駐在員、ムスリム女性との接し方で神経質になる
※以下の投稿は、あくまで私がここヨルダンで経験していることに基づいたものです。他のイスラム諸国でも同様かどうかは定かではないことをご了承ください。
ハーレムという言葉、日本で聞くことがあり
ますね。
多くの女性達に囲まれてウハウハ、鼻の下を
伸ばした、だらしない男性の様子が目に浮か
ぶのではないでしょうか。
各資料によると、この「ハーレム」は
トルコ語の「ハレム」が語源で、
アラビア語では「ハリーム」と言います。
しかし、
イスラム社会における「ハリーム」は
「男子禁制の、女性だけの部屋」
という意味で、日本人のいう「ハーレム」と
は全く意味が異なります。
イスラム社会では、男女の出会いや男女関係
に厳しい制限を設け、節度を重んじる傾向が
あります。
特に重要なこととして、
男性は自分の家族、親族の女性達を他の男
から隔離し、保護しなければならない
という務めがあります。
これについての良し悪しはさておき、
「ハリーム」というのは、
自分の家の女性たちを他の男の視線に触れ
させないために設けた、女性専用の部屋
という意味なのです。
決して、少数の男性が大勢の女性に囲まれ
てニヤニヤするという状況を指すものでは
ありません。
ヨルダンでスタッフなどのお宅に招かれて
行きますと、玄関があってすぐに客間が
あります。
そこでお茶を出されてもてなされたりする
のですが、私が男性なので対応に出てくる
のは男性だけです。
スタッフのお父上であったり、男兄弟が
わらわらと出てくることが一般的で、
お母上や姉、妹が出てくることはありません。
私が客間でおしゃべりしている間、女性たち
は「ハリーム」に「避難」しているのです。
私がもし女性だった場合、私は客間ではなく
「ハリーム」に通され、その家族の男性達と
会うことはありません。
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ここヨルダンでも日本でいう「女子会」が
あります。
週末など、近所の庭のあたりから大勢の女性
たちの笑い声が聞こえるのです。当然ですが、
そこに男の姿はないようで、外から見えない
よう完璧に囲いがしてあります。
聞くところでは「女子会」や「ハリーム」では、
女性たちは普段身につけているヒジャーブ
(ムスリム女性が頭から被っているもの)を
脱ぎ捨て、自由奔放に女性たちだけの宴を
満喫するのだそうです。
ご主人であれ、父親であれ、兄弟であれ、
親族の男性であれ、いかなる男性も「女子会」
「ハリーム」への入室は一切認められません。
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一昨年のことですが、ウチで雇用している女性
スタッフが結婚することになりました。
その「結婚宣言式」なるものに招かれて出かけ
て行ったのですが・・・、
私はてっきり日本の披露宴のごとく、その女性
スタッフと新郎のご家族ともお会いできるもの
と思っていました。
職場の上司として、ちゃんとしなきゃとスーツ
を羽織り、その女性スタッフが好きなチョコレ
ートの大箱を抱えて会場に行ったのですが、
私が案内された大部屋には、総勢150名程度の
おじさん、おじいさん、お兄ちゃん、男の子
しかいませんでした。
(見えにくいですが、下がそのときの様子です)
その結婚宣言式で会えたのは、女性スタッフ
のお父上、兄弟をはじめとする男性のご親族
と、新郎とその男性親族のご一同だけでした。
結局その日は新婦となった女性スタッフはおろ
か、そのお母さん、姉妹の皆さんとも会うこと
はありませんでした。
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これほど男女関係において禁忌事項がありま
すので、仕事においても女性に関しては結構
気を使います。
まず、普段の会話で、話し相手はもちろん、
他人の奥さんや娘さんについて言及したり、
質問することは避けなければなりません。
例えば、男性が既婚のヨルダン人男性に
「ご家族の皆さんはお元気?」
と聞くのはOKですし、普段のやり取りでは
聞かないと逆に失礼ぐらいの感覚です。
しかし、家族の状況を聞いたついでに
「奥さんは元気?」
「娘さんは元気?」
と聞くのは控えた方がいいです。
そんなことを聞いた日には、
「なんでお前がオレの妻とか娘のことを気に
しているんだ?」
などと、あらぬ憶測を呼んでしまうことにな
ります。
「○○さんの奥さん、キレイだよね~」
など、日本なら普通に会話してしまいそうな
ことでも、ここでは政治の話題と同様、不用
意な発言は避けた方が無難です。
「あなたの奥さん、きれいな人だね~」
など言おうものなら、相手は
「はびーび(私)が妙な目で妻を見ている」
と解釈し、警戒心をあらわにするでしょう。
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こちらの人と知り合いになると、Facebookの
自分のページを見せ合いっこすることが多い
のですが、
既婚男性のFacebookには子供さん達の写真は
あっても、奥さんや娘さんが写った写真はあり
ません。
私のFacebookには妻が写った写真もあるのです
が、
ある日、ヨルダン人の男性同僚に私のFacebook
を見せたところ、妻の写った写真が出てくると
「ハッ!」
とスマホ画面から目そらしたのです。
そして、
「ごめん、奥さん見ちゃった・・・」
と私に謝るのです(!)
後から聞いた話で、こういうときは妻の写真
を見せてしまった私にも非があるらしく、
「いや、こちらこそ不注意でごめん・・・」
などと謝らなければならないのだそうです。
もちろんそれ以降、話のネタにFacebookの
写真を見せることはしなくなりました。
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仕事中の女性スタッフとのやり取りでもタブ
ーが存在します。
まず、
女性スタッフに絶対に触ってはいけません。
絶対に、です。
「ねえ、ちょっとちょっと」
と女性の肩をちょんちょんとつつくなんて
セクハラどころか、相手を穢したことと同等
の扱いになります。
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また、たとえ仕事上の関係であっても
女性と握手することはありません。
こちらから握手を求めても、相手が手を出し
てくることはないのです。
唯一、女性から手を出されたら握手しても
いいのですが、それでも
ちょこっと触れる程度に、手を重ねるぐらい
のもので、ギュッと握手するのはやめるべき
です。
女性と握手したのは、この4年半ぐらいで一度
しかありません。
男女の接触にこれほど神経質なところなので、
たとえば女性スタッフに書類を渡すときは紙
の端っこを持って渡すようにしますし、
小さなもの、例えば小銭を手渡すときは、
相手の手のひらに触れてしまわないよう、
いちいちテーブルに置いて渡すのです。
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あとは、女性と密室状態で二人きりになる場合
も注意が必要です。
まず、部屋で女性スタッフと二人きりになって
しまった場合、ドアを必ず開けておかなければ
なりません。
また車でも同じで、男一人、女一人でどこかに
行くのは結婚したカップルか、親族というのが
通念です。
出張や外出で帰りが遅くなった女性スタッフが
いた場合、男性ドライバーや男性スタッフだけ
で女性スタッフをお家まで送らせることはでき
ません。
親族でもない男性に送られて娘が帰宅したと
なると、そのご両親が怒るのです。
もうひとり誰かが一緒に乗っていれば問題は
ないのですが、他に誰もいないときは私も
ドライバーと一緒に車に乗って、女性の自宅
まで送りに行ってます。
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と、女性に関することで日々気を使います。
私と直接仕事をしている女性スタッフは5名
いるのですが、年月を重ねるごとに、次第に
自分の娘とか、妹のような感覚になってきて
います。
ふとした仕事の合間なんかに、
「はびーび(私)さん、
どこかにいいオトコ、いませんかね~?」
などということをつぶやくのは、ヨルダンの
乙女たちも同じです。
彼女たちに変なオトコがまとわりつかない
よう、私なりに彼女達を守らなければという
責任感も感じるのです。