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南極の氷を持ち帰る「超重要な理由」とそれを配る事についての話。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240730/k10014529711000.html

鬼木誠防衛副大臣が自身の選挙区内で開かれたイベントにて、海上自衛隊の船が採取した南極の氷を配布していたとの報道がありました。
これについて公職選挙法ではないかなど色々言われていますが実際はどうなのでしょうか?


なぜ南極の氷を持ち帰るの?


砕氷艦「しらせ」の砕氷方法が関わってきます。
「しらせ」は厚さ1.5メートルの氷を割りながら進む事ができますが、時には厚さ3メートルといった分厚い氷と割って進まないといけない状況もあります。

そんな時に使うのが「ラミング」または「チャージング」と呼ばれる砕氷方法です。

厚さ1.5メートル以上の氷を砕く際、艦を200~300メートル後退し、最大馬力で前進して氷に体当たりする事で氷の上に乗り上げ、艦の自重で砕くという方法です。

ここで重要となるのが「自重で砕く」という点です。
南極に行く際、「しらせ」は燃料や食料といった様々な物質を大量に積み込みます。
帰る際にはそれらが無くなり艦は軽くなるので、砕氷能力が下がってしまいます。

そこで積むのが「南極の氷」、重しとして使う訳です。
ただし採取する場所、使える量は限られており、好き放題に積んで良いという事にはなりません。

要は「重たくするために積んでいるだけ」でとても貴重という訳ではないのです。

この点を無視している人は多く、

正に政界の「黒い氷山の一角」だ💧地球の温度上昇に、日本防衛省が下らん接待でプチ環境破壊、ほう助してたとはね?何時迄も周りを考えない連中だ😒

某ニュースサイトのコメントを引用。

このように実態とかけ離れた内容のコメントも複数見られるようになってきました。
海外の砕氷船事情に詳しい訳ではないのでそちらの話はできませんが、少なくとも「しらせ」はそうしないと帰って来られなくなる可能性が高いのです。
接待ではなく、帰還の為と言った方が良いかもしれません。

一部メディア等で散見されるちょっとした誤解

今回の出来事では幾つかのメディアでは誤解が見られました。
また誤解を招きかねないような内容も見られたのでそれらについても書いていこうと思います。

誤解を招くタイトルと内容の某週刊誌

「あまり知られていないのですが、『しらせ』が南極に行くたびに氷を“お土産代わり”に持って帰ってきてるんです。時には自衛隊の部隊見学に来た学生に見せたり、幹部らと外部との飲み会の席などでロック氷として提供したりと、接待ツールとしての役割も担っています。今回、鬼木副大臣の行為で図らずも“南極の氷”がクローズアップされてしまったことから、一部の幹部は<今後、氷を採取してくること自体が問題視されるのでは>と頭を抱えています……」

日刊ゲンダイDIGITAL 自民党・鬼木誠副大臣が地元で配布した“南極の氷”は防衛省の接待ツールだった

この見出しと記事の内容は良い物とは言えません。バラストとしての用途が主目的である物を“お土産代わり”とは…
閲覧数を稼ぐにしても誤解を招きかねない内容は避けるべきでしょう。

半分正解の某団体

うちの文科科学委員の証言によりますと、非常に希少価値があるものだと…。文科省所管の極地研究所の研究資料として使われています。数千メートルボーリング調査し閉じ込められているようなもの(氷)を科学研究として『しらせ』が採取していたものだと聞いています。

小池晃書記局長

この文部科学委員の発言は半分ほど正解といえます。
確かに局地研究を目的に使用される分も存在しますが、それでも大半はイベントなどでの広報等に使用されます。
割合で言えば後者の方が多く、この言い方も良いとは思えません。
誤解させようという意図があるのであれば「半分正解」から「ミスリード」に変えた方が適切かもしれません。

「税金を使って海上自衛隊の砕氷船で採取した南極の氷は貴重で、科学的にきちんと分析すべき大事なものだ。これを特定の議員が得て、自分の選挙区内で配るのは、公職選挙法に関わる問題になる可能性がある。『しんぶん赤旗』の問い合わせに対し、鬼木副大臣の事務所から回答はなく、明確な説明を求めていく」

小池書記局長

これも正解かは微妙です。
そもそもイベントなどで再活用されている形である南極の氷に関しては「科学的にきちんと分析」される役割ではありません。

筆者も触れる事ができる程の物がイベントがある度に「科学的にきちんと分析」されている氷が展示される訳でもありません。
なので「南極展」とか「南極の氷に触ってみよう」みたいなイベントで氷が展示されていたら遠慮なく触りましょう。
「貴重な研究資料だから少しだけ…」なんて遠慮はいりません。
(当然ながら他の参加者の事を考えつつ)南極を体感しちゃいましょう!

実は入手可能な南極の氷

広尾町の会社役員、石塚敏幸さん(69)=元広尾サーフィン連盟会長=の自宅に12日、「南極の氷」が届いた。

十勝毎日新聞 「南極の氷」で乾杯 サーフィンが縁、しらせ乗員が広尾の石塚さんに贈り物 

そして、このように南極の氷自体は一般人でも縁があれば入手可能であり、問題もありません。他にも一般人が南極の氷を入手した事例は複数あります。
海上自衛官と仲良くなればそのうち氷が手に入るかも…

配布と言っても想像とは違う形らしい…

https://www.data-max.co.jp/article/72556

この記事を参考にすると配布された氷は「持ち帰る事」よりも「体感する事」を目的として配布された形であると考えられます。
配布された物も紙コップに収まるサイズであった為、大半がその場で溶けて水になってしまっているようです。

こうなると事務所が回答した「財貨性のある金品ではなく、公選法違反には抵触しないと考える」という内容が単なる言い訳と一蹴できなくなります。
書けば書くほど財貨性が微妙になっている気が…

ともかく元バラスト南極の氷、現ぬるい水となった紙コップ一杯にも満たない液体が財貨性のある金品であるかどうかを考えなければなりません。

なお筆者は公選法違反にならないと考えています。

最後に

これが仮に法に触れるのであれば問題であり、処罰を受けるべきだと考えますが、問題ではなかった場合であっても、「問題だ。」と言う一部の人々によって問題に「させられる」のであればそれこそ問題です。

それと同時に、調べずに思い込みだけで語る人間が多い事にも悲しくなります。
このままではデマを疑わずに信じてしまう事にも繋がりかねません。
ウクライナ侵攻などでもフェイクニュースがロシア側などによって拡散される事態が起きていますがそれは他人事とは言い難い物です。
そのような悪意ある集団と私たちは思ったよりも近い距離に存在し、いつその集団の標的になってもおかしくはありません。

今回の出来事は、それが法に触れるか否かが重要な点になるべきで、自身が自民党支持であるか否かで判断すべきではありません。
結論から入り、調べもせずに持論を述べる。そのような事は避けなければならないでしょう。

トップ画像出典:海上自衛隊ホームページ

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