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アトピー性皮膚炎と再生誘導医薬(ステムリム)

最近、Cellular and Molecular Life Sciencesより、玉井教授の名前も連ねる下記の論文が公開されました。

タイトル:Guided monocyte fate to FRβ/CD163+ S1 macrophage antagonises atopic dermatitis via fibroblastic matrices in mouse hypodermis
(FRβ/CD163+S1マクロファージへの誘導された単球運命は、マウス皮下組織の線維芽細胞マトリックスを介してアトピー性皮膚炎に拮抗する)
DOI:10.1007/s00018-024-05543-2

この研究結果から分かった事、想定される今後の展開、あとステムリムのパイプラインに絡めてつらつら書いていきたいと思います。

この論文の結果をざっくりと

  • 進行したアトピー性皮膚炎(AD)ではFRβ/CD163+のS1マクロファージが大幅に減少していた

  • ラミニンα2を処理するとなんやかんやで単球がFRβ/CD163+ S1マクロファージに誘導され結果的にADも改善した

端折りすぎましたけど特に言いたいのはこれです。

予想される今後の展開(私見含む)

一番安易に思いつくのが今回わかったメカニズムとか、そこに関わる分子をターゲットとした創薬…

例えば下記の様な作用をもつ物質をスクリーニングすれば治療薬候補が見つかるかもしれない訳です。


  1. 単球からFRβ/CD163⁺ S1マクロファージへ分化・誘導させる物質

  2. ラミニン-α2等と似た機能を持つ物質

  3. 線維芽細胞からラミニン-α2等の分泌を促進する物質


実際3.はDiscussionの中でも語られてて、こんな記述があります。

『外因性ラミニンα2供給を代替するのに、真皮線維芽細胞からラミニンα2の分泌を促進する物質当てたろ思て、代謝物ライブラリから154の物質をスクリーニングしたら3つほどヒットしたで。まぁステロイドでコルチゾールとアルドステロンの合成経路の中間体なんやけど…実際問題、こいつら生体内でもラミニンα2分泌の調節に関わってるかもしれんわ。でもステロイドやし選択性無くて色んな細胞に影響するから、実用化しよ思たら改造して選択性上げなアカンけどな(意訳)』

こういう点も踏まえてこの研究成果を創薬に応用するムーブはあり得るかなと思ってます。

正直これらの作用を持つ分子となると、よりミクロに具体的にはどんな機序になるか考えた時(ターゲットはSTAT5、STAT6、ALK5、SHP1、NF-κB、Nrf2、TGF-βとかになるんでしょうか?)、既に他の製薬会社が開発を進めているものもあります。

まぁでも単一の化合物でターゲット分子一種に作用するより、『単一の化合物で間葉系幹細胞を動員してオートで患部にホーミングしてくれて包括的に抗炎症、免疫調節、成長因子供給、線維化調整して組織再生してくれる再生誘導医薬』の方がいいと思ってますけどね。

(しかも再生誘導医薬の場合、そもそも体外で培養しないので、培養による能力欠如がない、他家由来の拒絶リスクなし、自家由来の様に高く無い、というか他家であってどんだけスケールメリット出しても合成ペプチドのコストはくぐれないと思う、コールドチェーン不要、オンタイムで投与可能etcという培養細胞治療薬の完全上位互換のポテンシャルがある…と語り出したら止まらないのでやめておく)

今回の研究の様にマクロファージの性質の制御によって治療の可能性がある疾患はAD以外にもめちゃくちゃあると思われます。

具体的には


  1. 炎症性疾患(関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、クローン病etc、神経系の炎症まで含めると脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病etc)

  2. 線維性疾患(肝・腎・肺線維症、心筋梗塞後の心室リモデリングetc)

  3. 自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、多発性硬化症etc)

  4. 血管系疾患(動脈硬化、各種血管炎etc)

  5. がん(腫瘍微小環境の免疫制御・ICIとのコンビネーション)


あくまで可能性ですが、とても夢がありますね。

ところで、1. で例示した潰瘍性大腸炎とアトピー性皮膚炎といえば…ステムリムホルダーの皆さん、なんか思い出しませんか?

ステムリムのパイプラインとの関係性

そう、2025年1月現在、最新のパイプライン一覧表では濁して「複数の組織損傷疾患」となってますが、昔は違ったんですよ、

PJ2-01: RIM3(現在でいうところのTRIM3)

2020年9月10日「2020年7月期決算説明会資料」より引用

潰瘍性大腸炎とアトピー性皮膚炎だったんですよ、RIM3。

基礎検討のデータを見る限りはレダセムチドの上位互換で導出交渉中(社長によるとええ感じ)なのは本当に楽しみですね。

ここからは今後のPJ2導出の動きについていくつか公開情報(IR資料、特許出願etc)を基に考察(妄想)してみました。
以後は有料とさせていただきましたが、仮に当たってたらとてもおもしろいですよ。

もし良かったら読んでみてください。

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