ショッカーのビジネスモデル
ビジネスの世界では「失敗を恐れない」という言葉がよく語られます。
しかし実際のところ、私たちは失敗を恐れずにはいられません。
とくに個人で始めた小さなビジネスでは、ひとつの失敗が命取りになりかねないからです。
今回は、ビジネスモデル鑑定士の古賀さんと、プログラマーとして働きながら休日に雑貨店を経営する上月さんとの会話をご紹介します。
「失敗との向き合い方」について、意外な切り口から示唆を得られる内容となっています。古賀さんは「教えたがり」を自認する性格、上月さんは几帳面で慎重な性格。
この対照的な2人の会話から、新商品開発における成功のヒントが見えてくるかもしれません。
上月さん「すみません、古賀さん。今日は相談に乗っていただいて」
古賀さん「いいえ。折角のお店のカフェスペースで美味しいコーヒーをごちそうになってますから」
上月さん「古賀さんの講座を修了してから半年になるんですけど、なかなか前に進めなくて…」
古賀さん「あの講座の中でも、上月さんは特に熱心でしたよね。今のお店も、あのときの企画からのスタートでしたっけ」
上月さん「はい。本業のプログラマーは続けながら、休日だけ小さな雑貨店を始めました。でも…」
古賀さん「でも?」
上月さん「新商品を出したいんです。でも失敗が怖くて。在庫を抱えたら…」
古賀さん「へえ、新商品ですか。具体的にはどんなものを?」
上月さん「手作りのアクセサリーなんですけど、今までと違う素材を使ってみたくて。でも、お客様の反応がわからないし、材料費もけっこうかかるし…」
古賀さん「なるほど…。じゃあここでショッカーの話をしてもいいですか?」
上月さん「ショッカー?なんですか、それ?」
古賀さん「えっ!?ショッカーを知らない!?仮面ライダーの。あ、仮面ライダーは?」
上月さん「名前は知ってます。子供向けのヒーローものでしたっけ」
古賀さん「そうですか…。私の世代との差を感じますね。ショックです。ショッカーだけに」
上月さん「(ダジャレを無視して)すみません」
古賀さん「いえいえ。では説明させていただきます。ショッカーというのは、毎週新しい怪人、つまり悪いやつを作って送り出す組織なんです」
上月さん「毎週、新しい怪人を?」
古賀さん「ええ。で、その怪人は必ず失敗するんです。仮面ライダーに敗れて、爆発します」
上月さん「爆発するんですか?」
古賀さん「そう。でも、組織は潰れない」
上月さん「失敗するのに潰れない…?」
古賀さん「実はここに、現代のビジネスのヒントがあるんです」
上月さん「?」
古賀さん「怪人を作るコストは相当かかってるはずなのに、失敗前提で毎週送り出せる。この仕組みが重要なんです」
上月さん「どういうことですか?」
古賀さん「小さな実験を繰り返しながら、時々大当たりを狙う。失敗しても組織が潰れない程度の投資で、次々とトライする」
上月さん「あ!それって…」
古賀さん「そう。上月さんの新商品開発にも応用できます。いきなり大量生産する必要はないんです」
上月さん「なるほど。期間限定で少量だけ作ってみるとか」
古賀さん「まさにその通り。市場の反応を見ながら、次のステップを考える」
上月さん「子供向けのお話だと思ったのに、さすが。1つ質問いいですか?」
古賀さん「どうぞ」
上月さん「さっき古賀さん、ショッカーは『小さな実験を繰り返しながら、時々大当たりを狙う』っておっしゃってましたよね」
古賀さん「言いましたね」
上月さん「時々、大当たりはあったんですか?」
古賀さん「…」
上月さん「聞いちゃいけないことって、あるんですね」
古賀さん「あはは。ところで、ショッカーと違って、私たちには失敗から学ぶ能力があります」
上月さん「そうですね。本業のプログラミングでも、小さなテストを重ねて改良していきます」
古賀さん「その通り!上月さんのプログラマーとしての経験が、ここでも活きてきますよ」
上月さん「今度の商品開発、3点だけ作ってみます」
古賀さん「そうですね。反応が良ければ追加で」
上月さん「失敗しても、3点なら在庫負担も小さいですしね。ショッカーさんみたいに」
古賀さん「あのね、上月さん。ショッカーに『さん』づけするのは、絶対やっちゃダメです」
上月さん「そこ、こだわるとこ?」