サイコロで給料を決める!
武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコースクリエイティブリーダーシップ特論 第8回柳澤大輔さん
6月5日、面白法人カヤックの柳澤大輔さんの講義で、面白い話を伺うことができた。カヤックという会社や、実際に手がけた仕事の紹介だけでも十分面白かったが、「面白い仕事」をデザインするヒントをもらえたことが、個人的にとても良かった。
●仕事の作り方の常識を覆された!
「仕事を面白くする」ではなく、「面白い仕事」という言い方にはこだわりたい。ただのニュアンスかも知れないが「仕事を面白くする」というのは、規定の課題・目標に対する業務デザインの話で、ある種のカイゼンであると思っている。(カイゼン=効率化とは限らない)。
一方、「面白い仕事をする」という表現は「自分が面白い仕事を創る」という意識が感じられる。だから、この表現の方が柳澤さんのお話にしっくりきた。
「面白い仕事」の象徴が、柳澤さんが会社を始めるにあたって「誰とするか」だけが決まっていた、という話だ。これまで、どんな企業でも、まず「何をするか」から決めるのが当たり前だと思っていた。スタートアップの場合でも、「自分が面白いor好きなこと/ビジョン/妄想」など様々な言葉で表現されるが、いずれも「何をするか」が出発点だという固定概念があった。
カヤックの発想は違った。「何をするか」より「誰とするか」が先にくる考え方に、個人的にとても共感した。「これがしたい!」という強いこだわりがなくても、「この人と仕事がしたい」というモチベーションが、仕事を創る原動力になることもある。自分に関して言うと、会社で仕事をする時は「どんな内容か」よりも「誰とするか」の方が大事だし、モチベーションにもパフォーマンスにも影響する。
カヤックは「誰とするか」がそもそも起業時の最重要事項だったので、運営の方法にもその精神が反映されているように見えた。
●給料はサイコロで決める?
例えば、「サイコロ給」。これは、創業者の3人が給与面で揉めないため導入された施策である。一見、乱暴なようだが、評価(出世)とお金を切り離して考えることで、理論的には「評価とお金、どちらかは手にできるチャンスが全員にある」ということになる。社員の中から脱落者を出さないために、とても合理的な方法だ。
実務に関して一つ例を挙げると、カヤックの企画会議で使われるのはブレーンストーミング、いわゆるブレストだ。カヤックのブレストは、参加者が全員手ぶらで参加することが原則らしい。これもアイディアをチームで考えるためには合理的だと思った。最初からアイディアを持ち寄ると、アイディアは人に紐付き、アイディアの評価が人の評価につながるような空気になる。参加者が全員ノーアイディアの状態でスタートすれば、アイディアは人に紐付きにくく、純粋にアイディアとして発展しやすい。
それでも、このやり方が効果を発揮するためには、人のアイディアに乗っかる姿勢を、参加者が持っていること前提だ。自分のアイディアに執着がある人には向かないかも知れない。
カヤックの仕事のスタンスは、個人的に大好きだ。「誰とするか」が大事なので、チームで揉め事が起こらず、かつ、モチベーションが下がらないこと仕組みを作っている。
自分のアイディアが通ることより、一緒にいて気持ちのいい人と仕事をすることが大事で、誰かが出した良いと思う案に乗っかっていく。それは必ずしも自分の「好き」や「ビジョン」を貫くことにはならないが、「面白い仕事」の作り方として、とても素敵で、かつ共感できるものだ。
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