読書会第114回 中上健次『岬』
本日開催した読書会のレポートです。
企画趣旨
私が住んでいる三重県熊野市とその隣の和歌山県新宮市にゆかりのある郷土作家、中上健次。
戦後生まれで初の芥川賞作家、生まれ育った被差別部落を「路地」と名付け様々な作品を遺した。
20数年前に読みかけて挫折した作家をもう一度読み直してみようと思った。
日本に、世界に誇れる郷土作家なのに読めていないのが自分としては恥ずかしいと思ったので取り上げた。
読書会で語られたこと
まず課題本である「岬」の感想を話していただいた。
総じて、力強く一気に読めたという共通の感想。
参加者の一人は、息苦しいという感想。
私は共感し、その息苦しい独特の筆致の中で、物語の進行上特に関係のなさそうな描写が場面転換というか息抜きのような役割を果たしているのではないかと発言した。
別の参加者からは、主人公は抑制的で禁欲的に描かれていて、ラストシーンで積み重ねた怒りなどが爆発したとの見解を話された。
ラストシーンの感想も語られた。
初めて読む方は衝撃的な場面だが、読者によって受け取り方が違うのが面白かった。
本書収録の「浄徳寺ツアー」にも言及された。
良い作品とは認めながらも、こちらも読む人によって受け取り方が全く違うと感じる作品だと思った。
熊野大学夏期セミナー「没後30年の中上健次」
読書会の後半は、先週二日間に渡って開催された、熊野大学の感想のシェアを私がした。
熊野大学は中上が生前創設した文化講座。
入学試験はなく、校舎もなく、卒業は死ぬ時というコンセプト。
4年ぶりに開催されるということで、初参加した。
二日間のまとめとしては、いわゆる「秋幸三部作」の掉尾を飾る『地の果て 至上の時』が現代文学の頂点であることを繰り返し伝えられた。
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