実はキモい太郎と花子の旅人算
ふと腕時計に目をやると、短針と長針が、ほぼ重なっていた。そういえば、小学生の頃、こういう計算をさせられたよなぁ…と思い出した途端、かつて塾で算数を教えていた時のバカみたいな話を思い出した。
例題
太郎さんの家は駅から800m離れています。8時に花子さんは駅から太郎さんの家に向かって歩きはじめ、8時2分に太郎さんは駅に向かって歩きはじめました。太郎さんと花子さんが出会うのは何時何分でしょうか。ただし太郎さんは分速80m、花子さんは分速40mで歩くものとします。
この問題のキモさ
真面目に解説した後、「ところで、この問題、キモくないですか?」と私は尋ねる。みんな一様に「どこが?」という顔をしている。
「普通、出会うというと…」と言いながら私は教室の端に立って手を挙げて
「よぅ、花子!」
と言う。
その次に、教室の反対の端に立って手を挙げて
「あ、太郎さん!」
と言う。
この花子のセリフは、なるべくドラえもんのしずかちゃんみたいな、極力清楚なイメージで演じておく。
そして中央に戻ってきて「でもさ、じゃあ8時8分に出会った時の太郎と花子って…」と言ってからクルリと後ろを向いて私は自分の体をハグしながら
「花子〜!」
「あぁん、太郎さん!」
と絶叫する。
再び正面を向いて「距離がゼロになるということは、こうならないと、出会ったことにならないんですね」と。
これは至って平然と真顔で言う。
いくら相手が小学生でも、10歳を超えた子達である。異口同音に「キモい」「エロい」「嫌だ」と笑いながら言う。
もちろん、この後、迎撃ミサイルの話だとか、スペースシャトルの宇宙ステーションとのドッキングの話だとか、月食の話などもする。そして「いきなり、そういうカッコ良い計算は大学生でも難しいから、とりあえずは太郎と花子でヨロシク」と。
こうして子供達が納得したところで「じゃあ、もう一個、出会い系の問題でも、やってみますか」と。
…お後がよろしいようで。