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【開催報告】第一回「ヘルスケアデータ:プライバシーと公益の両立」

開催報告

メディアワークショップ「データトラストの再設計」
第一回「ヘルスケアデータ:プライバシーと公益の両立」
2020年6月10日@オンライン

登壇者(敬称略)

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター長
須賀千鶴

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ヘルスケア・データ政策プロジェクト長
藤田卓仙

世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ヘルスケア・データ政策プロジェクト長
山本精一郎

プライバシーと公益の両立? 

新型コロナウィルス感染症は、プライバシー、政府のコントロール、テクノロジーの恩恵とリスクなど、さまざまな課題を私たちに突きつけました。⼈間の⼼⾝の⾃由を最⼤化し、守り続けるために、どのようにテクノロジーをコントロールしながら社会実装を進めることができるのか?プラバシーと公益を両⽴させるデータ運⽤ルールは可能なのか?そもそもデータ運用ルールは信頼できるのか?公益を定義する「社会的合意」とは、どのように形成されるべきなのか?―― 国内での接触確認アプリ導入を前に、こうした問いへの答えを探るべく、メディアワークショップ第一回「ヘルスケアデータ:プライバシーと公益の両立」を開催しました。

データガバナンス:
データの所有よりも利用目的とアクセス権に焦点を

冒頭に須賀千鶴センター長が来年度のダボス会議のテーマ「Great Reset」を紹介しました。パンデミックがつきつけた既存システムの矛盾と不備を明らかにし、より持続可能で回復力のある世界を構築するためのグレート・リセット・イニシアティブ。その中核に「テクノロジーの活用と普及」が位置付けられていることを説明し、テクノロジーの利活用および統御の重要性と緊急性が加速度的に増している現状を説明しました。次に日本センターの活動の最重要課題が「データガバナンス」であること、そしてデータの所有よりも利用目的とアクセス権に焦点を当てることにより、日本センターが提唱する「APPA (Authorized Public Purpose Access):社会的合意に基づく公益目的のデータアクセス」のようにプライバシーと公益という課題は解決可能であることを示しました。

APPA:
「国のもつ公益性」「データホルダー/企業の合理性」「個人の人権」の三要素のバランス

藤田プロジェクト長・山本プロジェクト長によるプレゼンテーションでは、「個人の同意」ゆえに発生する問題を挙げたうえで、医学医療の発展や公衆衛生等、合意がなされた公益のためであれば、明示的な同意なしでも場合に応じてデータアクセス・利用できるようにすることが重要であるとの認識が共有されました。APPAについては「国のもつ公益性」「データホルダー/企業の合理性」「個人の人権」の三点のうちいずれへもの偏重を許さず、バランスをとるための仕組みであることが紹介され、すでに自然災害、パンデミック、がん登録などにおいて先行事例があること、そして今後はがん以外の疾病レジストリー拡張、児童虐待、認知症対策などへの展開も期待されていることが紹介されました。さらにケーススタディとして(1)新型コロナウィルス に関するLINE調査(2)東京都とCode for JapanによるCOVID-19データのオープンソース化(3)国内外の接触確認アプリの導入事例などが取り上げられ、それぞれデータの取り扱いという観点から解説がなされました。

APPA(Authorized Public Purpose Access)の日本語版白書については本記事末尾の関連資料欄からダウンロード可能です。

「空気で動かす」合意では、もう限界。
オープンな議論による社会的合意へ

質疑応答においては、接触確認アプリの有効性や見通しのほか、公益を定義するのに鍵となる「社会的合意」の形成について議論されました。須賀センター長は「日本はこれまで空気で合意してきたが、もう限界だ。もっと能動的な議論の仕組みをつくる必要がある」とし、接触確認アプリがAppleやGoogle主導でルールが決められた経緯に触れながら、建設的な議論とその情報公開こそが透明性、ひいてはデジタル社会に必要なトラスト醸成につながるという考えを示しました。またプライバシーと公益性について、山本プロジェクト長からは「対立軸で考えるのをやめるべき。APPAのように利用目的とアクセス権という観点からみれば両立できる」と再度、説明がありました。

執筆
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター
ティルグナー順子
大原有貴(インターン)

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