ムサビの学び CLのリアル
もうすぐ社会人学生として2年間通った武蔵野美術大学大学院 造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース(通称CL)という、とても長い名前の大学院を卒業します。あっという間でした。ただでさえ仕事で忙しいのに、社会人が通う大学とは思えないくらい課題がハードで、息つくヒマもありませんでした。(それで時間をかければかけた分だけ良いものができるのか、評価されるのか、というとそんなことは全くないのが美大らしいところです)
なんか分からないけど面白そう! ワクワクできそう! というのが生活に閉塞感を感じていた僕の正直な入学動機でした。ソーシャル・イノベーションとかクリエイティブ・リーダーシップとか難しい横文字が並んでいるのをみて「なんとなくこれからの時代に必要なクリエイティブが身につくんだな」くらいの感覚だったと思います。
授業
1年生で、この大学の理念となっているソーシャル・イノベーションに関する科目を履修します。これがまた大量にあり、デザイン思考/デザインの実践/アート/学術的なリサーチ/エンジニアリングなどなど、「1年でこんなに幅広くやるの!?」とびっくりしました。でも、どれも必要そうだしなあ・・・会社どうしようか・・・と思いながらとれるだけとりました。前期の時間割はこんな感じでした。(2019年度のもの。年々変わるらしいです)
本当に必要なものだけ取れば良かったんですけど、デザインについては素人だったので何が必要になるかなんて分かりませんでした。まあ、今考えると必修だけで普通に卒業はできると思います。当初は「せっかく美大に来たのだから、面白そうなことは全部学ぼう」みたいな熱意があったので、少しでも興味があったものは全部とりました。そういう熱意がなかったらきっと無理でした。
2年になったら一転してほぼ修士論文だけです。修士論文は修士論文で大変なのですが、時間的な拘束は格段に減ります。特に今年度はコロナで数えるくらいしか学校に行ってないです。僕は修士論文でパターン・ランゲージというものを扱い、インタビューやデータのまとめ作業が必要だったのですが、オンラインのツールが発達しているため、すべて家でできました。
あと、1年生も2年生も通常の授業以外に、先生方がプロジェクトを持ってきてくれるので、興味があるものに参加することができます。僕は1年生の8月に中国に滞在して上海の美大生と一緒に作品をつくる、という海外プロジェクトに参加しました。
人
1学年は30〜35人くらいです。来ている学生のタイプでみると、一般的な大学院と社会人向け大学院の中間という印象です。社会人経験のあり/なし、20代〜60代の幅広い年代層、留学生……本当に幅広い属性です。この規模のコミュニティでこれだけ雑多な背景を持つ人が集まっているところはあまりないのではないでしょうか。それもこのCLの魅力になっていたように感じました。自分でものづくりをしたことがない僕は、美大卒の学生たちの造詣力に圧倒されました。
属性/個性でいうと、6人の先生たちの専門やバックグラウンドもバラバラでそれも面白いです。でも、だからゼミを選ぶのにとても悩むのですけれど……。
振り返り
この大学で何が学んだか? 最近まで即答できず、そのことが不満でもあったのですが、今は一周まわって「なるほど。よくできているなあ」と思うようになりました。この大学が標榜するソーシャル・イノベーションとかクリエイティブ・リーダーシップは極めて漠然としているし、教えていることもとても幅広いです。一つの方向に収斂するカリキュラムではなく、あくまで素材しか提供しません。そしてその素材は教員の方がソーシャル・イノベーションを起こすのに有効だと考えている素材です。見方を変えると、その素材を選んで何をつくるかは各人に委ねられます。無責任に見えるかも知れないけれど、なんだか今っぽいなあと思って、個人的にはありです。完全に好きではないけれど、ありです。そもそも自分で必要な素材を選び、それらを統合して意味を与えることができない人にイノベーションは起こせないと思うので。少しSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)に似ている気もします。SFCに美大のカルチャーが混じったイメージです。
MBAのように資格が欲しい人、学びが画一かつ明確であることを望む人には向かないと思います。一方的な知識伝達を期待する人にも向かないと思います。でもその分懐は深くて「自分が興味がある領域で新しいことをしたいなあ」という意思がある人であれば、誰でも発見があると、僕は思いました。
学びというのは、その瞬間ではなくのちのち生きてくる、ということもあるので、卒業して半年後・1年後に感じたことがあればまた記したいと思います。
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