190526

柳楽優弥強化週間につき『誰も知らない』を見た。傑作だった。行き場をなくした子供たちと、呆気なく過ぎてゆく時間の様子に、途中耐えきれず意識をスマホに分散させてないと展開を追えなかった。この映画は非情なほど悲しませない。悲しみとは軽薄である。手首を切るのも、復讐に燃えるのも、滂沱の涙も、インスタのポエムも、誤解を怖れずに言えば軽薄だから悲しくて、だからこそカタルシスを得る。悲しみは表層をすべる。しかし『誰も知らない』では一滴の涙も流れない。すべては出口の無い日常に堆積され、最終的には必死の思いで運搬され埋められる。あとで悲しむのは外野だろう。無力を言い訳に踏み込まない善良な市民でいいのか、と明らかに問い掛ける作品だ。『悪童日記』や『輪るピングドラム』と絡めて考えても興味深い。

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