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幸せのパンケーキってご存知ですか?
すいません、幸せのパンケーキってご存知ですか?
そう俺が話しかけられたのまだ寒い春先、日が落ちるくらいの時間だった。
俺は話しかけられること自体苦手なのにパンケーキって事で不機嫌になりつつ振り向いた。
そこには話しかけてきた女性が居た。
まだ歳は30手前くらい、栗毛色のショートヘアで身長は160cm程で色白、厚手の焦げ茶色のコートを着てる女性だった。
正直好みだ。だが彼女は俺にパンケーキと言ったのだ。
俺は【パンケーキ】という文字、画像、言葉、話題…パンケーキに関わるものが嫌いだ!
だが、僕は良識ある大人なので色々と押し殺して看板を指して教えてあげたんだ。
「あそこに看板出てますよ。」
「あ、本当だ。ありがとうございます。」
そう言って彼女はお店に向かって行った。俺は彼女がお店を向かうのを見て、会社の面談に向かった。
俺は今、会社の面談に向かっている。前職で色々あって会社を辞め、なおパンケーキも大嫌いになった。今はそのため転職活動中である。
前職に続きIT系の職に応募している。幸い有名企業に居たのと会社で資格取得の推奨がされていたため資格もあり、既に内定を何社か貰っている。だがしっくりこないので今日も都心に出て転職活動をしている訳だ。
また会いましたね。
そう言ってきた女性が居た。だが思い出せないので正直に聞くことにした。
「えっと、どこの現場で一緒でしたっけ?」
「現場?あぁ~、この前会社の近くで『幸せのパンケーキ』の場所を聞いたんですよ。これから同じ会社なのでよろしくおねがいしますね。」
この前の…女性…
パンケーキに関わる記憶は抹消しているので可愛いのに忘れていた。
なお、後で自分のSNSを見て『俺にパンケーキの話題を振るなど可愛いけど、パンケーキ死すべし慈悲はない』とつぶやいていた…
ちなみに俺が転職先に決めたのは都心にある20人程の小さな会社だ。小さな会社ながらも給料も悪くなく、太い客も居るし、成果を出せば出勤時間なども自由であるという嬉しい会社なのだ。なおかつ、資格手当が付いてるので俺が取得済みの資格で手当が出るのが嬉しい。
お茶に行きませんか?
俺に話しかけてきたのはまたあの女性だ…
「え?なんでですか?」
「ちょっと聞きたいこととかあるので…お願いします。」
数日経って会社に馴染んできたと思うが、二人で話をするほど親密になっては居ない。
不思議だが、可愛い女性のお願いは無碍には出来ないので俺は快諾をした。
「業務後にお茶でもしましょう。」
彼女からお茶をする場所を指定された。なんだって『幸せのパンケーキ』なんだ!?可愛い女性とのお茶とパンケーキを天秤にかけるなんて…
でも、やっぱり女性の相談?されるのだから行かないとね。
パンケーキは頼まないんですか?
彼女が奢ってくれると言ったが俺はコーヒーだけを頼んだ。パンケーキは嫌いだ…普段なら「パンケーキ死すべし慈悲はない!」だが、パンケーキを楽しんでる人たちが居る場でそんなこと言わないくらいの良識は持ってるんだ。
「ダイエット中何ですよ。最近、甘いものは控えているんです。」
「すいません、知らずにこのお店にして申し訳ないです。」
「それで相談って?」
「会社のことで…」
彼女の相談というのは新卒してずっと同じ会社で数年働いて居たので、現状のままでいいのか、他の会社の方がいいのではないのかなど、新卒から同じ会社に数年働いていた人達がなる麻疹のようなものだ。
僕は当たり障りのない資格勉強したり、やりたいことを考えてみたりなど回答した。
パンケーキはお嫌いなんですか?
流石に何回も来ていて頼まないしパンケーキを直視しないから言われたのだろう。
ちなみに、あれからも何回も「相談」と言われてパンケーキ店に来ている。
何でパンケーキ嫌いの俺がパンケーキ店に来てるかって?彼女がパンケーキ好きなのと普通にサンドイッチも置いてあって美味いからだよ。
それに飲み行って酔われたりしても面倒だしな。
「少し、色々あって苦手なんですよ」
「アレルギーの問題ですか?」
「気持ちの問題です。」
「なら一口だけでも食べてみては?」
彼女はパンケーキを一口分フォークに刺して僕にパンケーキを刺しだして言った。
「幸せのパンケーキってご存知ですか?好きな人と食べるパンケーキのことですよ。」
俺は頭が混乱した。混乱した。照れながら差し出されたパンケーキを食べてしまった。
美味かった。