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GTGSアジェンダブログ(5):より公平な世界に必要な、より公平な技術 - その理由は?
グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット(GTGS)の開催にあたり、世界経済フォーラム・マネージングディレクターのJeremy Jurgens氏が執筆したアジェンダブログが世界経済フォーラム公式サイトに公開されました。
公平で責任ある未来を形作る重要性
Jurgen氏は冒頭で、テクノロジーが既存の問題を解決する"進歩"になる可能性と、さらに問題を悪化させたり新たな問題を引き起こす"弊害"になる可能性について触れました。
今後10年間、技術的なソリューションの波は私たちの生活のあらゆる部分に影響を与え、変化させていくでしょう。こうした新たなソリューションは、既存の問題を解決する可能性もあれば、問題を悪化させ、新たな問題を引き起こす可能性もあります。
デジタル時代となりテクノロジーが急速に拡大・浸透している今だからこそ、公平で責任ある未来を形作るためのアクションが必要であるーーこれはまさに先週、GTGS(グローバル・テクノロジー・ガバナンス・サミット)が開催された理由です。今後の社会のあり方や人間の意味を問い直したうえで、公正かつ責任あるテクノロジー・ガバナンスモデルの構築が最重要課題として世界のリーダー達の間で共有されています。
テクノロジー・ガバナンスとは、新しいソリューションが公正かつ責任を持って設計されていることを保証する枠組みを指す。
ルワンダとインドの飛躍
Jurgen氏は、テクノロジーが新たなソリューションとなった例として、ルワンダにおけるAIを活用した遠隔医療が医療アクセスの飛躍的な向上につながったことを紹介しました。
ルワンダでは、人口100万人に対して放射線技師が1人しかいません。AIを活用した放射線画像診断が熟練した専門家と比べても劣ることのないレベルに達している今、高品質な診断をより多くの人に提供できるようになっています。
またテクノロジーが複数の問題を同時に解決に導くことができると事例として、インドにおける取り組みについても紹介しています。
インドでは、ドローンや衛星画像は、小規模農家に質の高い市場情報や病害虫の検出方法を提供する以上の機能を果たすようになります。経済的なレジリエンス(適応、回復できる力)を高め、さらには飢餓を防ぐことにもつながります。
一方でJurgen氏は、ルワンダの事例がAIの学習データが欧米患者に偏重していることから生じうる課題や、米国のサーバーで保管されているデータをめぐるガイドラインと規制の議論につながっていることを指摘しています。
C4IRとトランスフォーメーションの形成
こうした問題を提起し、公正かつ責任のある形で社会の変革(トランスフォーメーション)を進めるために、世界経済フォーラム第四次産業革命センター(C4IR)は設置されました。
C4IRは、各国政府、企業、市民社会のリーダーと連携して、リスクを軽減しながら最大の利益を得るためのテクノロジー導入の新しいアプローチを開発するための、マルチステークホルダーの協力をまとめるハブです。
世界で2番目のC4IR拠点として設立された私たちの日本センターでも、政府、企業、市民団体、学術界などさまざまなステークホルダーが集い、社会システム全体の変化(トランスフォーメーション)を形成する方法を議論し、プロジェクトごとにその実証を進めています。
なお、GTGS閉会後、世界13拠点で活動するC4IRが今後の活動についてコミットメントを発表しました。詳細は下記のプレスリリースを参照ください。
GTGS
日本時間4月8日未明、GTGSの全セッションが終了しました。Jurgen氏は「イベントが終了しても、テクノロジーガバナンスを議論し続ける重要性は変わらない」と明言します。
議論の核となる精神、そして生活におけるイノベーションの場所を形成する意欲を数日、あるいは数か月で失っては意味がありません。
今後数十年にわたり私たちの暮らしや仕事の進め方を形成するテクノロジーの責任ある実装について、グローバルな議論と検証は続きます。
執筆 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子 ペレスベラスコ ジャンコ(インターン)