今さら聞けない3Dプリンタのあれこれ -素材の種類編-
こんにちわ!Kanazawa.IoTメンバーの竹田です。
デザインの仕事をやってます。
最近は平面のグラフィックデザインよりも、3Dデザインの方がメインです。
さて、前回は「3Dプリンタの機材の種類」についてお話しましたが、今回は、その3Dプリンタで使用される「素材」についてお話したいと思います。
日々進化をし続ける3Dプリンタですが、ハード面における根本の概念や方式は、それほど大きく進化することはありません。それよりも、今後は使える素材の種類が多種多様になり、それこそどんな質感のものでも3Dプリントできる様になるでしょう。
そこで、すでに商品化されている代表的な特殊素材から、現在も研究開発が進んでいる未来の素材まで情報をまとめました。実際に使ったことのある素材については、個人的な使用感も混じっています。
1)ABS/PLA
一般的なプラスチック系の樹脂。FDM方式で用いられる。安価、豊富なカラーバリエーションが特徴。
ABSは熱加工時の温度がPLAよりも高いことから、反りやすく失敗が多かったものの、後加工がしやすくサポートも剥がしやすかったことで重宝されました。が、最近は制御ソフトが進化し温度調整と制御速度をシビアに設定できるようになったことから、PLAの方が主流になっているように思います。PLAは植物由来の原料のため熱加工時の匂いも軽く、ゴミとしても環境に優しい、かつ、造形形状もしっかりして美しいです。
2)アクリル樹脂
光造形方式で用いられる、光硬化樹脂(=レジンとも呼ばれる)。非常に細かい造形にも耐えられる強度を持つが、やはり所詮は樹脂なので力を入れると折れます。あとは、熱にも弱いように思います。例えばドライヤーの熱などで変形してしまいます。そんな使い方しないよ!って思うかもしれませんが、製品の試作品だといろんな耐久検査も行いますので、この辺りは地味に重要なポイントになります。
制作したものを納品しに行こうと、夏の車の中に一晩入れておいたときに、車内の温度で変形していたときは暑い車内で冷や汗が止まりませんでした。。ABS/PLAで作成したものは変形していなかったので、やはり熱には弱めなんだと思います。
これは理想の女体を再現できたのか!?乳首がキレイに造形できたことで光造形方式の精度の高さを証明できたのはいい思い出。
3)ゴムライク
インクジェット方式に用いられる素材で、ゴムのように柔らかい素材です。3Dプリンタで出力したものはあくまでもプラスチック系で固く、形状の確認にのみ活用されるイメージがありますが、ゴムライクであれば接合パーツの稼働チェックも可能になり、靴やパッキンといった複合素材の試作にも活用できます。
やはり、アクリル樹脂同様、熱や薬品への耐性は強くなく、経年劣化も見受けられます。
4)石膏
精度は高めで、何よりも色がつけられるのが特徴でした。通常の石膏像と同じく、非常に脆いため高いところから落とすと壊れてしまいます。また水分にも弱く、使用箇所を選びますが、色味と形状の両方を確認するのに用いられています。
なぜか相当気合を入れて作ったエビフライ。美味しそうになるように衣にこだわりました。
5)ナイロン
強度、耐熱に優れ、石膏と同等の精細さを保ちつつも、ある程度細い造形部分でも折れにくいです。フルカラーには対応していませんが、価格も比較的安いため、形状の試作には持ってこいの素材と言えるでしょう。
DMMさんの出力サービスにはナイロンに「磨き」をするかどうかのオプションがあります。その違いを写真ではうまく伝えられない。。
6)PC
ポリカーボネートは強度と柔軟性に優れ、主にアタッチメント部分に利用されています。リュックのカチャって付けるオスとメスの部品わかります?アレです。多少力で押しても折れないため、ゴムライクほどではい形状試作には向いています。
もう一つ、PP(ポリプロピレン)がありますが、これはどちらかと言うと上記ナイロンに近い印象かな。プラスチックの詳細な違いまではまだまだ勉強不足で語れませんが、一般の製品でもそれぞれの使い分けがされていますから、今後3Dプリンタでの製造が主流になった際にも、この辺りの細かい使い分けが重要になってくると思います。もっと勉強しておきます。
7)木質
通常のPLAフィラメントに木粉を混ぜ込んで作られた木質フィラメント。質感は木の粉を寄せ集めて固めたMDFのような感じで、表面はザラザラするものの、パット見は木を削った作品のようにも見えます。使ってみた結果としては、表面をもう少しなめらかにできれば、これまで職人が手彫りで作っていたものを代用できるかもしれないなと思いました。
木材はこれまでは、CNCフライスで削るか、型にはめるかするしかありませんでしたが、3Dプリンタによって複雑な形状やオリジナルのアイテムを作ることができれば、木材系の業界にも影響を与えることになりそうです。
画像はいつもお世話になっているrinkakさんのサイトからお借りしております。ウッドライクという言い方もしています。
8)紙
石膏タイプよりもカラー再現度が高く、機械自体はとても高価ですが、素材は紙なので安価で利用できる、稀有な素材です。
もう少し改良が加われば、シュレッダーなどにかけて捨てていた紙を再利用して造形物にするなんていうこともできるようになるかもしれません。
9)カーボンファイバー
木質フィラメント同様、FDM方式のPLAフィラメントにカーボン素材を混ぜ込むことで、非常に高い強度と柔軟性、耐熱性、そしてなにより軽いという、夢のような素材までも3Dプリントできるようになっています。商品化はされていますがまだ実験段階に近く、本当のカーボンよりも性能は落ちますが、一番安価で試作がしやすいFDM方式でプリントできるというのも魅力の一つです。
また、セラミック系の素材も販売されており、造形後に窯で焼くと通常の役物と同様、数%収縮しつつ形状を保つという特徴を持ちます。陶芸もパソコンを使って行う時代がくるかもしれません。
フィラメントはすでに販売されています。気になる方はぜひネットショップで調べてみてください。
10)金属
一言で金属3Dプリンタといえども、使える素材はたくさんあります。アルミ、チタン、マルエージング鋼が代表的でしたが、最近はステンレスも登場しました。各金属ごとに特徴があるため、素材の特性をよく知り使い分けることが重要となります。3Dプリンタは機械の特性上、通常の金属の製法に比べ密度や強度面で差があると言われています。しかし、様々な角度からの検証によって、3Dプリントしたものでもほぼ同等の耐久度が実現されています。
今後はますます、金属3Dプリンタ技術が発展し、削るよりも早く安く丈夫に、金属製品が作れるようになるかもしれません。
11)ワックス
ロウによって造形し、それを型としていわゆるロストワックス製法として用います。そのため、流し込む素材は多種多様で、ガラス、真鍮、シルバーなどなど、主に金属アクセサリー系の分野でのロストワックスの代用として、型を3Dプリンタでの代用が可能になってきています。
by replicatorinc.com
12)食品
最後に、食べ物も3Dプリントの素材として登場しています。チョコレートやパン生地はすでに、専用のフードプリンタが販売されており、近い将来、コックのいない料理店も登場すると思います。
また、砂糖を造形して変わったカタチのシュガーをコーヒーに入れて味わう、なんてことも行われています。ものの形状によって食感が変わるチョコレートという名目で人気の商品もありますが、見た目にもこだわれるなんてデザイナー冥利に尽きますね。
3Dプリンタはそのまま造形してそのまま売る、というこれまでの製造工程をひっくり返すと言われていますが、実は地味に役に立っているのがこういった金型の置き換えや、これまでの製造工程の手助けなどです。実はみなさんが日々お世話になっている製品も、すでにかなり前から3Dプリンタのお世話になっているものが多いのです。
今後はますます多くの素材が開発されていき、ありとあらゆる素材が3Dプリントできるようになっていきます。また、複数素材を一度にプリントする技術も確立されているので、本当に自分の欲しいものをボタン一つで作る時代になるかもしれません。少なくとも僕はそう信じています。
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