【開催報告】自治体向けPHR実装・ヘルスケアデータの利活用に関するワークショップ(2)
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター(C4IR Japan)のヘルスケア・データ政策プロジェクトでは、自治体向けPHR(Personal Health Record )実装・ヘルスケアデータ利活用ワークショップを開催しています。地方自治体はヘルスケア・データ利活用の最前線です。本ワークショップは、貴重な現場の知見を反映した国際的なツールキットの提供などを通して、その実践・実装の取り組みを支援することを目的にしています。
第2回ワークショップは3月18日に開催され、佐渡市と茅野市からその取り組みについてご報告いただきました。
(第2回ワークショップの様子)
佐渡市の「さどひまわりネット」
最初に登壇した佐渡総合病院の佐藤賢治院長からは「佐渡市のさどひまわりネットの取組みと課題」と題し、新潟県佐渡市にて2013年から稼働している「さどひまわりネット」のご紹介と、今後の展望についてお話しいただきました。さどひまわりネットは Electronic Health Record (EHR) の先駆的な実践事例です。佐藤院長からは下記の点が強調されました。
◆多職種連携に際しては、医師に偏らないように業種を集めていること
◆医師を介して患者に説明することで、さどひまわりネットの利用に関する同意を得やすいこと
◆医療・介護等の現場でのEHRの効果はリスク回避が主体で、住民がEHRの恩恵を直接感じることはほとんどないこと。そうした、恩恵をほとんど直接感じない点も含めて、丁寧に住民ご本人に説明していること
◆佐渡市民の実に3分の1の参加が得られていること
◆PHRに関しては現時点では機能に含めていないが、個別化したフレイル対策のための研究としてPHR導入の検討を進めていること
◆高齢者では入院により認知能力や筋力が低下する場合が多いため、自立した生活を維持するには生活を意識した診療計画と入院前後の多職種連携が重要であること
「特区」を活用した茅野市の取り組み
次に、諏訪中央病院の須田万勢医師からは「茅野市における現場の課題とヘルスケア・データ活用への期待」と題し、デジタル田園健康特区(仮称)に指定された茅野市の取り組みの紹介がありました。
茅野市では特有の地域課題を踏まえて、各種生体センサーを利用した異常の早期発見と介入、遠隔薬剤指導におけるSNSの併用、在宅特定看護師が可能な特定行為の範囲の拡大、医療過疎地のスマートホーム化など幅広い取り組みを提案しています。この背景には、少子高齢化が進む一方で病院数やベッド数が減少したりインフラが老朽化していく、医療行為は基本的に医師が担当するという現行法制度のために看護師が自立的に行為可能な範囲がきわめて狭いという課題があります。在宅医療を可能にする諸制度の整備やAIなどの実装を特区として進める茅野市の取り組みは、同様な課題を抱える多くの国内自治体からの注目を集めています。
PHRツールキット
ヘルスケア・データ政策プロジェクト長の藤田からは、C4IR Japanにて進めるPHRツールキットの検討状況と各自治体からのフィードバックを紹介し、ヘルスケア・データガバナンスやヘルスケアデータの利活用のあり方についても提示を行いました。
(藤田報告資料より一部改変抜粋)
重要な論点でもあるデータアクセスについて、私たちはAPPAというコンセプトも提唱しています。APPAの詳細については、以前公開しましたnote記事をご覧ください。
ツールキット、近日中に公開!
本ワークショップでもご紹介したPHRツールキットは、その詳細を近日中に公開する予定です。また今後もワークショップは月1回ほどのペースで開催します。ご関心のある自治体や企業の関係者はC4IRJapanHDP at weforum.orgまでご連絡ください。
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 佐々木誠矢(インターン)
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