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高齢になった親と向き合う20


“どっちからきたの?どっちから回っていいの?それがわかんないのさ誰か歩いてる?
誰もいないあやしい立てないのさ困ったもんだ“


と母が言う
薬の影響で話しが噛み合わないのだ



日曜日
夫と2人で面会
背もたれで何とか座っている状態



"緑色の服似合うね"のジェスチャーで
わたしの服を引っ張る


“パパまた来てね"と泣きそうに言う




月曜日
父と2人で面会
りんごジュースをストローで吸えず
スプーンで口に含ませた

“父さん上手だねぇ〜"って一瞬笑った


“あんこ食べるかい?“と聞くと
小さじ1杯のあんこを舐めて
わたしに抱きつく


しがみついた力がとても強かった





火曜日
わたし1人で面会

ベッドに横になったまんま
焦点が合わない


わたしにつかまって起きあがろうとして
手をぎゅっと握る



水曜日
午前10時ころ病院から電話があり
すぐ母のところに行った



“母さん"と抱きつくと
"ちゃい"とわたしにしがみついて


苦しそうにうなずいた


30分後に父が到着し
1時間後に夫と兄が来た


曲がった足を伸ばしたら
“痛い痛い痛い"と母が言った

ごめんごめん


だけど看護師さんが
喋ったの!とびっくりしてた

父と兄
声が聞けて良かったと言ってた


夕方
わたしの長女と次女が来た



母の唸り声に混じって
孫の名前を呼んだように聞こえた


父と2人で病室に泊まる


母のベッドに簡易ベッドをくっつけて
冷たい手と足もくっつけて
横になった



母さん楽しかったね
色々面白かったね
母さんありがとうね
母さん
と小さな声でささやいて看取った

潮が引くようににスーッと
静かに呼吸が止まった


肝内胆管癌
余命半年と宣告されて
9ヶ月間 頑張った母さん


2024年6月13日(木)0時00分
母が亡くなりました
享年75歳



深夜2時
母を連れて実家に戻りました



こんな日なのに



朝日は昇るし
辛かった


















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