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不思議な「いらっしゃいませ」
ある日、通勤帰りの駅で、この言葉が聞こえた。
駅員さん「いらっしゃいませ〜」
私はまさか駅でこの言葉を聞くなんて思ってもいなかったので、場所と言葉の不釣り合い具合に思わずムフっとなってしまった。
この駅員さんはインフォメーションカウンター的なところで乗客の案内をしている人だった。
私はなんだか違和感を感じずにはいられなかった。
バイトで接客業をしていたのだが、「いらっしゃいませ」には来店する人、通りすがりの人に対して、
「お客さんの存在に気づいてますよ〜」「いつでも準備はできてますよ〜」という示しの意味が込められてると教わった。
「あなたをサポートする準備が整ってますよ〜」という意味なら、駅員さんが言ってもおかしくはない。
そもそも「いらっしゃいませ」の語源はなんだ?と、疑問に思ったので調べてみた。
そもそもこの「いらっしゃいませ」のセリフが使われ出したのは江戸時代中期~後期にかけてといわれており、
それ以前は「おいでなさいまし」というワードが使われていた。
いらっしゃいませは「来る」の尊敬語である「いらっしゃる」と、言葉を丁寧にする「~ます」の命令形である「ませ」あがくっ付いて出来た「いらっしゃりませ」が原形で、意味としては「こっちにおいでなさいませ」という意味。
ふむふむ。
江戸時代に外で客引きとして使われていたのだな。
いらっしゃいませの使い方に変化が起きたのは、徳川家康が東海道五十三次を整備した事と関係している。多くの旅人が行き交う東海道に軒を連ねる宿の数は約3000軒。元々客を呼び込むために使っていた「おいでなさいまし」だと丁寧な感じはしますが、その一方で活気が感じられないので「いらっしゃいませ」と声高に叫ぶことでお店の活気をアピールする狙いがあった。
時代と共に強引な客引きが減ったことで、店内において使われるように変化。
元の意味から変化して今の形になったそう。
そこから、私がバイトで習ったのと同じ意味をもつ「いらっしゃいませ」になったらしい。(バイト先はちゃんと意味を教えてくれてたんだな…)
駅員さんからすれば、乗客=お客さん という構図が成り立つのかもしれないが、それでもやっぱりおもしろく、なんとも不思議な「いらっしゃいませ」であった。