ダボス・アジェンダ2022: 岸田総理特別講演
世界経済フォーラム主催「ダボス・アジェンダ2022」の2日目には「岸田文雄総理大臣特別講演(Special Address by Kishida Fumio, Prime Minister of Japan)」が開催されました。
成長と分配を両立させる「新しい資本主義」というビジョン、炭素中立・デジタル化・人への投資など重要な政策アジェンダなどに注目が集まったほか、国際的な連携を推進しながら世界をリードするという考えも表明されました。
本ブログでは、岸田総理特別公演やその後の質疑応答のなかでも、デジタル政策の視点から注目する内容をご紹介します。
特別講演を視聴できる動画と世界経済フォーラムからのプレスリリースはこちら↓
パートナーシップへの謝意
特別講演の冒頭、世界経済フォーラムの創設者兼会長であるクラウス・シュワブはこのように述べ、日本が世界共通の課題に立ち向かうため、グローバルな協力体制の中で積極的な役割を担っていることに謝意を表明しました。
そして、日本政府と培ってきた信頼関係への感謝と新政権の掲げる「新しい資本主義」に関心を寄せていると語り、岸田総理を紹介しました。
デジタル原則で、4万件の法令を検証
岸田総理は、ドローン、自動走行、医療、教育など、新たなルールを作ることで、新たな市場を創出することが重要だと強調し、デジタル戦略として先端技術に関わる4万件の規制・制度をデジタル原則の下で見直すことを国際社会に宣言しました。
ダボスアジェンダの多くのセッションでグローバルリーダーたちが幾度となく指摘していた「アジャイル」を、日本では世界に先駆けて「デジタル原則」のひとつとして採用しており、今後の展開が注目されています。
第四次産業革命(4IR)のテクノロジーとアジャイルな規制・制度の関係について詳しくはこちら↓
DFFTを更に前に
岸田総理は、イノベーション喚起という文脈から「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」をさらに進めると表明しました。
DFFTは、岸田総理のスピーチにもあるとおり、2019年1月にダボスで行われた年次総会において安倍晋三首相(当時)の演説により提唱され、同年6月のG20貿易デジタル大臣会合において採択された、新たなデータ・ガバナンスの枠組みです。
英国が議長を務め開催された2021年のG7でも、DFFT協力ロードマップに基づき、各国との連携強化が合意されていました。
2023年に日本が議長国を務めるG7サミットを見据え、DFFT提唱国である日本のリーダーシップ発揮が期待されています。今回の表明は、そうしたグローバルからの要望にも応えるものです。
DFFT関連の直近の取組みはこちら↓
ビジネスリーダーとの質疑応答
特別公演後は、岸田首相、ビジネスリーダーおよびシュワブ会長とのあいだで質疑応答が行われました。
武田薬品工業 クリストフ・ウェバーCEOからの質問
Q. サプライチェーンの現地化が各国で進められている中で、日本は貿易産業政策をどのように展開するつもりでしょうか。
岸田首相は、日本の経済構造の自立性と技術の優位性の確保をする意向を示しながら、安定的な経済成長のために民間投資を呼び込む重要性について言及し、予見可能性と公正な競争環境の確保が必要であり、主要国と産業界でグローバルなルール整備を進めると強調しました。また現在、国会にてサプライチェーンの強靭化への支援に関する法律を提出するなど、経済安全保障の取り組みに意欲を示しました。
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターでは、サプライチェーンの強靭化に必要不可欠なデータ連携基盤の整備に向けて活動しています。詳しくはこちら↓
エア・リキード社 ブノワ・ポティエCEOからの質問
Q. エネルギーの需給バランスが国際的に崩れている中、日本は安定的なエネルギー供給を失わずにカーボンニュートラルを実現することはできるのでしょうか?
岸田首相は、温室効果ガス排出の8割を占めるエネルギー分野において、水素・アンモニアなどの再生エネルギーや送配電インフラ、蓄電池などへの投資強化を精力体に行うと表明しました。さらに需要面に関しても、産業分野でのエネルギー転換に向けた企業投資を行なっていく意向を示しました。
Day2: 他の注目セッション
「ダボス・アジェンダ 2022」Day2 では、本特別講演に加えて、イスラエルのナフタリ・ベネット首相の特別講演も行われました。
各セッションでは「グローバルな社会契約」「コロナ後の雇用・社会的権利」「トラストの再構築」「ワクチンの公平性」などのトピックが話されました。
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