの部分のペプチドかわかりませんが、骨髄由来間葉系幹細胞の動員活性があるであろう事は研究の概要からも読み解けます。
(たぶんレダセムチドかそれに近いものだと思います)
上記の記載が全てなので詳細な実験手法・結果は分かりませんし、また考察も十分ではありませんが、とりあえず簡単にまとめてみます。
①この研究で行われた事
線条体6-OHDA投与パーキンソン病モデルを作出した
作出したモデルに対してHMGB1ペプチドまたは生理食塩水を静脈投与した
投与後2〜8週間追跡し、行動実験と病理学的検討を実施した
②結果《実験結果のカテゴリ》
HMGB1ペプチド投与群では生食投与群と比較して8週間後の行動異常を軽減する傾向を示した《行動》
TH陽性ニューロン(ドパミン産生ニューロン)の神経細胞死を有意に軽減することを確認した《病理》
黒質におけるDCX陽性の新生ニューロン増加は確認出来なかった《病理》
投与2週時点でHMGB1ペプチド投与群のミクログリアとアストロサイトの染色性が生食群よりも有意に増強していた《病理》
→HMGB1ペプチド投与群におけるミクログリアサブタイプ解析をすると炎症抑制性(保護性)のM1ミクログリアが増加していた
③継続中の実験について
(前回ミスった)G51Dαシヌクレイン前繊維(PFF)について、再度PFF投与モデルを作成した
モデルマウスに対するHMGB1ペプチド投与も開始しており、6カ月以上の追跡後、病理進展モデルでの有効性を評価する予定
ここからはこの報告書全体をより噛み砕いて、再生誘導メカニズムを持つ物質が神経変性疾患に対してどの様なメカニズムで効果を発揮したか、それがどの様なインパクトを与えるか妄想したいと思います。
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