【開催報告】第1回「行政DXを進める上での課題について」
行政DXに立ちはだかる課題の本質は何か。政策形成プロセスや規制手法を根本的に見直し、再設計していくための大きな視座・原則を議論したいーーー2020年11月、そんな思いから「デジタルガバナンスラボ」は生まれました。東京大学未来ビジョン研究センターと世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターが合同で立ち上げたこのプラットフォームは、行政府、法曹界、産業界、メディアなどさまざまな参加者が、組織の垣根を超えたオープンな議論を通して、全体を俯瞰する視点から新しいガバメント像を議論し、革新的な行政ソリューションを生み出すことを目指しています。
開催報告
デジタルガバナンスラボ
第1回「行政DXの課題を進める上での課題について」
2020年11月21日@オンライン
登壇者(敬称略)
塩崎彰久 (長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士・コロナ民間臨時調査会WG共同主査)
西山圭太 (東京大学未来ビジョン研究センター 客員教授)
<モデレーター>
城山英明 (東京大学未来ビジョン研究センター 教授)
危機対応で露呈したアナログガバナンスの壁
第1回では様々なバックグラウンドをもつ参加者間で目線を揃えるため、コロナ⺠間臨時調査会のレポートをベースに、乗り越えるべきハードルの把握と向かうべき将来像について議論が行われました。
塩崎彰久先生によるレクチャー「新型コロナ対応「3.0」危機対応におけるアナログガバナンスの壁」では、デジタル化の遅れが足かせになった2つの事例(「情報収集の感染症サーベイランス」と「給付金」)を通してデジタルシステムの導入が現場に浸透しにくい現状のほか、「住基ネット判決など過去に縛られた経緯」というデジタル化とは別の要因を取り上げ、システム導入が即解決策ではないという事実が議論の出発点として提示されました。
日本行政の現在地と将来像
西山圭太先生からは「日本行政の現在地と将来像」という講義にて「なぜデジタル化が遅れているのか」「デジタルガバメントはどんな形なのか」という2つのテーマを通じてデジタル化の本質についての考察が展開されました。物事を抽象化するアプローチができないことはデジタル化において致命的な欠陥であるという見方を前提に、日本の行政やビジネスには極端に物事を具体化するアプローチという偏りがあることを指摘、その克服には縦割り組織という枠の外に出て全体を括る切り口を模索するステップが必須であるとの提示がありました。さらにDXというテーマはシステムの開発・運用・調達の手法だけではなく、「政府とは何か」「政府の機能・ミッションは何か」を問い直すことが最重要課題のひとつであるという考えが強調されました。
何か「決定的なこと」が起こりつつある、今
いま何か「決定的なこと」が起こりつつあるーーこれは私たち全員が感じていることです。そのなかで、デジタル化という名で提示された目の前の課題に追われるだけではなく、その本質を捉える努力が強く問われています。デジタルガバナンスラボは、参加者の思考を刺激し、深め、共創を導くために続いていきます。
Author: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター 岡本直樹(インターン)
Contributors: 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ティルグナー順子(広報)