【Vol.4】どーでもいいはなし①
満員電車。
ふと、目の前の男性の二の腕に目がとまった。
紺のスーツに映える「白きもの」が動いている。
焦点の合いにくくなった初老の視力でガン見した。
なんとBABY-G!!→G-SHOCK!!!
もちろん腕時計ではない。
BABYのG(ゴキブリ)である。
まだ生まれたてなのか白くて1ミリくらいの小ささ。
しかしながら、その姿は立派にG!!
どういういきさつでこのような状況になったのかわからないが長い触角を左右にちろちろ振りながら男性の二の腕を右往左往しているのだ。
わたしはゴキブリがこの世で一番苦手だ。
「わたしを暗殺したいなら運転する車の中に
Gを放っておけば完全犯罪が成立する」と言っていたほどだ。
わたしから理性と全エネルギーを奪い去る強者なのだ。
ゴキブリたちからすれば
「こっちだっておまえたちのことなんで大っ嫌いだ!!
われわれをみれば悲鳴をあげ、毒のスプレーを浴びせたり美味しそうなにおいの毒でおびき寄せたりしておいて新参者の人間が何言ってんだ(怒)」と。
かつて常夏の国で仕事することになり、仕事関係の書物よりまっ先に「G」関係の本を2冊も入手した。
「まずは敵を知る」これは大事なことだ。
ゴキブリといってもいろんな種類がいて、人間が大騒ぎするほどでないコもいる。
人間の目の敵となっている種類のコたちも、キッチリ棲み分けができていればなんら問題ないのである。
むしろあちら様からすれば人間のほうがG様テリトリーに入ってきたというべきだろう。
結局、敵を知ったところで仲良く共存という深い懐は得られなかったが、それでも多少理解は深まったし、文化によってGの受容度も違うということがわかったことは収穫だった。
(-_-) (-_-) (-_-) (-_-) (-_-) (-_-) (-_-) (-_-)
まだ、目の前のBABY-Gは右往左往している。
肘まで行ってはまた戻り、何か考えているのか途中で止まるを繰り返している。
その健気で一生懸命な姿がだんだん愛おしく思えてきた。
「がんばれ、がんばれ。」
とうとう下車するまでの10分間、BABY-Gにくぎ付けであった。
朝からちょっと感動の出来事となった。