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世界で雲が減少、20年間で最少に 猛暑に関連の見方
地球上の雲が減っている。米航空宇宙局(NASA)の衛星データを分析すると、2023年は過去約20年間で最も少なく、世界的な減少傾向が浮かぶ。二音ではに日射が増え、記録的猛暑への関連が疑われる。各国が大気汚染防止に取り組んだ結果、大気中のちりが減り、雲が出来にくくなったとの視点もある。
日本経済新聞は今回、NASAの観測データを活用し、地球全体のうち雲が覆う範囲の割合を調べた。各年の平均値は長期的にみると低下しており、23年が比較可能な01年以降で最も低かった。日本の上空も同様の傾向だった。高度3キロメートル未満の雲は日傘のように太陽光を反射し、地球を冷やす働きをしている。九州大学の道端拓郎進教授(気候変動学)は【減少すると、より多くの太陽光が海や陸地に降り注ぎ、気温上昇につながりうる】と指摘する。温高ガスの増加に加え、雲の減少も温高化を促している見込みがある。
雲が減った理由は詳しく分かっていない。上昇気流などで持ち上げられた水蒸気が、大気中に浮かぶ微粒子(アエロゾル)にくっついて雲をつくる。各国で車や工場などお非ガス規定が進み、1980年代以降にエアロゾルお量は大きく減少した。これが雲を減らす方向に作用したとみる研究もある。
雲がなくなれば日射は増える。気象庁の観測によると、2023年の東京の日射量は平年(1991~2020の平均)より1割以上多く、過去最大を改定した。
23年は記録的な暑さとなった。気象庁によると、世界の標準気温は1891年の統計開始以降も高かった。ブラジルで同国最高の44.8度を観測、東京は最高気温が35度以上の猛暑日が初めて20日を超えた。農作物の生育にも影響し、国内の米不足の一因になった。
24年も高温が続き、6月の平均気温は韓国やトルコなど各国で以前最高を記録。日本も前年並みの猛暑に見舞われた。
NASAのデータによると、24年1~7月の雲の量は23年の同期に比べ、むしろ多かった。雲の量は年事の振れが大きい。一時的な増減よりも、長期的な減少傾向が気温上昇に影響していると予想される。
いずれにせよ雲の量と気温の関係は研究途上だ。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は最新の評価報告書で、19世紀後半と比較した21世紀末の気温上昇を1.0~5.7度と予測する。広さがある要因の一つとして、雲の影響を十分に見通せないことを挙げている。
気候予測に関わる国立環境研究所の広田彅郎主任研究員は【各国の研究機関は将来の気温上昇に対する雲の役割を過小に見積もっている可能性がある】と指摘している