「デジタル田園健康特区(仮称)」との連携:自治体におけるPHR導入とデータ利活用
デジタル田園健康特区(仮称)とは
2022年3月4日開催の内閣府における第3回スーパーシティ型国家戦略特別区域の区域指定に関する専門調査会において、従来の未来型のスーパーシティに加えて、人口減少 、少子高齢化など特に地方部の課題に焦点を当て 、当該特区において先駆的に地域の課題解決を図ることを重視する「デジタル田園健康特区(仮称)」という枠組みが示されました。
第四次産業革命を先行的に体現する最先端都市となる「スーパーシティ」に関しては、2021年4月16日まで公募がなされ、合計31の地方公共団体から提案が出されています。一方で地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていくことで、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」に関しても2021年11月11日以来、デジタル田園都市国家構想実現会議において検討が進められています。
今回新たに示された「デジタル田園健康特区(仮称)」に関しては、スーパーシティと並んで、デジタル田園都市国家構想を先導することが期待するものとされています。
(第3回スーパーシティ型国家戦略特別区域の区域指定に関する専門調査会配布資料1より)
デジタル田園健康特区(仮称)に関しては、地域における健康、医療の課題の解決に重点的に取り組む自治体のうち、自治体間の施策連携、データ連携によって各取組の相乗効果が期待されるもの等を指定するものとされ、具体的には岡山県吉備中央町、長野県茅野市、石川県加賀市が該当するものとされています。
(第3回 スーパーシティ型国家戦略特別区域の区域指定に関する専門調査会 配布資料2より)
茅野市との連携
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ヘルスケア・データ政策プロジェクト(HDP)は、先行して地域においてEHRやPHR(Personal Health Record)の取り組みを行っている神戸市や佐渡市などとの連携をしており、今回指定された長野県茅野市とも昨年から、PHRを実装する上でのデータガバナンスの議論を始めていました。
PHRの実装とそれを通じたデータ活用に関しては、これまで国内外で様々な実証事業やサービス提供がなされてきており、データヘルス改革の一環として政府も推進していますが、成功事例は必ずしも多くはありません。プライバシーに配慮し、利用者にとっての明確なメリットを示しながら、持続可能な仕組みを構築することには、技術面・法制度面その他、様々な課題があります。
特に、自治体におけるヘルスケア・データ利活用に向けては、住民との信頼関係を築くこと(そのために丁寧な説明を行うこと)、金銭面を含めた持続可能な仕組みを作ること、更に自治体間での相互運用性を担保すること、といった観点が重要です。
そうした観点をふまえて、私たちは長野県茅野市とともに、市民の個々の同意に基づいたPHRの利用ができるよう、例えばワクチン接種関連の情報という医療者・市民双方にとってメリットが明らかなものを起点に、必要とされる問診データのデジタル化対応等のタスクシフトやデータ連携のあり方を検討します。
自治体におけるPHR導入とデータ利活用の推進に向けて
さらに茅野市における新たな知見も含めて共有し、全国の自治体におけるPHRの普及やヘルスケア・データの利活用を推進するため、関心の強い自治体を集めたワークショップを開始しました。
2022年3月4日には第1回のワークショップを開催し、茅野市や加賀市をはじめ、9自治体と、各省庁からのオブザーバー参加の上で、神戸市における市民PHRに関する事例の共有やPHR普及推進協議会におけるガイドライン作成の取り組みの紹介を行いました。神戸市からは、データ二次利用に関するチャレンジの紹介があった他、利用拡大の困難さなどの問題提起がなされ、高齢者の巻き込みをどうするか、どこまで民間で実施すべきかなどの議論がなされました。また、PHR普及推進協議会からは重複を避けるよう連携をすすめるよう提案がなされました。
ヘルスケアに関する取り組みの中でも、本領域は自治体にとって非常に難しい部分です。今回の健康特区だけではなく、より多くの自治体で様々な関連の取り組みがなされる中、自治体向けのワークショップは今後も継続的に開催し、各自治体間での意見交換の場を作るとともに、ツールキットのブラッシュアップを行い、特区等での新たな取組みを通じた学びを整理することで、国際的にも有益なツールキットを提示する予定です。ツールキットの詳細に関しては、追って本note等でもご紹介いたします。
ワークショップやツールキット等にご関心のある自治体や企業関係者はC4IRJapanHDP at weforum.orgまでご連絡ください。
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ヘルスケア・データ政策プロジェクト長 藤田卓仙
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