思考と経験と
電源設計という仕事に携わってきて、色々な経験や知識を得てきました。
それを基にものづくりのほぼ上流から下流までほとんどを経験してきたのですが、今の職場でやっとそれらの経験を活かしつつ新しい回路に対する思考をすることができ始めました。
ある意味、自分の知識や経験を次の世代に引き継ぎながら仕事をするという準備が整ったといえるのではないかと思っています。
電源を設計する場合は、今でこそ評価用基板やシミュレーションソフトがICメーカから出されている場合が多いので、回路を動作させるということ自体は簡単にできるようになっています。
私が現役で電源設計をしていた時は、それこそ最初はユニバーサル基板にディスクリート部品を配置し(もちろん安全規格なども考慮しながら)、実際に電源を供給し、各種パラメータを調整、最適化するという作業を実際に行っていました。
その最初の段階、場合によってはパラメータ設計をも飛ばして設計ができるというのはうらやましいような感じもしますが、経験は知識に勝るものだと思っていますし、実際に失敗をしてみて初めて経験を積んだことになるので、この部分は非常に重要だと思います。
特に電源設計の場合、各使用部品の特性(温度特性やディレーティングなど)、安全規格に対する知識が重要となってきます。
極論ですが、電源設計をするということは、各部品にもある一定以上の知識や経験がないと製品はできても製品ばらつきが大きくなってしまい、最悪の場合は、感電や火災の原因にもなり得てしまうのです。
あまり長々と書くと嫌う方もいらっしゃるでしょうから、一例だけにとどめますが、わかりやすい電流ヒューズを例にとります。
電流ヒューズ(単にヒューズでもよいです)は、通常使用で切れてしまっては電源として役に立ちません。しかし、電源のACライン(家庭用コンセントのところからきている電源ラインです)に不具合がというか、部品が壊れ、ショートした場合、電流ヒューズは切れなければなりません。
この二律背反な事象を達成しているのが普通なのですが、きちんとした知識も経験もない設計者が、電流値だけ測定し、部品を選定した場合は、おそらく期待寿命時間に達する以前に正常な状態で切れてしまうでしょう。
理由は専門的な話になるので省きますが、正しい部品選定ができていないからです。
知識や経験は、昔取った杵柄でも、使えるものです。
そこからさらに新しい思考を始めることもできるのでそれが楽しくて設計者という道に進んでいるのですが、それを引き継げそうであるということもうれしいことですね。
う~ん、長文になってしまいましたね。