『Record'24 狐面の奥に秘めた想い-』感想文
本稿は、2024年12月29日にコミックマーケット(C105)にて、Dragon Islandさんより頒布された、HELLO WORLD非公式合同誌『Record’24 - 狐面の奥に秘めた想い-』の感想文です。
以降、『Record’24 - 狐面の奥に秘めた想い-』の内容に触れるため、未読の場合にはこの記事を読む前にここから本を手に入れて読んでほしいです。
ついでに、『if』のリンクも貼っておきます。
今回の合同誌は勘解由小路三鈴特集なので、本編だけでなくこちらも事前に読んでおいた方が、合同誌の内容も分かりやすいと思います。
以下、本文です。ネタバレ注意。
表紙(わっちょさん)
"恋"って言葉あるじゃないですか。あれってこの表紙を見た瞬間を表すための言葉なんですよ。
狐面を外して上目遣いでこちらを見上げるかでのん、でも口元だけは見えないんですよね。この時の彼女はどのような感情を抱えているのでしょう。笑っているのかもしれませんし、決意を固めて口を結ぶようにしているのかもしれませんが、その答えは狐面の奥に秘められています。
いやぁ、わっちょさんはあまりにもかでのんを"理解"っていますよね。
表紙を捲ると中表紙にもかでのんが。しかも全体が写ってます。はい、二度目の恋です。
イラスト(水玉ぜんざいさん)
可愛い~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!
あまりにも可愛すぎる魔法少女かでのん。夜の京都タワーを背に、人知れず活躍するかでのんの一幕を表しているかのようです。特に、光の加減がとても幻想的で、思わず魅入ってしまうような素晴らしいイラストでした。私もかでのんと夜景を見たい人生だった。
駆け込み参加でこの絵を描けるの、凄すぎませんか……?
今後も気が向いたらでいいので、ハロワの絵を描いてくださると救われる命がここにあります。
今回参加してくださって、本当にありがとうございます……。
イラスト(わっちょさん)
右から左に行くにつれてかでのんが成長している表現が素晴らしいです。
中学生かでのんは焦って転びそうになっていますし、冬服かでのんは前に進んではいるものの、前を向く余裕は無くてまだ中学の時の私を気にかけています。赤ずきんかでのんになると余裕が出てきて、魔法少女かでのんはジャンプ、ウインク、ピースサインと自分らしさを表現できるまでになっていますよね。次の夏服かでのんは前を向いてひたむきに走り、最後にミスズは今までのわたしちゃんたちを振り返っています。この絵は一枚で『if』でのかでのんの成長を描ききっているんですよね。感服しました。
イラスト(ToToさん)
こちらも可愛らしい魔法少女かでのんですが、ステッキを持って跳んでおり、より魔法少女らしいかでのんです。
他のイラストと違ってモノトーンなので、描き込まれたスカートのフリルやステッキが映え、素晴らしいイラストだと思いました。個人的には、手袋というか指のラインが繊細で柔らかく、とても気に入っています。ポーズも、かでのんらしい可愛らしいもので大好きです。
イラスト(タキオンさん)
アナログ絵って良くってェ!!!!!!!!!!!!(クソデカ大声)
アナログだからこその柔らかさってあると思うんですよ。それとかでのんがとても合っていると感じました。色鉛筆の色使いも本当に綺麗です。
そもそも、紙に手描きってハロワにとっても重要な表現だと思うんですよ。デジタルなものがありふれて当たり前になった現代社会においてこそ、この同人誌も含め、アナログなものこそが持つ価値ってあるんじゃないかなって思います。
勘解由小路三鈴は眺めたい(なる10さん)
小説だけでなく扉絵と挿絵としての漫画を全て一人で書/描かれた大作。扉絵や漫画のおかげで本文の内容をイメージしやすくなっていて、その内容そのものがとてもいいんですよね。かでのんが純粋な二人の間を取り持つ立場で、『if』のその後の話として完璧だと思いました。あと、瑠璃の呼び方がいろいろあるのもかでのんらしいですね。瑠璃の呼び方って200種類あんねん。
ところで、アルタラⅢのマッチングの数値、どうして変わったんでしょうね……。直実の相談に乗った前後で変わっていますけど、それで相性ってそこまで変わるんでしょうか? 考察も捗りそうな、素晴らしい小説でした。
勘解由小路三鈴は一行瑠璃を瑠璃と呼ぶ(井守千尋さん)
これ、タイトルは『勘解由小路三鈴は一行瑠璃を瑠璃と呼ぶ』ですけど、物語の内容としては『一行瑠璃は勘解由小路三鈴を三鈴と呼ぶ』なんですよね。あと「堅書直実は勘解由小路三鈴をかでのんと呼ぶ」ですね。
「かでのん」や「勘解由小路さん」と特徴的な苗字由来の呼び名で呼ばれる彼女が、直実のことでさえ「堅書さん」と呼ぶ瑠璃からは特別な呼ばれ方をするところから、瑠璃にとって三鈴やはり特別な相手なんだろうことが分かりますよね。そしてもちろん、三鈴にとっても瑠璃は特別な相手という訳です。
そして電車の中で本を読むデートがあまりにも二人にお似合い。かでのんはやっぱり直実と瑠璃を誰よりも理解していますね。
必読! 大学生直実試験前二十四時!(井守千尋さん)
温度差ァ! 本当にさっきの小説書いた人と同じ人が書いたの?
直実が限界大学生ムーブをかますも、自身の能力の高さで全部ゴリ押して突破しているのが面白すぎる。
瑠璃が二人分の冷えたお弁当を取り出す場面、たった一言のト書きですけど、これだけで瑠璃が直実と一緒にご飯が食べたかったというのが分かりますよね。そもそもこれって直実のためにお弁当作ってきたってことですよね? 実質愛妻弁当じゃん早く結婚しろ。
三鈴と、僕と、それから。(ゆりさん)
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これだよこれ。
今回のかでのん特集号で1つは見たかった直実とかでのんの甘々イチャイチャ話。本編から考えれば直実は瑠璃以外あり得ないんですけど、「うるせぇ! 俺は直実とかでのんで書くんだ!」と言わんばかりの小説でした。もうタイトルからその気概が窺えますし、そもそも直実と三鈴が同じクラスの時点で原作と違いますからねこれ。直実そこ代われ。
でも時空は歪めど、それぞれ直実とかでのん自体はちゃんと変わってないんですよね。あくまで人そのものを捻じ曲げてるわけではないところが素晴らしいかったです。幸せになってね。
二〇年の恋(TomOneさん)
お? 先の小説に引き続き直実と三鈴の話かと思ったら松岡ボイスで笑いました。最初は出オチかと思いましたが、その後に綴られる三鈴の20年の想いを考えれば決してそんなことは無く、納得できる場面でした。
本作は恐らく、2037年脳死説での『if』の前日譚にあたる話だと思うのですが、『if』で三鈴が深層にアプローチする理由の説明にもなっていて、小説ながら考察に近い要素もあるんですよね。『if』の理解と二次創作小説の手腕の両方が無いと成し得ないものだと思います。
あと、直実が目覚めたら三鈴は正座して瑠璃の話を聴こうね。
勘解由小路三鈴に花束を
自分の文章なので感想は省略。
二〇一九年度前期 錦高校生徒会長手記(竹馬春風さん)
これ、資料としての価値ヤバくないですか?
ハロワファンは全員手に入れたほうがいい資料ですよこれマジで。二次創作とか関係なくハロワが好きなら読んだ方がいい。もっかいboothのリンク貼るね。
https://booth.pm/ja/items/6464300
ハロワ公開当時、錦高校のモデルである堀川高校の生徒会長を務めていた人って竹馬さんしかいないんですよ。つまり、竹馬さんしかこれを書けないんですよね。堀川高校の中に居たから知っていることや、生徒会長として学校のいろいろを見て関わってきたからこその経験が詰まっていて、ハロワの解像度が爆上がりする貴重な文章でした。
ハロワファンでもねじりパンが実在したの知ってる人ほとんど居ないでしょ? 当時ローソンに駆け込んでコラボ商品のねじりパンと3枚セットのクリアファイルを買ったお仲間はいっぱいいるだろうけど。俺もだよ。
魔法を脱ぐ(沖黍州さん)
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やりやがったな。
eroboxの開闢で書くっていっても、独自のハロワの世界観の考察をベースにしっかりSFを、しかも過去作の続編をやってくるところは、流石です。ヒロインを脱がすためにここまで理論武装というか、SF的説得力を持たせることができる人ってそうそう居ないと思うんですよね。しかもあの"窮地"を脱するには裸を見られないといけないとか、普通だったらなんでだよとなるところですが、理論的にそうなので仕方がない。……いややっぱなんでだよ。
あと、《黒狐》は良いキャラしてるしカッコいいので、過去作の「ブラック・フォックス」も併せて読むことをお勧めします。
Kawaii style heroine ”Misuzu”(らすくさん/ゆにぴこさん)
かでのんは実在した!!
ゆにぴこさんのかでのんコスのクオリティが高すぎるし、本合同誌主催でもあるらすくさんの撮影技術が実在感を際立たせています。本を何冊か重ねて持っている写真も、図書委員らしくてとても好きですし、教室のセットで撮影された写真はあまりにも"実在"です。どうして私の卒業アルバムにこの写真が無いんですか? あるわけありませんね。
他の写真も含めて可愛いすぎます本当に。横たわってこちらを見上げている写真とか最高です。ありがとうございます。
全体を通しての感想
イラストも小説もエッセイも本当に最高でした。どれも熱と愛が感じられる作品ばかりで、楽しく読ませてもらいました。
公開から五年経っているのに、このような合同誌が作られるの凄くないないですか? もしかしたら当時ハロワを見た小学生が、いま堀川生にいるかもしれないんですよ?
どうしても作品の感想ばかりになってしまうのですが、今回の同人誌っていい紙でフルカラーなのも本当にこだわられていますよね。
正直、私は感想文を書くのが苦手なんですよね。昔から読書感想文とか書けなくて、未だに苦手意識があります。小学校の頃なんて、本当に何にも浮かばなくて、泣きながら「書けません」って名前だけ書いた原稿用紙を出したこともありました。そんな私でも、今回の合同誌は不思議と感想を書きたくなったんですよね。それくらい、心動かされる本でした。
最後になりますが、『HELLO WORLD』の制作陣や各関係者の皆様、主催のらすくさんや本誌に関わって頂いた皆さんに感謝を申し上げます。
ありがとうございました。